寄り道ギャラリー1分間(その144)
ギュスターヴ・クールベ
『りんご』1871年頃
(国立西洋美術館蔵)
★ちょっとひとこと
ギュスターヴ・クールベ(1819~77)はフランス、
スイス国境に近いオルナン村の生れ。
家が地主で裕福だったが、父親の反対を押し切って
画家になる決意をし、20歳でパリに出る。
1844年にサロン初入選。
1855年のパリ万博の美術展に「画家のアトリエ」と
「オルナンの埋葬」を出品するが落選する。
このため博覧会場のすぐそばに自分の作品だけを
1フランで見せる個展を開催した。
これが世界最初の個展だと言われている。
クールベは「レアリスム宣言」において「自分は
生きた芸術をつくりたいのだ」と言っている。
現実をそのまま描くことを目指したのだ。
「天使を描けと言うなら、天使を見せてくれ」と
言った有名なエピソードもある。
クールベは友人の社会主義運動家プルードンに影響
を受けたのかもしれない。
反権力の立場をとり続け、労働者の政権であるパリ・
コミューンに参加した。
この時彼は芸術家総連合の会長を務めた。
しかし1870年にコミューンが倒れると、新政府に
逮捕されてしまう。
ヴァンドーム広場破壊の責任を問われたためである。
出獄後、スイスに亡命し、1877年レマン湖畔で亡く
なった。
『りんご』が描かれたのは出獄後ということになる。
賠償金の支払いを命じられていて、金銭的に大変な
時期だったようだ。
描かれたりんごはおとなしく、セザンヌのりんごの
ように強い主張は見られない。
そのセザンヌは「クールベは色調を溶かす職人だ」
と言って、美しい黒を塗りこめるのは彼だけだ、と
語っている。
りんごのうしろに描かれた「黒」は、まさにその
表現通りだと思う。
寄り道ギャラリー1分間(その144)
‥クールベ(8)
2011.4.24 & 2011.7.23 & 2012.7.3