新入生アリスの 一年を描いた 短編集
有栖川有栖 『江神二郎の洞察』
東京創元社 2012.10.30
- 江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)/東京創元社
- ¥1,890
- Amazon.co.jp
★本の内容(Amazon.co.jpより)
英都大学推理小説研に入部したアリスと、おなじみの面
々が遭遇した奇妙な出来事。
アリスの入学から、マリアの入部までの1年を9編にわ
たって瑞々しく描いた、江神シリーズ初の短編集。
その人の落とした『虚無への供物』が、英都大学推理小
説研究会(EMC)入部のきっかけだった―。
大学に入学した1988年4月、アリスは、江神二郎と
の偶然の出会いからEMCに入部する。
江神、望月、織田とおなじみの面々が遭遇した奇妙な出
来事の数々。
望月の下宿でのノート盗難事件を描く「瑠璃荘事件」を
はじめ、アリスと江神の大晦日の一夜を活写する
「除夜を歩く」など、全9編収録。
昭和から平成への転換期を背景に、アリスの入学からマ
リアの入部までの1年を瑞々しく描いた、ファン必携の
シリーズ初短編集。
★ここだけの話
有栖川有栖の小説には、作者と同名の有栖川有栖が
主人公でワトソン役として登場するものが中心となって
います。
彼の書いたミステリは、さらに大きく2つのシリーズに
まとめられます。
まず、アリスが大学生の時代、ホームズ役として活躍
するのが先輩でEMC部長の江神二郎です。
そして、アリスが社会人になり推理小説作家となってか
らは准教授の火村英生がホームズ役として登場して
います。
本書では、有栖川有栖(アリス)が英都大学に入学し、
推理小説研究会(EMC)に入るところから、本シリー
ズのヒロイン・有馬麻里亜(マリア)がEMCに入るま
での約1年間が描かれています。
収録された9編の作品は、時系列に沿って並べられてい
ますので、順番通りに読めばアリスの成長もわかると
思います。
またこの本はアリスの青春小説とも受け取ることができ
ます。
ほとんどが日常の謎をテーマとした内容で、ところどこ
ろに推理小説感とか作家論がちりばめられています。
唯一「やけた線路の上の死体」は鉄道ミステリとして、
また作者のデビュー作として、力の入った作品だと思い
ました。
あとがきにも書かれていますが、学生シリーズも残すと
ころ長編1冊と短編集1冊になりました。
京都で過ごす学生生活で一体何が起きるのか、次回作
も楽しみです。