「野蛮なやつら」(Savages)
ドン・ウインスロウが、
またまた、
恐怖を絶対的武器に勢力拡大を図るメキシコ麻薬カルテルと
その生き方自体がヒップな若いアメリカ人達との知恵比べ、
命を賭けたチキンレースを、
ヒップでホップな文体で物語った.
「野蛮なやつら」。
「犬の力」同様舞台はカリフォルニアの
メキシコとの国境地帯。
ステレオタイプであるが、
自分たちを蔑視するグリンゴ(米国白人)達に憎悪の念を抱く
貧しく、強権に搾取され続けているメキシコ人達.。
トレヴェニアン同様の歯に衣を着せぬ反体制的言葉を散りばめた
ドン・ウインズロウの作品に惚れ込んだ、
自身“反体制”的作風で制作を重ねてきた
オリバー・ストーン監督が本作を映画化している。
無軌道な人物が跋扈する本作の中で、もっとも“野蛮”な
キャラクターが、組織への敵対者、裏切者を残虐に拷問し、
首を切らせるメキシコ麻薬カルテルの南カルフォルニア地区
保安部長のラドで、ラドを演じるのが、黄色くカラーマネージメントされた
映像が印象的な「トラフィック」でメキシコ側の麻薬捜査官を演じた
あのベニチオ・デル・トロ。
映画化された「野蛮なやつら」は未見であるが、
知性・品性に欠け、サディスティックな拷問を好む
ラドを知的なベニチオ・デル・トロがどのように解釈し、
“タカ派”のオリバー・ストーン監督の意向を受けて
どのように残虐に演じているか、想像するだけでおぞましい。
中東の地で冷徹で優秀な兵士として鍛えられたチョン、
左翼的環境で育ち争いを好まない平和主義者であり
仏教にも造詣が深いベン。
ベンとチョンの二人を愛し、愛される心豊で自由な
女性O(オフィーリア)。
ベンとチョンが水耕栽培した極上大麻、そして成分の異なる
複数の大麻を絶妙のブレンドで製品化する技術。
これらに目をつけたメキシコ麻薬カルテルとベンとチョンの戦いは
人質にとられたOを巻き込み、そして多くの無辜の民の命を
奪い、怒涛のような終末に向かって奔流する。
植草甚一の散文のような自由闊達でおおらかであると
同時にその背後に無常観が漂う娯楽大作。


