●鯨統一郎『邪馬台国殺人紀行 歴女学者探偵の事件簿』実業之日本社文庫 | 新・駅から駅までウォーキング

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鯨統一郎『邪馬台国殺人紀行 歴女学者探偵の事件簿』
          実業之日本社文庫 2013.2.15発行


邪馬台国殺人紀行 (実業之日本社文庫)/実業之日本社
¥650
Amazon.co.jp


 

★本の内容(Amazon.co.jpより)


美人歴史学者の静香、ひとみ、東子(はるこ)の女子
三人は、吉野ヶ里遺跡の古代墓で、知人の考古学者の
死体を発見。
しかも死体近くには、邪馬台国の所在を示す金印も
あった。
未知の殺人犯と、日本史上の一大論争の二つの謎に
遭遇した三人は、安楽椅子探偵の手法をもって犯人を
推理する。
事件終盤、露天風呂でひらめいた真相とは――。
トラベル歴史ミステリー三編を収録。
文庫オリジナル。


★ここだけの話


鯨統一郎と言えば、何といっても1998年のデビュー作、
「邪馬台国はどこですか?」が最高におもしろかった
です。
この時の主人公は早乙女静香でした。
文庫書き下ろしで出版されています。


今回の主人公は彼女を含めて3人。


まず、早乙女静香、26歳。
私立星城大学文学部准教授。
世界史の分野でマスコミも一目置く天才歴史学者。


翁ひとみも26歳。
私立川原学園文学部の講師で、気鋭の歴史学者。


桜川東子は23歳。
私立聖シルビア女学院の大学院に所属しており、西洋
メルヘンの研究をしています。


やはり早乙女静香を中心に物語は展開され、それに
つき従う桜川東子、逆に彼女に振り回される翁ひとみ
という役どころとなっています。


「吉野ヶ里殺人紀行」「纏向-箸墓殺人紀行」
「三内丸山殺人紀行」の3編が載せられていますが、
いずれも邪馬台国と関連のある遺跡で発生した事件と
いうだけで、邪馬台国の場所を推理するような内容
ではありません。


九州説の吉野ヶ里、近畿説の纏向、邪馬台国に発展
する前段階と解釈する三内丸山、そこを訪れた3人が
殺人事件に巻き込まれ、自分たちで推理、解決する
設定になっています。

ちょうどテレビの2時間サスペンスにぴったりの内容
で、歴史が得意でない人でもサクサク読めると思い
ます。


それから、温泉につかり、地酒を飲んで推理する3人
のかけあいが、またおもしろいのです。
タイトルから連想されるような歴史推理ものではなく、
むしろユーモア推理と言えるでしょう。


しかし物足りない。
鯨統一郎なんだから、自身独特の邪馬台国論を期待
しますよね。
そういった展開は、もうネタ切れなんでしょうか。


もう一度、大胆な新説・新解釈を楽しみに待っています。