●有栖川有栖  『高原のフーダニット』  徳間書店 | 新・駅から駅までウォーキング

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有栖川有栖『高原のフーダニット』 
             徳間書店 2012.3.21発行
 

高原のフーダニット/有栖川 有栖
¥1,680
Amazon.co.jp


★本の内容(Amazon.co.jpより引用)


本格あり、著者自らが言う「これまでにない異色作」
あり。
名探偵火村英生・作家有栖川有栖コンビの新たな

醍醐味、全3編!


「分身のような双子の弟を殺しました」臨床犯罪学者・
火村英生に、電話の男は突然告白した。
そして翌日、死体は発見された。
弟に加え兄の撲殺体までも……。
透徹した論理で犯人を暴く表題作はじめ、推理作家・
有栖川有栖の夜ごとの怪夢を描く異色作「ミステリ
夢十夜」。
神話のふるさと淡路島で火村を待ち受ける奇天烈な
金満家殺人事件「オノコロ島ラプソディ」。
絶品有栖川ミステリ全3編。


★ここだけの話


昨日の私のブログにも書いたように、マレーシアから
シンガポール間はマレー鉄道に乗車しました。
マレー鉄道に乗ってみたいと思ったのは、有栖川有栖
の2003年に書かれた作品、「マレー鉄道の謎」による
ところが大きかったのです。
この作品で日本推理作家協会賞を受賞しましたし、
めったに海外に出かけない登場人物の2人、火村英生
と有栖川有栖も新鮮でした。


彼の作品の中心は、2つのシリーズによって書き続け
られています。


まず、1989年のデビュー作『月光ゲーム』から続く
学生アリスと探偵江神二郎が活躍するシリーズで、
現在4冊発売されています。

そして、作家アリスと英都大学准教授で臨床犯罪学者
の火村英生のコンビが登場するシリーズが1992年以来
20冊あります。
今回はこのシリーズで3編書かれています。


最初の作品は、「オノコロ島ラプソディ」。
淡路島で発生した殺人事件のことを書いています。
決してウソをつかない元刑事の証言。
それを切り崩す火村の推理。
珍妙なトリックを解明することにより、被疑者のアリ
バイを崩してしまいます。


2作目は「ミステリ夢十夜」。
珍しく超短編を10編集めた作品で、ミステリと呼べ
ないこともない小説が並んでいます。
作者の頭の中、夢で見たこと、深層心理はこんな感じ
になっているのでしょうか。


最後の作品は「高原のフーダニット」。
これが一番有栖川有栖らしい作品。
高原の別荘地帯で起きた双子の殺人を解決します。
2人目の殺害動機がわからないため、犯人をしぼり
きれません。
しかし徹底した論理を駆使して、火村英生は犯人を
暴き出し、自首を勧めます。
この作品は作者の「あとがき」によりますと、アガサ・
クリスティを意識して書かれたようです。
でもなかなかイギリスの田園風景と同じような背景は
描けないですね。
のんびりした感じが伝わってこないからでしょうね。
いつもせかされて捜査協力をしている2人には無理と
いうものです。


有栖川有栖は、日本のエラリー・クイーンと呼ばれて
います。
彼の作品は、読者も事件の経過を火村英生やアリスと
同じようにたどっているので、事件の謎をいち早く
解明することが可能です。
彼らと推理ゲームを競っているような楽しみ方も出来
ます。
初期のエラリー・クイーンに挑戦する感じです。
後期になると、いろいろ悩みの多い問題が出てきます
から、あくまでクイーン初期のままの作風で続けて
いってほしいと思います。