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『トイレット』(映画)



グラフィックアーツ業界に多くの人材を輩出している千葉大学 工学部

画像工学科を卒業後南カリフォルニア大学映画科で映画制作を学んだ

荻上 直子監督が長年持ち続けてきた北米での映画制作の夢を実現

させた映画「トイレット」



本作は、美しい街トロント郊外の住宅地を舞台に、父は既に死亡し、

女手一つで育ててくれていた最愛の母を亡くしたばかりの兄妹三人が、

母が死の直前に日本から呼び寄せた“ばーちゃん”と一緒に暮らす

日々の中で、バラバラだった三人が兄弟愛、

そして自分の本来の姿を取り戻していくという物語である。



本作の舞台はトロントのカナダ人家族の家であり、

演技する俳優達もばーちゃんを演じたもたいまさこ以外は

荻上 直子監督が主にオーディションで選んだ北米の俳優達で

制作した映画であるが、端正な画像と、その静寂さに

わび・さび侘・寂)も感じる、松竹大船映画の伝統を

強く感じる作品であった。



本作の原題となっている日本のハイテクの象徴“全自動トイレット”、

博物館の骨董品ともいえるような“シンガーの足踏みミシン”から

縫い出される美しいパターンのスカート、

そして実物以上に美味しそうに写し出される母の味ギョーザ゙、

これらの目に見えるものを象徴として、

心豊かな充足感、そして美しいフォルムが全篇を支配する本作、

その考えぬかれた映像は美しかった。



“センセイ”と呼ばれるアメリカンショートヘア系の母の愛猫の

自由自在な“演技”も本作のみどころである。



ヒトを描くことをライフワークとしていたフランソワトリュフォーが遺した低予算の

作品群には“フランス文化”を色濃く感じるが、同じく一人一人の

人間を描くことを作品のテーマとしている荻上直子監督の作品に

“日本文化”を強く感じる。



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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ワシントンDCのユダヤ人家庭に生まれたジョナサン・サフラン・フォアの

2005年の著作「Extremely Loud and Incredibly Close」を基に

フォレスト・ガンプを手掛けた脚本家のエリック・ロスと

リトル・ダンサーを制作した英国人監督のスティーブン・ダルドリーが組んで

2011年に米国で制作された「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」

Extremely Loud and Incredibly Close


本作のキーワードは9.11アスペルガー症候群、ホロコースト。

アスペルガー症候群とは知的障害のない、あるいはほとんどない自閉症に近い

症候を指し、表情を手がかりとしてニュアンスを読みとることができず、

口に出して言葉で言わなければ、意図していることが何かを理解できない状態を

指すようであり、本作の主人公オスカー少年は

軽度のアスペルガー症候群に罹患していると設定されている。


コミュニケーションのツールとしては表情ではなく言葉。

特に本作では「書かれた言葉」が重要な意味を持つ。


本作で最期までその正体は明らかにされないが、

重要な役割を果たしていた人物が、オスカーを可愛がっている祖母の

住むフラットに間借りした老人。

その表情だけからは感情を読み取る事が不得手なオスカー少年が

この温和な老人に対して時として見せる無礼で傲慢な態度はすべて

アスペルガー症候群によるものであり、本作が初出演で素人の

トーマス・ホーン君がスティーブン・ダルドリー監督の指導を

忠実に受け、見事にこの役を演じ切っていた。


欧州で受けた第二次世界大戦中のある出来事が原因で、

言葉を話すことをしなくなった間借人の老人を演じたのは

スウェーデンの名俳優マックス・フォン・シドー。

ニューヨークで宝石商を営んでいた父との関係を暗示させる過去を持ち、

9.11テロで亡くなった父親の遺品をもとに、父親探しに狂奔する

オスカー少年を我慢強く、優しい眼差しで接するその態度に、

オスカー少年は自分とこの老人の関係に少しずつ気がついていく。


いろいろと示唆に富む「Extremely Loud and Incredibly Close」の言葉、

私には、9.11テロに巻き込まれた父親が、順番に、限られた時間しか

使用できない携帯から、必死になって自宅にいるオスカーにかけ

いつまでも鳴りやまなかった呼び出し音、

そして受話器がとられることがなく、留守録として電話機に残された、

オスカーだけがその存在を知っている父親の最期の声であろうか。


スティーブン・ダルドリー監督は、9.11の悲劇を縦軸として“親とは”、

“子とは”を追求している。




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『猿の惑星:創世記』(Rise of the Planet of the Apes)


原題でApesと呼ばれるチンパンジー、ゴリラ、オランウータンや

テナガザル等の類人猿。

この『猿の惑星:創世記』(Rise of the Planet of the Apes)はサルの中でも

特に人類に近いヒト科の類人猿が邪悪な心を持つ人間に反逆し

勝利する物語である。


未見であるが、人間社会への辛辣な風刺 が込められたとされる

1968年公開の 『PLANET OF THE APES/猿の惑星 』の思想が

引き継がれていると感じる2011 公開のアメリカ映画

『猿の惑星:創世記』。


主人公のウィルは大手製薬会社で、自分自身の父親も患っている

アルツハイマーの治療薬として脳細胞の活性化を図る新薬を開発し、

チンパンジーを実験台にその効果を確認する過程で、

この新薬は絶大な効果を発揮する可能性が示唆されたが、

実験台となったチンパンジーは、生まれたばかりの子供を人間から守る

ための行動が仇となり、自らの命を人間の手により断たれる。


ウィルが研究所から密かに引き取り、シーザーと名付けて我が子のように

育てたこの赤ちゃんチンパンジーは、母親に投与された薬の影響で

高度な知能を持ち、手話は勿論、人間の心を完璧に理解するようになる。


シーザーが成長し、人間の心を理解することで起こした、

ウィルの父を助ける行動が、類人猿の行動を理解できない人間達によって

糾弾され、シーザーは人間に対して心を閉ざし、新薬の力を借りて

人間の手で抑圧されていた類人猿達の知能を自ら高め、

組織化する事に成功する。


途中までは動物虐待の場面が目につき、あまり感心はしなかったが、

人間として育てられたシーザーが、自分は人間では無いことを自覚し、

人間の支配下で惨めな日々を過ごしていた自分たち類人猿の仲間を

解放し、王国を築き上げる過程は、観客に高揚感を与え、

爽快な気分をもたらす、楽しい娯楽映画であった。




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