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「ライク・サムワン・イン・ラブ」


エラ・フィッツジェラルドが歌う「Like Someone in Love」では

「私」は恋をしている誰かのように、

星くずを見つめていたり、ギターの音色に耳を傾けていたり、

羽があるかのようにかろやかに歩いたり、

気もそぞろに何かにぶつかったりしている。



イラン人監督アッパス・キアロスタミが東京を舞台に日本人俳優を

使って日本語で制作した「ライクサムワンインラブ」では

退職した一人住まいの元大学教授が

デートクラブの女子学生に無償の愛情を注ぐ。



「ニーチェの馬」のタラ・ベーラ 58

フィンランドを舞台に、下層階級の人間を

主人公にした多くの作品を制作している

アキ・カウリスキ 56

そして本作のアッパス・キアロスタミ73

彼らの作品はいずれも土着性を強調し、

登場人物の心をその土地独自の映像で表現する。



本作では老教授が一人で住むフラットの佇まい、

田舎から女子大生に会いに出てきたおばあさんが

何時までも来ない孫をひとりじっと待つターミナルのカットが

秀逸である。



デートクラブで働く女子大生の明子、

デートクラブのオーナーの紹介で明子を部屋に呼んだ

元大学教授のタカシ、そして明子に恋する自動車修理工

ノリアキ。



労働者階級のノリアキとインテリのタカシは

片や暴力的に、片やプラトニックに全く別のアプローチで

一方的に優柔不断な明子と接点を持つ。



西洋風には背を向け、土着の文化を題材とする

アッパス・キアロスタミが敢えて日本を題材として

作り上げた本作の明子、タカシはある意味

誇張した形で日本人の性格の一面を描いている。



監督が静かにうったえる優柔不断の結末。




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「恋のロンドン狂騒曲」 You Will Meet a Tall Dark Stranger

77歳になるウディ・アレン監督は映画制作のモチーフを次のように

表現する。

「なぜ人は存在し、苦しみながら生きるのか。

人間は自分の存在や孤独とどう向き合っていくのか。

答えの出ない問題をいつも考えている。

だから僕の映画にはそのテーマが忍び込む」


ある特定の時間に、現在のパリと、1920年代当時の文豪や芸術家が

闊歩する美しいパリを行き来する脚本家の“夢”を描いた

楽しいファンタジー「ミッドナイト・イン・パリ」の前作である「恋のロンドン狂騒曲」は

作品によって評価の振れ幅が大きいウディ・アレン監督作品の中では、

“悩む” ウディ・アレン監督のシニカルな面が作品全体を

色濃く支配する、人生シミュレーションとしての映画の系譜に属している。


年齢に反逆して永遠の若さを追求する夫と、年齢通りに生きることを

モットーとする結婚40年目の老夫婦、

芽の出ない小説家と結婚し、いまではお互いに違う生き方を志向している

その娘、

さらに娘の父親の浮気相手と、夫の浮気相手の女性たち。


人生の目的は何か、

何のために生きて行くのか。

生き方を見失ったときの心の拠り所の一つが占い

You Will Meet a Tall Dark Stranger

良い人と出会えますよ。


幻想、錯覚、自己愛。

良くも悪くも“正統派”ウディ・アレン節が随所に散りばめられた人生喜劇



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「君と歩く世界」De rouille et d'os

『真夜中のピアニスト』、『預言者』と一癖も二癖もある男を

主人公にした男臭いフィルム・ノアールの作風とは180度違う、

女性を主人公にした“恋愛”映画を撮りたかったと語る

ジャック・オーディアール監督。


『エディット・ピアフ・愛の賛歌』で迫真のエディット・ピアフを演じた

マリオン・コティヤールに魅せられて、彼女を重要な登場人物に配して

制作された本作も、男性的力強さを持マリオン・コティヤールの個性が

生かされ、観終わってみれば、やはりジャック・オーディアール監督の

潜在意識が強く反映された“男”の映画であった。


マリンランドでのシャチの調教師として緊張感溢れる生死一体の

時間を離れると、ディスコで男の心を弄ぶスリルを生きがいにしていた

ステファニーがある日事故で突進してきたシュチにピールに突き落とされ、

両足の膝から下の部分を失う。


この事故で生きることに絶望した日々を過ごしていた

ステファニーは、以前ディスコのトラブルでステファニーを救ってくれた

粗暴の用心棒アリを思いだし、コンタクトをとる。


生きるためには窃盗や違法な監視カメラの設置作業そして

素手でのストリートファイトも厭わない労働者階級の男アリ。

機嫌が悪いと息子をソファーに投げつけ、

自己の最も原始的な欲望を満たすことを

最優先した生き方をしているアリが漂わせる

無頼の雰囲気に惹かれていくステファニー。


生き方が下手な男と、

生きることに意味を見いだせなくなっていた女。


膝から下が無い女性を描く特殊技術が素晴らしく、

本作では、どんな役でも演じ切れるマリオン・コティヤールが持つ

男性的な一面が垣間見られる。





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