油田探査の爆発音 動物プランクトンに大量死の恐れ | Just One of Those Things

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日経新聞のピックアップより。

 

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油田探査の爆発音 動物プランクトンに大量死の恐れ
2017/7/22 ナショナル・ジオグラッフィック

 

 ドナルド・トランプ政権は海洋掘削の復活を提案している。もし実現すれば、食物連鎖の底辺にいる小さな生き物たちが大きな脅威にさらされるかもしれない。

 

 海底下に眠る石油を探査するとき、地中深くまで伝わる強力な音波の反響を利用する方法がある。音の源は、表層付近に沈めたエアガンが圧縮空気を発射するときの爆発音だ。音波で海底を振動させるため、この方法は地震探査と呼ばれる。

 

 大きな爆発音は海に暮らす動物たちの聴覚に影響を及ぼし、すでに海洋哺乳類での被害が報告されている。海洋哺乳類の多くは反響定位(発した音の反響を感じ取って周囲の状況を知ること)によってコミュニケーションや狩りを行っているからだ。

 

 2017年6月22日付の「Nature Ecology and Evolution」誌で発表された最新の論文によれば、エアガンによる爆発音が、動物プランクトンにさまざまな影響を及ぼす可能性があるという。動物プランクトンは食物連鎖の底層に位置し、最も重要な海洋生物のグループのひとつだ。海を漂いながら植物プランクトンを食べ、一般的には、海の表層近くで暮らしている。小さなクラゲや甲殻類、幼生期の魚も動物プランクトンに含まれる。

 

 オーストラリア、タスマニア大学および海洋科学技術センターの科学者たちは、研究のために、タスマニア島の南の海でエアガンを使用し、その前後に動物プランクトンを採取した。

 

 「特殊な染色法を用い、網で捕まえた動物プランクトンの数と生死を確認しました。その結果、エアガンの発射後は発射前に比べ、死んでいる個体の数が2~3倍に増えました」と研究に参加したジェイソン・セメンズ氏はプレスリリースで述べている。

 

 研究チームがエアガンを発射した海域の動物プランクトンを網を引いて調べたところ、比較対照群と比べ、直後の1時間に捕獲した数は6割以上減っていた。さらに、ソナーによる測定で、動物プランクトンの減少は約1200メートル離れた場所でも確認された。これまで影響は10メートル弱とされており、100倍以上の差があったことになる。

 

 動物プランクトンは海の食物連鎖で重要な役割を果たしている。これは憂慮すべき研究結果だ。

 

 「動物プランクトンは世界の海洋生態系の健康と生産性を支える存在です。今回の研究結果は、民間の地震探査が動物プランクトンの数に壊滅的な影響を与えかねないことを示唆しています」。研究に参加したロバート・D・マッコーリー氏はプレスリリースでそう警告した。

 

 さらに、研究チームは論文の中で、「プランクトンの生産性が維持されない限り、魚や海洋哺乳類、最上位の捕食者の個体数が維持されることはない」と指摘している。

 

 今回の研究はオーストラリアの海で行われる石油とガスの探査に焦点を絞ったものだが、研究結果は国際的にも大きな意味合いを持つ。

 

 トランプ政権は6月、米海洋大気局(NOAA)とともに、エネルギー企業5社が米国沖の大西洋でエアガンを使い、石油やガスを探査できるようにする計画を発表した。

 

 目下のところ、探査船の走行距離にして14万キロ以上の地震探査が認められる可能性がある。天然資源保護協議会の試算によれば、約35万平方キロが影響を受けるという。国際海洋保護団体オセアナ(Oceana)は大西洋のクジラとイルカ13万8000頭に被害が及ぶと予測する。

 

 この計画は連邦官報に掲載され、現在、パブリックコメントを募集中だ。官報にはエアガンの使用は海洋哺乳類に影響を及ぼす恐れがあり、何らかの対策を講じなければならないと明記されている。

 

 例えば、NOAA海洋漁業局資源保護室の報道官は米公共ラジオ局「NPR」の取材に対し、「海洋哺乳類が発する音を探知すれば、その海域にいるかどうかを把握でき」、海洋哺乳類へのエアガンの影響を最小限に抑えることができると述べている。

 

 動物プランクトンを含め、ほかの海洋生物の保護についてNOAAにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 

(文 Sarah Gibbens、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

 

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年7月10日付]

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論文が発表された科学誌はネイチャーの姉妹誌です。

 

 

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