●京極夏彦 『虚実妖怪百物語・急』 角川書店 | 新・駅から駅までウォーキング

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京極夏彦 『虚実妖怪百物語・急』 
           角川書店  2016.11.5発行 




虚実妖怪百物語 急 (怪BOOKS)/KADOKAWA
¥1,512
Amazon.co.jp




★本の内容(Amazon.co.jpより引用)


魔人が仕掛けた恐るべき“攻撃”!
想像を超えた展開の末に、京極らが見たもの
とは。
序破急全3巻、ついに完結!


妖怪研究施設での大騒動を境に、妖怪はなり
を潜めていた。
政府は妖怪殲滅を宣言すると、不可解な政策
を次々と発表。
国民は猜疑心と攻撃性に包まれていき、日本
は危機的状況に陥っていった。
妖怪関係者は富士山麓に避難するが、荒俣宏
や榎木津平太郎は、政府の特殊部隊によって
捕縛されてしまう。
果たして平太郎らは、妖怪出現の謎、そして
世界が殺伐としてゆく真の要因を突き止める
ことができるのか。
魔人・加藤保憲、妖怪、軍隊、妖怪関係者が
入り乱れた“大戦争”が始まる!


★ここだけの話


3冊にもわたる長い長い物語がいよいよ終わ
りをむかえます。


この日本の行く末を案じて読み進めていくと
あっけないほどハッピーな形で終わってしま
うのです。
敵味方の区別なく、何事もなかったのように
温泉につかる風景など一度も想像できません
でした。
姑獲鳥が女湯につかっているなど、デビュー
作から考えると涙が出るほどうれしくなって
しまいます。


最初から「バカ」「馬鹿」と幾度となく出て
きた言葉が日本を救うことになります。
くだらない事をいう余裕が必要だということ
でしょうか。


やはり「不思議なことなど何もないのだよ」
という京極夏彦の考え通りの終わり方でし
た。


最初から気になっていた榎木津平太郎という
名前の青年。
京極夏彦は平太郎の大伯父が薔薇十字探偵社
の榎木津礼二郎であると指摘しました。
しかも架空の人物であるとも。
それはそうですよね。
京極夏彦が書いた本の登場人物ですから。
最終的に平太郎は消滅します。


今回の長い長い小説は、一言でいうと実在
していない人物たちの現代日本に対する復讐
劇でした。
そして不思議なことなど何もないということ
を再認識させられた京極夏彦そのものでした。