『反転』 ケータの場合 第2話 | マナりんごのHello☆海日記 ときどき投資とお酒の日記

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いつまでたっても、初心者のアラ50独身へっぽこサーファー☆
2014年に関西から宮崎県にお一人様で移住しました。

2019年12月から、株式投資を始めました。これまたヘッポコですがw
そんなヘッポコなアラ50の日記です。

駅から会社へ向かう人波の中で、ケータはため息をついた。いつもなら、長身の彼に似合う黒のコートの裾を翻し颯爽と歩く彼が、ポケットに手を突っ込み、うな垂れて歩いていた。







『お早う、どうしたの?元気ないね?』





岡島キョウコが、ケータの背中に優しく手を置き、顔を覗き込んだ。彼女の白い肌によく似合う、淡いピンクのストールを綺麗に首に巻いていた。





『あ、うん。おはよ。ちょっと疲れてるだけかな?』





ケータは、キョウコの顔から目を逸らすように、前を向いて歩き始めた。





『あ、日曜日。取引先との接待だって言ってたよね?カニ食べに行ったんだってー?美味しかった?』





『あ・・・うん。美味しかったよ。ごめんな、時間が無くてお土産買えなかったよ。』







ケータは、土曜日のカナの話に動揺し、接待は上の空だった。


接待と言うよりは、ケータの担当代理店が、全国で3位の売り上げであったことに対しての、お礼を兼ねてのカニ日帰り旅行。



皆無言になる、カニ料理でありがたい・・・と、密かに感謝していた。





『ふーん、つまんない。あ、嘘嘘~。お仕事だもんね、仕方ない。』





キョウコは明るく言って前を向いた。
2人は微妙な距離を保ちながら、会社に向かって歩いていた。


『あ、決算済んだら、うちの実家に来るって言ってたよね。もう、今からお母さん張り切っちゃって。楽しみだ~って、電話する度に言ってくるの。恥ずかしい位。』


キョウコはそう言いながらも、嬉しそうに弾んだ声で言った。


ケータは、突然立ち止まった。

後ろの若いサラリーマンが、スマホを見ていて気づかずケータにぶつかり、舌打ちをした。


『キョウコ・・・』


キョウコが振り返った。


ケータは一呼吸置いて、クビを小さく降ってから、歩き出した。


『キョウコ、今週土曜日って、会えるかな?』


キョウコは嬉しそうに一歩ケータに近づいた。


『うん、いいよ。楽しみにしている。』


ケータはそんなキョウコに向かって微笑んでから、前を向いて歩き始めた。