ウイルス学: ブタでのパンデミックを引き起こしたコウモリ | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、15号目のネイチャーのハイライトより。

 

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ウイルス学: ブタでのパンデミックを引き起こしたコウモリ
Nature 556, 7700
2018年4月12日


2017年、中国で数千頭のブタが新たなウイルスに感染し、下痢と嘔吐を起こして、最終的に死に至った。Z Shiたちは今回、ブタ急性下痢症候群コロナウイルス(SADS-CoV)と名付けたこの新たなコロナウイルスの起源を追跡し、コウモリにたどり着いた。彼らは、キクガシラコウモリ属(Rhinolophus)のコウモリ種(SARS関連コロナウイルスの自然界の保有宿主でもある)が、ブタから単離された新たなウイルスと96~98%のゲノム塩基配列同一性を持つ非常に近縁のウイルスを保有することを見いだした。この研究は、このウイルスの最も可能性の高い出現過程について詳細に説明し、コウモリが保有するウイルスの多様性を理解する必要をはっきりと示した。


Letter p.255
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中国ではないですが、困りました。我が家の猫は、たまに夜中にコウモリを捕ってくるのですが、ヒト科の大ブタ小ブタがおります(笑)、なんて冗談はさておいて。本題に入ります。

 

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ウイルス学:致死的なブタ急性下痢症候群はコウモリ起源のHKU2関連コロナウイルスにより引き起こされた

Nature 556, 7700 |  Published:  2018年4月12日  |


野生動物の保有者からのウイルスの種間伝播は、ヒトや動物の健康にとって大きな脅威となる。コウモリは最も重要な新興ウイルス保有者の1つと考えられており、コウモリを起源とするコロナウイルスの中間宿主を介したヒトへの伝播が、影響の大きい新興人獣共通感染症である重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となった。本研究では、ウイルス学的、疫学的、進化的および実験的な証拠により、新たなHKU2関連コウモリコロナウイルスであるブタ急性下痢症候群コロナウイルス(SADS-CoV)が、中国の4つの農場で2万4693頭の仔ブタを死亡させたブタの致死的な病気の大規模な発生の原因となった病原体であることを示す。特に、その大発生がSARSパンデミックの発生源に近い広東省で始まったことは重要である。さらに、SADS関連CoVは、2013~2016年に広東省のコウモリの肛門から採取した標本の9.8%(591標本中の58)と96~98%の塩基配列同一性を持ち、これらの大部分はSARS関連CoVの保有者として知られるキクガシラコウモリ属の種(Rhinolophus spp.)のものだった。我々は、SADSとSARSの大発生には、地理学的、時間的、生態学的、病因論的な状況に著しい類似性があることを見いだした。この研究は、家畜や公衆衛生、経済成長の脅威となり得る将来的な大発生を軽減するために、コウモリにおけるコロナウイルスの多様性と分布を明らかにする重要性をはっきりと示している。

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SADSとSARSについての、わが国におけるパンでミックは起きてはいませんが、ご参考程度に下記に示します。

 

SARS(重症急性呼吸器症候群)とは - 国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/414-sars-intro.html

 

ブタ急性下痢症候群 | 感染症.com
http://www.kansenshou.com/tag/%E3%83%96%E3%82%BF%E6%80%A5%E6%80%A7%E4%B8%8B%E7%97%A2%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4/

 

ちなみに、流行は続いているようです。

 

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【感染症】ブタが感染する致死性ウイルスの起源が判明
Nature
2018年4月5日
Infectious disease: Origin of fatal pig virus identified


2017年に中国で2万4000頭以上のブタを死に追いやった致死性疾患の原因が、コウモリ起源のウイルスであることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究結果は、動物の医療、公衆衛生、および世界経済に対するコウモリ、ひいては野生生物全般のウイルス感染の監視に積極的に取り組むことの価値を強調している。

 

中国広東省の4か所の農場でウイルス感染症が流行し、感染した仔ブタはブタ急性下痢症候群(SADS)を発症し、下痢や嘔吐を起こして死んでしまった。今回、Zheng-Li Shiたちの研究グループは、この原因として、新たに発見されたコロナウイルスの1種SADS-CoVを特定した。SADS-CoVのゲノムは、この感染症の流行源である養豚場近くの洞窟に生息するキクガシラコウモリから2016年に単離されたコロナウイルスのゲノムと98%同じだった。

 

コウモリは、新興ウイルスの重要なリザーバーだ。例えば、キクガシラコウモリは、約15年前に700人以上の命を奪ったSARSコロナウイルスのリザーバーだった。最近のブタ疾患の流行の発生地は、SARSの最初の症例の発生地の近くと考えられており、この研究結果から、新興疾患の出現が頻発するという中国南部のユニークな特徴を浮き彫りにしている。ブタ疾患の流行は続いており、今回の研究は、コウモリとその他の野生生物が保有するウイルスの多様性を理解することの重要性を明確に示している。

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ネイチャーったら、いつの間にか、しねっと”Physial Siencec Gateway(物理学ゲートウェイ)”なんてもの作ってたのね・・・なんて、知らせがそういえば来てました^^; ネイチャーは多過ぎてわからなくなる!(苦笑)・・・なんて、言っている場合ではないですが。

 

わかって良かったですね。これで対策ができると言うものです。というわけで、対策が進むよう祈ります。

 

明日は、16号目のネイチャーのハイライトに入り、原子核時計の実現に一歩近づいた論文は、皆さん興味がないと思われるので、神経科学より、「免疫記憶が脳疾患を変化させる」を取り上げます。

 

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