KURI of the DEAD -116ページ目
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ZOMBIO/死霊のしたたり

アメリカ怪奇・幻想文学の巨匠といわれ、クトゥルフ神話の創始者と称されるH.Pラブクラフトの「死体蘇生者ハーバート・ウエスト(RE-ANIMATOR)」を映画化したのがこの作品。


【STORY】
マサチューセッツ州の医大の脳外科医ドクター・ヒルの研究室に所属する学生ハーバート
・ウエストは、独自に死体を蘇生させる研究に没頭しており、ついにその血清の発明に成功する。同じ研究室のダンが同居人を募集した際に応募し、彼らは墓地近くの一軒家を借りることになる。そして、ハーバート・ウエストはその地下室を研究室とし、日々、死体を蘇生させる研究に打ち込む。時には大学の死体安置室から、時には近くの墓地から死体を調達しながら、死体に血清(緑の液体)を投与し続ける。己の知的欲望のためにウエストは次々と死体を蘇生するが、大学、大学の学長、教授、ダンの恋人を巻き込んで、恐ろしい事態へと発展していく。


【REVIEW】
ただ、怖いとか気味が悪いだけでなく、作品全体がブラック・ユーモアにあふれた傑作。H.Pラブクラフト好きということもあっ
て、非常に気に入っている作品。もはやコメディだという人も多いが、自分は立派なホラー映画だと思う。
ブライアン・ユズナとスチュアート・ゴードンのコンビのセンスには恐れ入る。
また、この作品を観てウエストのシュールで非情なキャラクターを見事に演じたジェフリー・コムズに感心し、彼の作品をかた
っぱしから観るようになった。あんましないけど。


しかし、この時期のホラー映画の邦題はなぜこんなにもセンスがないのか?

「死霊の」って、幽霊出てこないし、「したたり」って、なんとなく気味が悪そうなだけだから?死霊から何がしたたるというのだ?

死霊のはらわた 』『死霊のえじき 』『悪魔のいけにえ 』…。それぞれストーリーも設定もまったく違うのに、なんかホラー映画というだけでひとくくりにされているようで気に入らない。

なんだ「ZOMBIO(ゾンバイオ)」って???


まあともかく、

オープニングは、最初はスイスの大学に在籍するウエストが、当時の担当教授におかしな実験を施し、騒ぎとなるところからはじまる。大学のスタッフがウエストに「殺したの?」と聞くが、ウエストは「逆だ。生き返らせたんだ」と答える。

これからはじまる物語の恐怖や不気味さを予感させる秀逸なシーン。


殺された学長が生き返りゾンビ化したり、ドクター・ヒルが首を切られ頭と胴体が別々に動き出したりしたあたりから、もはや行き着くところまでいってしまった感がある。

最後はさらにてんやわんやするからすごい映画だ。


問題の血清(緑の液体)を巡るストーリーは続編も用意されているが、何度見ても飽きないのがこの作品。



●関連作品

死霊のしたたり2

死霊のしたたり3

フロムビヨンド



【MARKING】

オススメ度:★★★★★★★7
えげつない度:★★★★★★★★8
ご飯何杯でも食べられるよ度:★★★★★★★★★9
禍々しい度:★★★★★★★★★9


【INFORMATION】

・原題:RE-ANIMATOR

・製作年:1985年
・製作国:アメリカ
・製作:ブライアン・ユズナ、チャールズ・バンド

・監督:スチュアート・ゴードン

・脚本:スチュアート・ゴードン、デニス・パオリ、ウィリアム・J・ノリス

・特殊メイク:エベレット・バーレル、アンソニー・ダブリン、ジョン・ノーリン

・出演:ジェフリー・コムズ、ブルース・アボット、バーバラ・クランプトン、デヴィッド・ゲイル、ロバート・サンプソン
死霊のしたたり

デモンズ

イタリアンホラーを代表するダリオ・アルジェントが製作・原案・脚本を手掛けたオカルトホラーの傑作。


【STORY】
大学生のシェリルは地下鉄で謎の仮面男に映画の試写状をもらう。映画の内容はノストラダムスの墓を暴いた4人組が
その呪いで次々と殺されるというホラー映画。友人のキャシーと映画館に行った二は、同じ映画を観に来ていた男二人に声をかけられ、一緒に観ることになる。一方、観客のひとり黒人女性ローズマリーは、ロビーに飾ってある仮面をふざけて付けたために頬に傷を負った。血が止まらなくなりトイレで洗い流そうとするが、その傷はどんどん膨らんでいき破裂してしまう。パニックになったローズマリーは、スクリーンの裏に逃げ込むが、そこでスクリーンを破いて倒れ込む。駆けつけた観客に囲まれるなか、爪が伸び、歯は抜け落ちて牙が生え、悪魔のような形相のデモンズと化してしまう。それをきっかけに、観客は一人、また一人とデモンズに襲われ、襲われた観客もまたデモンズと化してしまう。


【REVIEW】

実はこの映画は、タイトルが『デモンズ』ということで悪魔祓い系かと思い込み、その分野があまり好きではない自分は長らく観ないでいた。あるとき、とりあえず観てみようという軽い気持ちで観てみたところ、いやー驚いた。こんな映画だったとは。

もっと早く観ればよかった。すばらしい。イタリアンホラーの傑作だね。


劇中で上映される映画でノストラダムスの墓を暴く若者たちの内の一人が、悪魔に変身して他の仲間を殺してしまうが、そのシーンとリンクするかたちでローズマリーもデモンズに変身してしまうという手法ではじまる。ぶっちゃけ、そうする意味はよくわからないが、恐怖感をあおる演出としてはよかったのかも。
とにかくデモンズとは何なのかよくわからないが、あの形相はロ
メロのゾンビを越える異様なキャラクターといえる。後はお決まりの増殖ストーリーで、中盤ややグダグダになるが、全体的にはいい出来かな。


途中、キャシーの背中からアキロンの大王なるラスボス的キャラが生まれるシーンがあるが、小っさ!アキロン小っさ!生まれた後、脱兎のごとくどこかへ駆けだしていったのはいいが、その後、消息不明になるという一体何がしたかったのか理解に苦しむシーンがあることを明記しておこう。


終盤、何の脈絡もなく、いきなりヘリコプターが墜落してくるシーンがある。これは以前紹介した『ゾンビ 』で、最後にヘリコプターで脱出した主人公たちが何らかの理由で墜落した、という説がある。これは、ダリオ・アルジェントつながりで生まれた噂である可能性が高い。実際は、操縦士もすでにデモンズ化しており、それだけあらゆる場所にデモンズ化した人々が増え、世界中でパニック状態になっていることを狙った演出である、と監督はコメントしているようだ。


とにもかくにも、映画館という狭い空間で繰り広げられる恐怖の連鎖は、空間をうまく利用して観る側の恐怖をあおるのにふさわしかった。『ゾンビ 』同様、デモンズとは一体何なのかを説明しないことで、どうやったら倒せるのか、どうやったらこの困難を克服できるのかという「望み」を否定し、絶対的な恐怖と絶望を生み出している。

最後には、ちょっとしたサプライズがあるというホラー映画のお約束もあり、個人的にはホラー映画の王道として非常に満足できる作品だった。


●関連作品

ゾンビ

デモンズ2


【MARKING】

オススメ度:★★★★★★★★8
えげつない度:★★★★★★6
ストーリー気にしちゃいけないよ度:★★★★★★★★★9
禍々しい度:★★★★★★★★★9


【INFORMATION】
・原題:DEMONS(DEMONI)
・製作年:1985年
・製作国:イタリア

・製作総指揮:ダリオ・アルジェントト
・監督:ランベルト・バーヴァ

・脚本:ランベルト・バーヴァ、ダリオ・アルジェント、ダルダノ・サケッティ、フランコ・フェリーニ
・特殊メイク:セルジオ・スティバレッティ、ロザリオ・プレストピーノ
・出演:ウルバノ・バルベリーニ、ナターシャ・オーヴェイ、カール・ジニー、パオロ・コッツオ、ボビー・ローデス、ミケー
レ・ソアヴィ、ニコレッタ・エルミ、フィオレ・アルジェント
デモンズ


ゾンビ

いわゆる「ゾンビ」の定義を決定付けた“マスター・オブ・ホラー”ジョージ・A・ロメロの最高傑作。
「Living Dead」三部作(当時)の第2弾。


【STORY】
全米各地で突如として死者が蘇り、人間を襲いはじめる。噛まれた人間はゾンビと化し、新たに人間を襲うという事態が発生した。テレビ局に勤めるスティーブンは、恋人と、その場に居合わせたSWAT隊員ロジャー、ピーターとともにパニック状態に陥っている局内をヘリコプターで脱出する。食料を求め、ようやくたどり着いた大型ショッピングモールで、ひとときの安全を確保するが、生きていた頃の習慣でショッピングモールに集まるゾンビや食料・安全を求めショッピングモールを襲撃しに来た武装集団との戦いなど、生き残りをかけた死闘が繰り広げられる。


【REVIEW】
記念すべき第1回は自分が最も感銘を受けたホラー映画の金字塔「ゾンビ」の紹介。
まちがいなくゾンビ映画の最高傑作。ロメロは、この映画を機に“マスター・オブ・ホラー”として、一躍有名監督の仲間入りを果たす。


死者がよみがえった理由としては「地獄がいっぱいになった」とか「死者を冒涜した」からといわれているが、真実は明らかにされていない。ちなみに日本公開時(配給:日本ヘラルド)では「惑星が爆発して、死体を蘇らせる光線が地球に向かって発せられ、その光線を浴びたため死者が蘇った」という説明のテロップが流れ、惑星が爆発するシーンが付けられている。


ちなみに、ロジャーが運転するトレーラーがゾンビをはねとばすシーンがあるが、よく見るとゾンビが飛ぶためのトランポリンが映りこんでしまっている。
どうでもいい話だが、ゴブリンによるBGMは、同時代のテレビ番組「水曜スペシャル『川口浩探検隊』シリーズ」のBGMに使われていたらしい。


大型ショッピングモールに立てこもり、いつ壊れるともわからない、ひとときの安息の日々をおびえながら過ごし、時間の経過やちょっとした油断からその平和は簡単に壊れてしまう非情な設定がとても気に入っている。まるで、人間社会の縮図がこのショッピングモールに凝縮されているかのようだ。

またホラー映画でありながら、ゾンビと化す仲間を殺すべきかで苦悩する心理的描写なども多数描かれている。ただえげつないだけの映画ではなく、緻密なストーリーやロメロの作品に対する思い入れが感じ取れる。物言わぬゾンビだが、圧倒的な数で人間社会に襲いかかり破滅に追いやる行動は、人間の愚かな行為(戦争、動物虐殺、自然破壊)に対するロメロ流の警告なのだろう。


本作品は、「米国劇場公開版(126分)」「ダリオ・アルジェント監修版(119分)」「ディレクターズ・カット完全版(139分)」の3つの編集版がある。個人的にはショッピングモール内の描写が長いディレクターズ・カット完全版がおすすめ。ちなみに、熱狂的ファンが勝手に編集した「ファイナル・カット版(156分)」があるらしい。


●関連作品

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

死霊のえじき

ランド・オブ・ザ・デッド

ダイアリー・オブ・ザ・デッド

ドーン・オブ・ザ・デッド 』(リメイク版)

デイ・オブ・ザ・デッド 』(リメイク版)

突如ゾンビの大群が現れた時のことを考えてみる件

ゾンビ映画の歴史をちょっとだけ考えてみる件



【MARKING】

オススメ度:★★★★★★★★★9
えげつない度:★★★★★★★7
すべての道はロメロに通じる度:★★★★★★★★★★10
禍々しい度:★★★★★★★★★★10


【INFORMATION】
・原題:DAWN OF THE DEAD
・製作年:1978年
・制作国:アメリカ、イタリア
・監督:ジョージ・A・ロメロ
・脚本:ジョージ・A・ロメロ、ダリオ・アルジェント
・特殊メイク:トム・サビーニ
・出演:デビット・エンゲ、ケン・フォーリー、スコット・H・ラインガー、ゲイラン・ロス、トム・サビーニ、デビット・クロフォード
・音楽:ゴブリン / ダリオ・アルジェント


ディレクターズ

ダリオ

劇場



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