●高樹のぶ子 『マルセル』 毎日新聞社 | 新・駅から駅までウォーキング

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高樹のぶ子 『マルセル』 毎日新聞社 2012.3.10発行 


マルセル/高樹 のぶ子
¥1,995
Amazon.co.jp


★本の内容(Amazon.co.jpより引用)


新聞記者の千晶は父が遺した取材ノートから、名画
『マルセル』盗難の謎にのめりこみ・・・・
実在の未解決事件をモチーフにした芳醇かつ極上の
絵画ミステリ!!


予想できない方法でわたしは姿を現し、生き返る。
遺された取材ノートから知った、ロートレックの名画
『マルセル』盗難事件。
1968年、嵐吹き荒れた時代の不可解な事件を、父は
なぜ追い続けたのか。
謎に導かれるまま、新聞記者・千晶は、東京から神戸、
京都、パリへ…。
実在の未解決事件をテーマに恋愛小説の名手が贈る
芳醇な「絵画」ミステリ。


★ここだけの話


実際におきた事件を、大変見事なミステリに仕上げて
います。
美術ファンでなくても、楽しく読むことができます。


では、簡単に『マルセル』盗難事件をご紹介します。


事件がおきたのは、1968年。
未解決の「三億円事件」と同じ年です。
京都近代美術館でロートレックの女性の横顔を描いた
名画『マルセル』が盗難にあいました。
守衛1人がその責任を感じて自殺。
警察の懸命の捜査にもかかわらず犯人は捕まりません。
時効成立後、新聞社に『マルセル』が届けられ、無事
フランスに返還されます。
しかし、犯人も犯行目的、その方法もうやむやのまま
幕引きとなりました。


さて、こうした内容に1人の女性新聞記者・瀬川千晶
をからませ、物語をおもしろくしています。
『マルセル』盗難事件の謎と自分の隠された生い立ち
が一体となって解明されていく後半部分は、全く息が
抜けません。
読み終わったあとも、すっきりした気分にさせてくれ
ました。


ちょっと気付いたおもしろいことがあります。


1968年のロートレック展の主催は読売新聞。
『マルセル』が届けられたのが朝日新聞。
そしてこの小説が連載されていたのが毎日新聞。
なんと三大紙を巻き込んでいるのがすごいですね。


ミステリとしても、恋愛小説としても、一級の小説だと
思いました。