ホルモンと睡眠 美肌ゴールデンタイムは存在する? | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

日経新聞に挙がっていた、日経ナショジオより。

 

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ホルモンと睡眠 美肌ゴールデンタイムは存在する? 

日経ナショナル ジオグラフィック社
2018/4/24


 「22時~深夜2時にぐっすり寝れば、肌に良いホルモンが分泌される」という話を耳にした。美肌をつくるゴールデンタイムがあるということらしいが、これは本当だろうか? ホルモンと睡眠・体内時計との関係は古くから調べられており、このテーマだけで一冊の教科書にもなっているほどだ。今回はホルモンの分泌調節に睡眠と体内時計が果たす役割について解説したい。

 

■人の活動と密接に関わるホルモン

 

 ホルモンは主要なものだけで30種類以上あり、未知のホルモンも多数あると考えられている。少し難しくなるがホルモンの役割とは、体内環境の変化や体外からの刺激に反応してそれぞれ特有の臓器で作られ、血液などに乗って移動して、他の臓器や血球などの細胞に働きかけ、体内環境を正常に保つように作用することにある。

 

 例えば、私たちの食欲や栄養の供給もホルモンによってうまくコントロールされている。食事を減らしたり抜いたりすると、グルカゴンと呼ばれるホルモンが増える。このホルモンは肝臓に貯蔵された糖の一種であるグリコーゲンを分解して血糖が下がりすぎないように維持する。逆に血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌は抑えられる。また食欲が増すホルモンであるグレリンの分泌量が増え、食欲が低下するホルモンであるレプチンは抑えられて摂食を促す。

 

 「22時~深夜2時にぐっすり寝れば、肌に良いホルモンが分泌される」という話を耳にした。美肌をつくるゴールデンタイムがあるということらしいが、これは本当だろうか? ホルモンと睡眠・体内時計との関係は古くから調べられており、このテーマだけで一冊の教科書にもなっているほどだ。今回はホルモンの分泌調節に睡眠と体内時計が果たす役割について解説したい。

 

■人の活動と密接に関わるホルモン

 

 ホルモンは主要なものだけで30種類以上あり、未知のホルモンも多数あると考えられている。少し難しくなるがホルモンの役割とは、体内環境の変化や体外からの刺激に反応してそれぞれ特有の臓器で作られ、血液などに乗って移動して、他の臓器や血球などの細胞に働きかけ、体内環境を正常に保つように作用することにある。

 

 例えば、私たちの食欲や栄養の供給もホルモンによってうまくコントロールされている。食事を減らしたり抜いたりすると、グルカゴンと呼ばれるホルモンが増える。このホルモンは肝臓に貯蔵された糖の一種であるグリコーゲンを分解して血糖が下がりすぎないように維持する。逆に血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌は抑えられる。また食欲が増すホルモンであるグレリンの分泌量が増え、食欲が低下するホルモンであるレプチンは抑えられて摂食を促す。

 

 ほとんどのホルモン分泌は睡眠と体内時計の両者の影響を受けており、「主に睡眠による支配を受けるもの」と「主に体内時計の支配を受けるもの」の大きく2つに分けられる(イラスト:三島由美子)

 

 怪我をしたときもホルモンは活躍する。細胞の修復を促すコルチゾール(副腎皮質ホルモン)が副腎から多く分泌される。コルチゾールは過剰な免疫反応や炎症も抑える。体を異物から守る免疫が活発になりすぎ、かえって体にダメージを与えるのを防ぐためである。また、グルカゴンと同様に全身の細胞の第一のエネルギ源である糖の産生を促して脳や組織の活動を支える。

 

 これらの例を見ても分かるように、ホルモンの活動は人の行動と密接に関わっている。そのため、ホルモン分泌は我々の活動や休息、1日の時刻とうまく連動する必要があり、ほとんどは睡眠と体内時計の両者の影響を受けている。

 

■睡眠が支配するのか、体内時計が支配するのか

 

 とはいえホルモン分泌は「主に睡眠による支配を受けるもの」と「主に体内時計の支配を受けるもの」の大きく2つに分けられる。

 

 「体内時計による支配」を受けるホルモンの代表が、先のコルチゾールや、甲状腺刺激ホルモン、メラトニンなどである。個別の詳しい説明は割愛するが、これらのホルモンは心身を目覚めさせたり逆に眠気をもたらす作用があるため、昼夜のリズムに合わせて分泌を増減させる必要があったのだろう。

 

 一方、主に「睡眠による支配」を受けるホルモンの代表が、成長ホルモン、乳汁分泌を促すプロラクチン、男性ホルモンであるテストステロンなどである。一般的にこれらのホルモンは時刻とは関係なく、睡眠中に分泌が高まる。普段寝ている時刻でも徹夜をしていると分泌が抑えられるのである。

 

 プロラクチンは乳汁の分泌を促すほか、妊娠中には女性ホルモンの分泌調節に関わって母胎を安定させ、育児期には母性的行動の源となって子供を外敵から守るなどの行動をとらせる。乳幼児の睡眠リズムは不規則で寝起きの時間が昼夜に分散していることを考えると、特定の時刻でプロラクチンの分泌が高まるよりも、睡眠(覚醒)の時間帯と連動していた方が育児や授乳にとって都合がよいだろうな、と連想いただけるのではないだろうか。

 

■「都市伝説」には明らかな誤りと怪しい点

 

 さて、いよいよ成長ホルモンである。ここで先の都市伝説を再掲してみる。明らかな間違いが1カ所、怪しい点が1カ所ある。

 

 「お肌によい成長ホルモンは深い睡眠で分泌される。そのゴールデンタイムは22時~深夜2時」

 

 明らかな間違いについてはすでに読者の皆さんはお気づきだろう。そう、「ゴールデンタイムは22時~深夜2時」である。当初ゴールデンタイムの意味がよく分からなかったのだが、女性誌などの取材を何度も受けているうちに、22時~深夜2時に眠れば、その間に成長ホルモンがバンバン分泌されるという意味だと知った。しかし、先述のとおり成長ホルモンは主に睡眠による支配を受けており、現実世界の時刻は実は関係なく、睡眠、特に深いノンレム睡眠(徐波睡眠)中に集中して分泌される。同じ睡眠でもレム睡眠中には覚醒時と同じ程度にまで分泌量は低下する。

 

 この誤解はおそらく平均的な睡眠時間帯が深夜0時ころから始まり、深いノンレム睡眠が睡眠開始から最初の2、3時間で出現することが多いために派生したのだろう。夜勤明けの看護師さんは帰宅してから寝ても成長ホルモンは分泌されるのでご心配なく。

 

 それにしても成長ホルモンに対する女性の思い入れには並々ならぬものを感じる。大人になってもまだ大きくなりたいのかと思ったら、お肌によいからだという。残念ながら大人になると体内で作られる成長ホルモンは成長期よりも格段に減ってしまう。それを目一杯活用してもお肌にどの程度の効果があるか疑問である。少なくともその効果を科学的に証明した研究はない。成長ホルモンよりも、寝不足による疲労やストレス、肌の乾燥の方がよほど悪影響があるように思われる。これが「怪しい点」である。

 

三島和夫
 1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員、JAXAの宇宙医学研究シナリオワーキンググループ委員なども務めている。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、日経BP社)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[Webナショジオ 2018年3月22日付の記事を再構成]

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はい、嘘でしたねぇ。私は嘘と知っていましたが、皆様はどうでしたでしょうか?

 

うん、女性向の話でしたね(苦笑)

 

筆者は睡眠に関するものや、睡眠薬の適正使用のガイドラインを出しているので、気になる方は、Webや書店でお買い求めください。

 

次は、恒例のネイチャーを定時に取り上げます。

 

 

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