味よりも 忘れちゃいけない 人格を
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿
また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』
宝島社文庫 2012.8.18
- 珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞.../宝島社
- ¥680
- Amazon.co.jp
★本の内容(Amazon.co.jpより)
京都の小路の一角に、ひっそりと店を構える珈琲店「タ
レーラン」。
恋人と喧嘩した主人公は、偶然に導かれて入ったこの店
で、運命の出会いを果たす。
長年追い求めた理想の珈琲と、魅惑的な女性バリスタ・
切間美星だ。
美星の聡明な頭脳は、店に持ち込まれる日常の謎を、鮮
やかに解き明かしていく。
だが美星には、秘められた過去があり―。
軽妙な会話とキャラが炸裂する鮮烈なデビュー作。
★ここだけの話
第10回『このミステリーがすごい! 』大賞最終候補作
に、徹底的に手を入れて生まれ変わった、編集部推薦の
「隠し玉」なんだそうです。
京都、コーヒー、事件簿。
大好きなこの3つの言葉に惹かれて読んでみました。
でもそれだけでした。
最近、近所の書店の文庫本のコーナーで大々的に売り出
されているのを見かけました。
そこで、3ヵ月前を思い出しながら書いてみようと思い
ます。
私は普段から文庫は読まないのですが、文庫オリジナル
の場合は購入します。
この本は、タイトルに魅力を感じました。
京都は大好きな街です。
珈琲は文字を見ただけであの独特の香りを連想します。
そして事件簿ときたら、謎解きにワクワクしますよね。
でも期待が大きかったせいか、全体的に物足りなかった
内容でした。
比較してはいけないかもしれませんが、「ビブリア古書
堂」のシリーズに感動している自分としては、似たよう
な設定を作られてもガッカリする部分が非常に多かった
ように思います。
珈琲の話はそれほど蘊蓄めいたものではありません。
主人公は最初から読者を欺くために書かれているわけで
これもミステリとして読むと、気持ちの良いものではあ
りません。
京都の街についても、もっと魅力ある表現をしてほしか
ったと思います。
そして肝心の事件簿。
日常の謎を解明するわけでなく、主人公と女性バリスタ
が隠している部分を、最後にまとめて暴露するのです。
最後に読者をビックリさせ、それでもハッピーエンドに
持っていき、ほのぼのとした気持ちで終わらせる、と
計算したのだと思います。
最初から「読者に隠しごとをしてほしくない」と切に思
いましたし、アンフェアではないにしても狐と狸のばか
し合いのような内容に感じられました。
今、珈琲を飲みながら考えています。
次回作はどうなるのだろう、と。
シリーズ化することは可能なのかもしれませんが、その
場合は本来の謎解きを組み込んでいってほしいと思いま
す。