なぁ、知ってたか?
人間ってさ、
ドキドキしすぎると逆に
心臓の音なんて聞こえなくなるんだぜ?

へーぇ

得意気に笑って言う
対照的に冷めた声で返される相槌
何だか悔しくてちょっと寂しくて
せめて自分を見てほしくて必死に言葉を続けても
反応に変化はみられない
一人相撲に疲労感を覚えて肩を落とした彼は知らない
いつだって、何に対してだって一生懸命な彼を見る蒼に滲む想いを
彼が話すそれを相手はずっと前から知っていることを

それを教えてくれたのは
気付かせてくれたのは
他の誰でもなく
お互いだということも
彼はまだ知らない

蓄積されて固まって
思い出してはヤキモキして
独りで悶々として
何でもないことに苛ついて
無性に寂しくなって

たくさんの思い出と一緒に
想いもたくさん重なって
溢れ出さんばかりの気持ちで
息をすることさえ忘れたり
伝えようと決意しても
5秒と保たずに敵前逃亡したり
自己嫌悪に泣きたくなったり
たった一言
ただ一度見た笑顔に全部引っくり返されたり

今日も今日とて
この心は穏やかじゃない


誰かさんのせいで


一度は手放した
未練なんて感じる間もなく
抗えない圧倒的な力を前に
俺は生涯の幕を引かれた

それがどうしてか
まだ息をしている
無機物の心音を胸中に響かせ
一人生き長らえた
拾われたのだ
道具として利用される為に

やがて心は錆び付き始め
感覚も失われていった
もう俺は何も持ってはいない
奪われることを恐れることもないと思っていた

『思っていた』、
深い闇の化身と出会うまでは