アスピリンの効果と限界 | Just One of Those Things

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「血液をサラサラにする薬」 アスピリンについて、下記のようなの報道がありました。


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「血液をサラサラにする薬」 アスピリンの効果と限界
2015/2/23 6:30 日本経済新聞


 「5年生存率」「検査陽性」「基準値」「平均余命」「リスク」…。皆さんは、ニュースで見かける健康・医療関連の数字の意味を、正しく理解していますか? 病気にまつわる「数字」について、誤解しがちなポイントを分かりやすく解説するとともに、数字の読み方、解釈の仕方についても、わかりやすく説明します。


 「血液サラサラ」は、健康番組やCMなどではおなじみのフレーズです。血管に血のかたまり(血栓)をつくらないようにするための薬のことを、「血液をサラサラにする薬」と説明されたことのある人もいるでしょう。


 血栓は、血液のスムーズな流れをさえぎり、心筋梗塞や脳卒中といった、命にかかわる病気を引き起こす原因になります。そうならないために飲むのが「血液をサラサラにする薬」であり、その代表例の一つがアスピリンです。


 アスピリンは、いったん心筋梗塞や脳卒中を起こしてしまった人が、再び繰り返さないようにする(これを二次予防という)効果が認められています。しかし、そうした病気をまだ起こしたことのない人が、起こさないようにする(これを一次予防という)効果については、実はよく分かっていませんでした。


 日本循環器病学会の「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)」によると、「複数の冠危険因子を持つ高齢者に対するアスピリン投与」はクラスII、つまり、投与してもよいとされています(ガイドライン52ページ参照)。ここで言う冠危険因子とは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのことです。ただしこのガイドラインでは、「現在、アスピリンの一次予防効果に関する研究が進行中であるが、今後こうした試験結果(エビデンス)を蓄積し、日本人における適切なガイドラインを作成することが急務」とも書かれていました。


■アスピリンの効果を検証した試験結果が論文に


 そしてついに、2014年末、日本発のその研究(JPPP試験)の結果が、論文として発表されました(JAMA. 2014;312:2510-20.)。


 JPPP試験の対象者は、高血圧、糖尿病、脂質異常症のいずれかまたは複数を合併しているが、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)は起こしたことのない、60~85歳の高齢者(平均70歳、男性42%)。全国から登録された7220人にアスピリンが投与され、心血管疾患を起こすかどうかが追跡されました。約5年後、心血管疾患で死亡したり、死亡はしなくても心筋梗塞や脳卒中などを起こした(これを一次エンドポイントという)人は、わずか2.77%でした。前回の記事(「TVショッピングでは分からない体に大事なこと」)で述べたように、薬の効果はちゃんと「割合」で示されています。


 これだけなら、アスピリンを飲んでいたからこそ、ほとんどの人(100-2.77=97.23%)が心筋梗塞や脳卒中を起こさずに済んだ、言い換えれば、アスピリンには、心筋梗塞や脳卒中を予防する効果があると考えたくなります。


 ですが、この結果には続きがあります。実は、この試験では、7220人にアスピリンを飲んでもらうと同時に、別の7244人にはアスピリンが与えられませんでした。もう少し詳しく言うと、登録された患者を、アスピリン群と非アスピリン群とにランダムに2群に分けて、それぞれを追跡しました。このような試験方法のことを、ランダム化比較試験といいます。


 その結果、非アスピリン群でも、一次エンドポイントを起こした人は2.96%だったのです。アスピリン群の方がわずかに少ないと思うかもしれませんが、2.77%と2.96%の差は、統計学的に見て意味のある差とはいえません。


 要するに、アスピリンを飲んでも飲まなくても、心血管疾患のかかりやすさは変わらなかったのです。実際、研究結果を示した上図を見ると、アスピリン群と、非アスピリン群とで、折れ線がほとんど重なっていることが分かります。


 ここで言いたいのは、薬(やサプリなどを含め、治療法・予防法なら何でも)が効くかどうかを判断する際には、その薬を飲んだ人のことだけで考えてはいけないということです。飲まなかった人との比較でなければ、薬が効いたかどうかは分かりません。このことは、いくら強調してもしすぎることのないくらい重要だと、私は思います。


 実際には、ある治療を行った場合と、行わない場合を比較するのは、意外に難しいものです。例えば、自分の病気の治療法にAとBの2通りがあった場合に、Aを行いながら同時にBを行って比較することはできません。自分にとってAとBのどちらがよいのか比較してみたくても、いったんAを行ってから、タイムマシンで治療前の状態に戻り、今度はBを行う、などということはできないのです。


 だからこそ私たちは、過去のいずれかの時点で、自分以外のだれかが参加した臨床試験の結果を参考にしながら、自分だったらどうしたいかという判断をするわけです。今回紹介したJPPP試験でも、試験に参加した1万4464人の患者さんは、約10年も前の2005~07年に登録されていました。過去の患者さんが試験に参加してくれたからこそ、現在の患者にとって有用な情報が得られるのです。


■あらゆる治療・予防法にはメリットとデメリットがある


 アスピリンの副作用として、出血が起こりやすくなることが知られています。そもそもアスピリンは、止血に関係する血小板の働きを抑えるので、出血が起こりやすくなることは当然予想されます。JPPP試験では、輸血や入院を必要とするほどの重症の頭蓋外出血は、アスピリン群で0.86%、非アスピリン群で0.51%と、アスピリン群の方が多く、これは統計学的に見て意味のある差でした。そのためこの試験は、当初予定されているより早期に終了されました。アスピリンを続けることにより、患者をみすみす出血のリスクにさらすことはできないからです。


 アスピリンが心筋梗塞や脳卒中を予防する効果があるならば、高血圧や糖尿病を患う高齢者にとってメリットがあるでしょう。しかしその半面、アスピリンの副作用で出血し、入院しなければならないとすれば、それはアスピリンのデメリットといえるでしょう。どんな治療法にも、メリットとデメリットの両方があります。判断する際には、その両方を比較するだけの心の余裕をもちたいものです。


(北澤京子=医療ジャーナリスト)

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治療のメリットとデメリットの比較は常日頃から向き合っております・・・A^^;


あまり突き詰めすぎて、一週間前から右目の瞼が痙攣するようになりました。


たぶんにストレス性です。



iPS細胞で、この分野の作用を調べられるようになると良いですね^^


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