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中山七里『翼がなくても』                
              双葉社 2017.1.22発行




翼がなくても/双葉社
¥価格不明
Amazon.co.jp





★本の内容(Amazon.co.jpより)
   
「何故、選りにも選って自分が。何故、選り
にも選って足を」
陸上200m走でオリンピックを狙うアスリート
・市ノ瀬沙良を悲劇が襲った。
交通事故に巻きこまれ、左足を切断したの
だ。
加害者である相楽泰輔は幼馴染みであり、
沙良は憎悪とやりきれなさでもがき苦しむ。
ところが、泰輔は何者かに殺害され、5000万
円もの保険金が支払われた。
動機を持つ沙良には犯行が不可能であり、
捜査にあたる警視庁の犬養刑事は頭を抱え
る。
事件の陰には悪名高い御子柴弁護士の姿が
ちらつくが―。
左足を奪われた女性アスリートはふたたび
羽ばたけるのか!?
どんでん返しの先に涙のラストが待つ切なさ
あふれる傑作長編ミステリー。


★ここだけの話


「切り裂きジャックの告白」(2013年4月
角川書店)と「七色の毒」(2013年7月 角川
書店)及び「ハーメルンの誘拐魔」(2016年
1月 角川書店)の主人公として活躍した刑事
犬養隼人が登場して相楽泰輔殺人事件の捜査
にあたります。


相楽泰輔は交通事故で幼馴染みの市ノ瀬沙良
の左足を奪った加害者でした。
市ノ瀬沙良は競技用の高価な義足を発注し
パラリンピック出場に目標を切り替え、周囲
の協力を得て頑張っていく姿には壮絶感が
漂います。


最初は相楽泰輔を殺した犯人として市ノ瀬
沙良やその両親に目を向けられていますが、
次第にそうではないとわかっていきます。


やはり読んでいて気になるのは、義足の代金
を彼女はどう捻出したかというところです。
犬養刑事ほどの人物であれば、もっと早く
金の流れをつかんでいるべきだと思います。


死亡保険金として5000万円が支払われ、この
管理を任されているのが御子柴弁護士でした。
「贖罪の奏鳴曲」(2011年12月 講談社)
「追憶の夜想曲」(2013年11月 講談社)
「恩讐の鎮魂曲」(2016年3月 講談社)
で悪名を馳せた弁護士・御子柴礼司です。


結局、御子柴弁護士が相楽泰輔の死亡保険金
の中から市ノ瀬沙良の義足代を用立てていた
ことがわかりますが、同時に自殺だったこと
も判明します。


相楽泰輔の贖罪は、この形で表現されたわけ
です。
一方、市ノ瀬沙良は多くの人の期待を担い、
標準記録を達成し、着々とパラリンピックの
代表に近づいていくような気がします。

実際、翼がなくてもまるで飛んでいるように

トラックを走る彼女の姿が想像できますね。