●獅子宮敏彦  『君の館で惨劇を』  南雲堂 | 新・駅から駅までウォーキング

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獅子宮敏彦 『君の館で惨劇を』 
               南雲堂 2012.3.14発行 

君の館で惨劇を (本格M.W.S.)/獅子宮敏彦
¥1,995
Amazon.co.jp


★本の内容(Amazon.co.jpより引用)


セレブから秘密裏に依頼をうけ、難解な事件を解き
明かすダーク探偵。
ワトソン役として指名された売れない本格作家
三神悠也は大富豪・天綬在正の館へ招かれる。
ミステリー・マニアが集うその館には黒死卿から脅迫
状が届き、乱歩と正史の作品を基にした連続密室殺人
事件がおこる。
土蔵に転がる血みどろの死体!
宙を舞い、足跡を残さずに消えさる怪人!
赤い乱歩の密室と白い正史の密室が意味するものは。


★ここだけの話


古くからのミステリ・ファンには、大変楽しい内容
でした。
懐かしくなって、自分の若かった頃をつい思い出して
しまう。
そんな感じの小説です。


冒頭に引用文献(小説名)がリスト化されています。
まず、真相や結末に触れているものとして、


江戸川乱歩『パノラマ島奇談』
       『陰獣』
       『黄金仮面』
横溝正史 『本陣殺人事件』
       『獄門島』
       『犬神家の一族』
       『悪魔が来りて笛を吹く』
       『悪魔の手毬唄』
山田正紀 『ミステリ・オペラ』


の9作品があげられています。
どれも印象に残っているものばかりです。
特に横溝作品は、映画やテレビで見たことのある人
も多いかと思います。
本当に懐かしいです。


また、この他に、


堊城白人、鮎川哲也、歌野晶午、岡島二人、
小栗虫太郎、北山猛邦、倉阪鬼一郎、篠田秀幸、
島田荘司、高木彬光、二階堂黎人、東野圭吾、
三津田信三、


などの作家の作品、計55作品も小説の中に登場する
のです。
きっと、皆さんも大好きな作家がいるのではない
でしょうか。


獅子宮敏彦というと、何かファンタジーのような作風
で架空の国家、時代を背景にミステリを描いてきま
した。
今回の『君の館で惨劇を』では本格ミステリに転換を
はかり、江戸川乱歩と横溝正史の世界を忠実に表現
しています。
現代でありながら、過去に読んだおどろおどろしい
小説の時代にタイム・スリップしたような錯覚に陥り
ます。
大富豪の館は、こうした世界を意図的につくり上げた
ものなのです。

事件も「黒死卿」対「探偵+ワトソン役」の構図をとり、 
王道のスタイルで先へ先へと展開していきます。
終盤はトリックの謎解きと思いがけない犯人に驚き
つつ、ここまでミステリの世界に執着する人々がいる
ことに唖然としました。
まさに命をかけているんですね。


獅子宮敏彦から「本格ミステリの原点にたち帰れ!」と
言われたような気がしました。