●法坂一広 『最終陳述』 宝島社 | 新・駅から駅までウォーキング

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法坂一広 『最終陳述』
          宝島社 2014.5.5発行 
 


最終陳述/宝島社
¥1,728
Amazon.co.jp




  
★本の内容(Amazon.co.jpより引用)


二人を殺めた強盗殺人事件の裁判員裁判で、
被告人の最終陳述が始まろうとするなか、傍
聴席の若い男が「その人は犯人ではありませ
ん。殺したのは私です」と突然声を上げた。
混乱する法廷。
予定通りに裁判を終わらせたい裁判官、曖昧
な印象で合議する裁判員たち、組織の方針に
縛られる公判担当検事、強引に方針を決めて
いた弁護人。
彼らは無実の男を裁こうとしていたのか、そ
れとも…?
真犯人と自ら名乗る男が現れたことで、裁判
は迷走し始める。
事件の真相とは―。


★ここだけの話


とてもおもしろいテーマです。
6時間で一気読みしてしまいました。


裁判員裁判の最終盤、検察官の死刑求刑のあ
との被告人最終陳述の直前にとんでもないこ
とが起きてしまいます。
傍聴席の若い男が、自分が真犯人だ、と声を
あげたのです。


これは現役の弁護士だからこそ、採りあげら
れたテーマです。
物語の展開もスピーディで、裁判に係わる人
物たちもいきいきと描かれています。


今回これを読んでわかりましたが、検察官、
弁護士、警察、裁判官、そして裁判員たちの
それぞれが置かれた立場、つまり立ち位置が
全部違うのだということです。
また、さらに同じ立ち位置にいたとしても、
個人個人でまた違う考えを持つわけです。


組織よりも個人を強調して描かれた作品とい
えます。
そして不測の事態に際し、当然のごとく皆バ
ラバラの意見をもち、それが簡単にはまとま
らないのです。
その結果この裁判自体は、一体どうなってし
まうのだろう、という展開になります。


前例のないことへの対処。
一般では、頻繁に起きることです。
うまく解決できた時のうれしさは、決して忘
れることはできません。


しかし、法律や判例に照らし合わせて仕事を
している方々は大変ですね。
読者にとって、多分当たり前のことが、彼ら
にはできません。
人間として対応できていないのです。
そういったもどかしさも十分感じとれました。


最後、ジョン・レノンの曲で、新しいスター
トをきれる人たちのすがすがしさは、今回の
裁判の重々しさを払しょくしてくれて良かっ
たと思います。