●三沢陽一 『アガサ・クリスティー賞殺人事件』 早川書房 | 新・駅から駅までウォーキング

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三沢陽一 『アガサ・クリスティー賞殺人事件』
              早川書房 2014.9.25発行
 



アガサ・クリスティー賞殺人事件/早川書房
¥1,728
Amazon.co.jp




★本の内容(Amazon.co.jpより)


第3回アガサ・クリスティー賞受賞第一作


被害者は有栖川有栖。
探偵役は某著名ミステリ評論家。
そして犯人は……


作家志望の青年は、新人賞に落ち続けること
に絶望し、人生最後の旅に赴く。
名前を棄て、家族を棄て、友人を棄て、わず
かな金と数枚の黒い服、数冊の愛読書を黒い
トランクに詰め込んだ。
金田耕一、明田五郎、神沢恭一、星川龍一…
…古今の名探偵にちなんで名乗った偽名ゆえ
か、青年は行く先々で奇妙な事件に出会う。
恐山山中の密室殺人、盛岡の名刹を飲み込ん
だ謎の炎、大曲の蛇神に兄を祟り殺された妹、
山形でマスコミを騒がせた少年の首なし死体。
そして、旅が終わりを告げるかに思われた東
京・信濃町のアガサ・クリスティー賞授賞式
の会場でも悲劇は起きた!


三沢陽一、有栖川有栖、東直己、森晶麿、青
柳碧人、千街晶之、笹川吉晴等々、関係者が
実名で登場する授賞パーティの最中に起きた
殺人事件の真相とは?


『致死量未満の殺人』で正統派本格の新鋭と
して好評を得た第3回アガサ・クリスティー
賞作家が贈る、5篇収録の本格ミステリ連作
集。


★ここだけの話


昨年の受賞作は『致死量未満の殺人』。
この素晴らしい題名に100点満点をつけま
した。
もちろん本の内容も楽しいものでした。


1年後のこの作品は先輩作家のことがいろ
いろ書かれていて、ついに5篇目では有栖川
有栖が殺害され、文芸評論家の千街晶之と笹
川吉晴が犯人の推理をするのです。
驚きの設定ですね。
各氏に事前の根回しが必要だったでしょうね。
快くOKをいただけたから書くことが可能に
なったのだと思います。


さて、作中の主人公が旅に持っていった本。
有栖川有栖の『月光ゲーム』『孤島パズル』
『双頭の悪魔』『女王国の城』とすべて「学
生アリスシリーズ」で江神二郎が探偵を務め
ています。
作者は高校生の時、これらの本に出会い、そ
して傾倒していったことがわかります。


また、作中で使われた偽名について。
おわかりの方も多いと思いますが、念のため
書いておきます。
「金田耕一」は、ご存知横溝正史の「金田一
耕助」。
「明田五郎」は江戸川乱歩の「明智小五郎」。
「神沢恭一」は高木彬光の「神津恭介」。
「星川龍一」は鮎川哲也の「星影龍三」。
と、往年の傑作に登場した名探偵たちです。


ところで有栖川有栖が殺害された理由。
これが今回の作品のキモですね。
千利休の「不足の美」にもっていくなんて想
像できません。
これもミステリならではの創りだされた動機
でした。
それでも決してイヤミなどない、むしろ納得
させられてしまうような締めくくり方でした。