昨日に引き続き、15号目のネイチャーのハイライトより。
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幹細胞: 心臓の成長を促す
Nature 556, 7700
2018年4月12日
ヒト誘導多能性幹細胞(iPSC)を心筋細胞へ分化させて成熟した心臓組織を得ることは、いまだにin vitroでの心臓関連疾患研究の難題である。今回G Vunjak-Novakovicたちはこの問題に取り組むため、iPSC由来の心筋細胞が収縮を開始した直後から、物理的条件を増強した。その結果、遺伝子発現や超微細構造の点で、成体の心臓組織に非常によく似た組織が得られた。しかし、その組織の電気機械的性質は、このモデルではまだ後れを取っているようであり、この成熟技術をさらに改良していく必要があるだろう。
Letter p.239
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成熟した心臓組織の電気機械的性質ですか・・・。まずは、このモデルをさらっと見ていきましょう。
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幹細胞:多能性幹細胞から作り出されたヒト心臓組織の高度な成熟
Nature 556, 7700 | Published: 2018年4月12日 |
ヒトの誘導多能性幹細胞(iPSC)から作り出された心臓組織は、患者固有の生理現象や疾患の研究の基盤となり得る。しかし、これらのモデルの予測能力は今のところ、それらの細胞が未成熟な状態にあるため制限されている。本研究では、自発的な拍動を開始した直後に初期段階のiPSC由来心筋細胞から心臓組織を形成し、時間経過とともに強度が増す物理的条件に置くと、この根本的な制限が解決できることを示す。培養開始からわずか4週間後に、調べた全てのiPSC株で、このような組織は、成体と同様な遺伝子発現プロファイル、非常に組織化された超微細構造、生理的なサルコメア長(2.2 μm)やミトコンドリア密度(30%)、横行管の存在、酸化代謝、正の力–収縮頻度関係、機能的なカルシウム処理を示した。電気機械的性質の発達はより遅く、成人の心筋で見られる成熟度までは到達しなかった。組織の成熟は、イソプロテレノールに対する生理学的応答の達成と、病理的肥大の再現に必須であり、心臓の発生や疾患の研究にこの組織モデルが使えることが裏付けられた。
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心臓の発生や疾患の研究にはこのモデルが使えることが裏付けられた、ということで、成熟した心臓組織の電気機械的性質は、まだこのモデルでは後れを取っているということですね。
心臓関連疾患をもつ方が救われるように、一日も早く、成熟技術をさらに改良できるよう祈ります。
明日は、肝臓を再生する細胞についてのものを取り上げます。