組織再生: 肝臓を再生する細胞は肝臓組織全体に分布している | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、15号目のネイチャーのハイライトより。

 

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組織再生: 肝臓を再生する細胞は肝臓組織全体に分布している
Nature 556, 7700
2018年4月12日


哺乳類の肝臓は、生涯にわたって徐々に、そして損傷後にはロバストに再生する。これは主として、肝臓の解毒機能を担う肝細胞の再生を介して行われる。しかし、再生を担う肝細胞に特定の特徴があるのかどうかは分かっていない。テロメラーゼ活性は、細胞分裂の後にテロメアの長さを維持するために必要であり、この酵素は他の器官では多くの幹細胞集団に発現している。今回S Artandiたちは、マウスにおいてテロメラーゼを高レベルで発現する肝細胞の集団を突き止めた。これらの肝細胞は肝臓全体に分布しており、恒常的な状態でも損傷後でも、自己複製や分化を行って肝臓を再生する。


Letter p.244
News & Views p.181
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ここでのキーワードは、テロメラーゼ酵素と肝臓の再生です。

 

今回、細胞を追跡する解析によって、マウスの肝臓に散在している細胞集団が、染色体末端を保護する酵素であるテロメラーゼを発現していることが明らかになりました。こうした細胞が、肝臓の維持と再生に寄与しています。

 

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組織再生:肝臓に散在し、テロメラーゼを発現する肝細胞が恒常的状態および損傷において肝臓を再生する

Nature 556, 7700 |  Published:  2018年4月12日  |


肝細胞は恒常的状態では徐々に、肝損傷の後にはロバストに補充される。成体では、新しい肝細胞は既存の肝細胞プールから生じるが、再生の際の肝細胞の細胞源は解明されていない。テロメラーゼは多くの幹細胞集団に発現しており、またテロメラーゼ経路の遺伝子の変異は肝疾患に結び付けられている。今回我々は、テロメラーゼを高レベルで発現する肝細胞のサブセットを突き止め、この肝細胞サブセットが恒常的状態や損傷の際に肝臓を再生することを示す。マウスにおいてTert(telomerase reverse transcriptase)座位を利用した細胞系譜追跡により、テロメラーゼを高発現するまれな肝細胞(TERT^High肝細胞)は肝小葉全体に散在していることが分かった。恒常的な状態では、これらの細胞は小葉の全ての領域で肝細胞を再生し、自己複製と分化の両方により、増殖する肝細胞クローンを作り出して、最終的に肝臓全体に広がる。TERT^High肝細胞の再生活性は、損傷に応答して高まり、それらの子孫細胞は領域の境界を越えて分布する。RNA塩基配列解読から、TERT^High肝細胞では代謝遺伝子の発現が低下しており、代謝活性と再生活性は肝細胞系譜内では分離している可能性が示された。TERT^High肝細胞の遺伝的除去と化学的損傷を組み合わせると、星細胞の活性化と繊維症の顕著な増強が引き起こされた。これらの結果から、小葉全体に散在する肝細胞サブセットの1つがクローン性増殖を行い、肝重量を維持するという、肝細胞再生の「分散型モデル」が裏付けられた。

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この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

テロメラーゼ (英: telomerase) は、染色体末端(テロメア)の特異的反復配列を伸長させる酵素です。テロメア伸長のテンプレート(鋳型)となるRNA構成要素と逆転写酵素活性を持つ触媒サブユニットおよびその他の制御サブユニットによって構成されています。

 

テロメラーゼ活性が低い細胞は、一般に細胞分裂ごとにテロメアの短縮が進み、やがてヘイフリック限界と呼ばれる細胞分裂の停止が起きます。テロメラーゼは、ヒトでは生殖細胞・幹細胞・ガン細胞などでの活性が認められ、それらの細胞が分裂を継続できる性質に関与しています。このことから、活性を抑制することによるガン治療、および活性を高めることによる細胞分裂寿命の延長、その両面から注目を浴びています。

 

今回は、肝細胞再生です。お見事です。肝臓疾患者には朗報で、酒飲みには何だか嬉しい話ですねw とは言え、お酒はほどほどに^^

 

明日はウイルス学を取り上げます。

 

 

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