「ぼくたちのムッシュ・ラザール」
世界各国からの移民の国、人種のるつぼカナダの中で
英語が“公用語”ではなく、言葉は勿論、食べ物、暮らしぶりに
フランスの影響が色濃く漂うカナダ・ケベック州。
冬は雪が街を覆い、陽射しが乏しく寒さの厳しいこのケベック州・
モントリオールの小学校を舞台にした「ぼくたちのムッシュ・ラザール」は、
“教師の自殺“を題材に、身近な人の死に直面した人たちが
前向きに生きる意味を模索していく姿を描いている。
教室で首つり自殺した姿が児童に目撃された教師の
代わりとして雇用されたのは、かつて教師を務めたことがあり、
カナダの永住権を持つとして応募してきたアルジェリア移民の
ヘバシール・ラザール。
巧みにフランス語をあやつって、精神的ショックを負っている児童たちと
心の交流を図るラザールは誰にも言ったことがない悲惨な心の傷を
背負って生きていた。
PTAの圧力で必要以上に教師の児童に対する“体罰”、“叱責”に厳しい
学校方針は、児童と先生の関係を疎遠にしがちであるが、父兄を恐れぬ
ラザールの児童への思いが、孤独だった登場人物達を
共に幸せを求める集団に変えていく。
幸福とはなにか、幸福である条件は、
人生の経験、試練を乗り越え
いかに幸福の追求を続けるのか。
敢えて子供たちには演技指導をしなかったと
フィリップ・ファラルド―監督が語る
子供たちの生き生きした表情、
そして内面の苦悩を抑えたラザールを演じたフェラグの表情が素晴らしい。
モントリオールの地元料理がたびたび出てくる本作。
モントリオールと言えば厳しい寒さを乗り越えるために、
熱々のフライドポテトの上にとろけるチーズをのせさらにグレービーソースを
乗せた高カロリー食のプーティン。
熱々のプーティンのような素朴で、飾らぬ、口に入れるとさまざまな味が
ミックスされた心温まる2011年のカナダ映画。
「瞳は静かに」(ANDRES NO QUIERE DORMIR LA SIESTA)
アンドレスは昼寝をしたくない(シエスタで眠りたくない)の原題を持つ
2009年のアルゼンチン映画。
時代背景は、軍政権下、強い抑圧、弾圧が国を覆っていた
1970年代のアルゼンチン。
突然の交通事故で母親を亡くした小学生のアンドレスとその兄は
アンドレスが大好きな祖母と一緒に暮らすようになる。
軍政権時代の、一般市民を含む大人たちの諜報活動が作品の一つの
側面であろうが、ところどころに流される、軍政権時代の反政府主義者狩りの
姿は、殆どが暗喩的であり、本作を最も特徴づけ、主題の暗さを払拭している
のは、コンラッド・バレンスエラ少年が演じるアンドロスの生き生きとした生活感であろう。
非常に夏の暑さの厳しいスペイン内陸部、
日中の暑さを避けるための知恵シエスタはスペイン人の手で
アルゼンチンにもたらされ、スペインでは最近までこの習慣を
守っている人たちがいた。
祖母はアンドレスに昼寝をしなさいと強制するが、
少年アンドレスは昼寝をしたくない。
強制されることへの反発、
自由を渇望する心、
そして寝ていないで、真実を突き止めたいと心の願望
平和な時代のそして強制されることのない幸福感に満ちたシエスタこそ、
少年アンドレスが望むシエスタであろう。




