●京極夏彦 『書楼弔堂 炎昼』 集英社 | 新・駅から駅までウォーキング

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京極夏彦 『書楼弔堂 炎昼』
         集英社 2016.11.30発行




書楼弔堂 炎昼/集英社
¥価格不明
Amazon.co.jp





★本の内容(Amazon.co.jpより)


語は呪文。文は呪符。書物は呪具。
足りぬ部分を埋めるのは、貴方様でござい
ます――。

時は明治三十年代初頭。
気鬱を晴らそうと人気のない道を歩きながら
考えを巡らせていた塔子は、道中、松岡と
田山と名乗る二人の男と出会う。
彼らは、ある幻の書店を探していた――。
迷える人々を導く書舗、書楼弔堂(しょろう
とむらいどう)。
田山花袋、平塚らいてう、乃木希典……。
彼らは手に取った本の中に何を見出すのか?

移ろいゆく時代を生きる人々の姿、文化模様
を浮かび上がらせる、シリーズ待望の第二弾!


★ここだけの話


書楼弔堂シリーズの2作目です。
3年前に発売されたものと同様に6作品が
載った連作短編集の形をとっています。
主人公は天馬塔子という女性にかわっていま
すが、その他の部分は前作と同じです。


田山花袋、添田平吉、勝海舟、平塚らいてう、
乃木希典などそうそうたる顔ぶれが書楼弔堂
を訪れ、塔子とのかかわりを通じて物語が
進行していく形をとっています。


「書楼弔堂」は古今東西の書物が数多く並び
またここを訪れる人々も数は少ないながら、
人生に迷いを持った人たちばかり。
書店を訪ねる人たちは、皆、近代日本で大活
躍し、後世に名を残すような人物です。


店主が語る「人と本とのつながり」は迷って
いる人たちの道しるべのように心にひびきま
す。
その後の人生での活躍は、この書店そして
店主と出会った時から始まっていったので
しょう。


また、江戸末期から明治20年代の歴史や
風俗などが鮮明にわかり、東京の人の暮らし
ぶりも見事に描かれていると思います。


さらにほぼ全編を通じて書楼弔堂に顔を出し
塔子と打ち解けた話をするのが、後の柳田
國男でした。


そして天馬塔子、彼女だけは架空の人物だと
思います。
しかし彼女が店主にすすめられた本の名は、
『一日一時間三日三時間 自轉車乘用速成術』
で、これは自転車の乗り方が書いてある本
でした。
明治の女性から大きく逸脱することを目指し
てほしいと願ってのことでしょうか。


次の読めない終わり方でしたが、「小説すば
る」に連載が始まりましたので、これからも
続けることは間違いないようです。