●若竹七海 『暗い越流』 光文社 | 新・駅から駅までウォーキング

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若竹七海 『暗い越流』
       光文社 2014.3.20発行 
 


暗い越流/光文社
¥1,680
Amazon.co.jp



  

★本の内容(Amazon.co.jpより引用)


5年前、通りかかった犬に吠えられ飼い主と
口論になった末に逆上し車で暴走、死者5名
重軽傷者23名という事件を引き起こした最
低の死刑囚・磯崎保にファンレターが届いた。
その差出人・山本優子の素性を調べるよう依
頼された「私」は、彼女が5年前の嵐の晩に
失踪し、行方が知れないことをつきとめる。
優子の家を訪ねた「私」は、山本家と磯崎家
が目と鼻の先であることに気づいた。
折しも超大型台風の上陸が迫っていた……。
(「暗い越流」)。


第66回日本推理作家協会賞“短編部門”受賞
作「暗い越流」を収録。
短編ミステリーの醍醐味と、著者らしいビタ
ーな読み味を堪能できる傑作集!!


★ここだけの話


この短編集には5作品が載っています。
どれもがしっかりとしたつながりのない作品
ですが、共通した作者独特の雰囲気が感じと
れます。
連作ではないけれど、同じ色合いを持ってい
るということでしょうか。


ちょこっとした謎からスタートしても、中身
は殺人や誘拐などの本格的なミステリです。
数少ない登場人物の中に必ず犯人が潜んでい
ます。


これらの作品のうち、いくつかには吉祥寺や
井の頭公園が登場するので親近感がわいてき
ました。
家から歩いて行ける場所なんで。


ところで、5作目の「道楽者の金庫」では、
旧式のダイヤル式の金庫が出てきます。
これを開けるためには「右に○○」「左に
○○」……、という数字が必要となります。
亡くなった人物はこの数字をいったいどこに
残していったのか、が重要なポイントとなり
ます。
その数字はどこにも見当たらないのです。


実は数字そのものではなく「特注のこけし」
の絵付けされた胴の部分に隠されていたわけ
で、これって「暗号」ですよね。
久しぶりに、よく考えられた暗号物に出会え
ました。
うれしい限りです。


彼女の短編は、人間の心の中に潜む悪意を描
いていると言われていますが、今回の作品はそ
れをさらに本格仕立てにしています。
「なるほど」と納得させる粒ぞろいの短編集
でした。