ダウン・バイ・ロー 悲しくて美しい世界
ジム・ジャームッシュ監督の1986年の作品
“ダウン・バイ・ロー”(Down by Law)
オープニングクレジットに先だって流される、
ルイジアナ州ニューオーリンズの湿地帯、住宅街、
荒れ地、廃屋、ダウンタウンのモノクロ映像の光と影が
この作品の姿を象徴している。
新聞の報道で重視される5W1Hとも、
学校で教えられる作文の基礎“起承転結”とも無縁の
感性の世界。
刑務所でのシーン、そしてニューオーリンズの巨大な沼地が
ハイライトのこの作品では、殺人場面も暴力場面も無く、
縦割り社会になじめず世渡りが下手な男達が、
「英語が流暢でない」との設定のイタリア人を軸に、
“Down by Law”が意味するとされる“頼りになる仲間”
としての共同生活を経験する。
最新作ロビン・フットでも、いつものように独特の感性で、
独立する女性を演じていたケイト・ブランシェットが
本作のトム・ウェイツと共に出演していた2003年公開の
オムニバス映画“コーヒー&シガレット”は、モノクロの映像で、
登場人物が乱雑な部屋でコーヒーを飲みながら、タバコを吸い
ひたすら話し続ける俳優の個性が映画を形作る作品であったが、
本作でもジム・ジャームッシュ監督の世界を体現する俳優達の
演技力で魅せる映画であった。
後に監督として“ライフ・イズ・ビューティフル”を作り上げた
ロベルト・ベニーニ演じるイタリア人ロベルトが英語を覚えるために
肌身はなさず持ち歩いていた手帳に書き留めたのが次の言葉。
It’s sad and beautiful world” (悲しくて美しい世界)




