戦うことしか
奪うことしかしらない俺に
あんたはたくさんのものをくれた

血に濡れた手を握った

大切なものを壊した俺を許した

だから俺もあんたに応えたかった
与えられた温もりに
名前を呼ぶ柔らかな声に


なのに、

あんたは何一つ受け取ろうとはしなかった
与えるだけ与えて
自分は何も受け取らなかった


狡いだろう
不公平だろう

伝えたかった
たった一つの想いさえ
届くことは決してなく
この胸の奥へ押し込めて
思い出になっていくあんたに手を伸ばす


あの笑顔には
あの手には

もう触れられない


雨があがったら遊ぼう
指切りして交わした約束
晴れてたらキャッチボール
雪ならかまくらと雪ダルマを作って
週末には公園に行こう
サーカスが来るんだ
叔父さんが釣りを教えてくれるって言ってたっけ
それから映画館も
前に一緒に見たやつの続編がやってるから
予定がいっぱい増えて
楽しみって気持ちももっといっぱいになってく

天気予報が告げる
明日はきっと晴れるよ
約束だからね
顔を見合わせて笑って一緒に布団に潜り込む
おやすみ
またあした
目を閉じればすぐに夜はいなくなる
繋いだ手はそのままに
いつもと同じ変わらない温かさと愛しさ

太陽が昇って
予報通りの晴れの日がきて
でも
約束の日は来なかった
冷えてしまった右手は
確かにあった筈の温もりを忘れてる




約束が果たされる日は
決して訪れることはない




触れられた指先から伝わる温度に吐き気がした
他人と接触することには慣れてる方で
むしろ自分から手を伸ばすことだって多いオレが
人好きと称されるようになったオレが
無遠慮に乗せられたこの手に反吐が出そうなんて、さ

耳に吹き込むように何か囁かれた
   やめろ
世辞を並べてオレの顔色を伺ってくる
やめろ
機嫌を取ろうとする声色と顔と
やめろ
明確な意志を持って動き回る手、指先
ヤメロ

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

オレが触れられたいと思ったのはこの手じゃない
求めたのはこんなものじゃない!
オレが求めた温もりは、
心から渇望する声は…

思い出したくもないのに消えてはくれないあの感覚に
また込み上げてくる吐き気と目眩に踞る
もう腹には胃液しか残っちゃいないだろうに
それでも、この不快感から解放されたいと叫ぶ体が働いている
本当に吐き出したい物は胸の奥深くに突っ掛かったまま
決して取り除くことのできない
忌まわしい残像

叶うなら手を突っ込んで根こそぎ掻き出したい
癒着してるってんなら抉り取って
何処か遠く、誰の目も届かない様な遠くへ投げ捨てちまいたい

「  」

絞り出した声は掠れてて
暗い部屋に飲み込まれて消えた




cannnot say
what really want