バルセロナからバスでマルセイユへ

マルセイユの目的はもちろん、ル・コルビュジェ設計の『ユニテ・ダビタシオン』を見ること、そしてそこに宿泊すること。マルセイユのユニテ・ダビタシオンは1952年に竣工した鉄筋コンクリート造18階建ての板状の高層集合住宅である。1945年に、戦後の切迫した住宅問題を解決するため政府から建築法規を無視してもいいと特別な条件で依頼された実験的集合住宅。
マッシブなピロティの上には、独身用から4人家族用まで、23タイプの住居計337戸が納められている。現在は1500~1600人が暮らす。スーパーやホテル、屋上には体育館や幼稚園もあり、ひとつの巨大都市として構想された。外壁は荒々しく仕上げられたプレキャスト・コンクリートのパネルの組み合わせである。この建物において大々的に実現された屋上庭園にも様々なコンクリートによる造形が見られる。モデュロールやブリーズ・ソレイユ(日除け)といった後期の重要な要素が全面的に使われていることも特徴。
いまではユニテは人気の物件だが、まだ空き室がたくさんあった頃、建物を所有している政府から現在のホテルのオーナー(ケレール氏)に『ホテルとレストランをやらないか』という誘いがあったという。コルビュジェのオリジナリティーを逸脱することなく改修することが条件だった。そこで3、4階部分を購入。シングル16室とツイン7室、小さなロビー兼レストラン、バーを加え、61年にホテルをオープンさせた。
マルセイユ駅前で長距離バスを降り、地下鉄で最寄りまで行き、バスに乗ってバス亭『Le Corbusier』で下車。ユニテのことを現地の人々は設計者であるル・コルビュジェと呼んでいる。バス停もユニテ前なのでコルビュジェの名前が使われていることに感動した。サヴォア邸の前のバス停もコルビュジェの名前がそのまま使われていた。

バス停から入り口に至るまでにピロティに出迎えられるわけだが、あまりの迫力に圧倒された。荒々しいコンクリート打ち放しの仕上げ、写真で見慣れていたはずが予想を大きく超える量感。玄関ホールで守衛に話しかけられホテルに行きたいことを伝えるとエレベータの階数を教えてくれた。驚くことに18階建てのこの建物にはメゾネットの住戸内や、一部には階段もあるが、基本的には上下の移動はエレベータのみである。

エレベータで3階に行き、受付で泊まれることを確認。ここまで来て泊まれなかったら最悪だが、部屋は空いていたのでシングルルームに泊まれることになった。部屋に荷物を置き、食料の買い出しのために近くを散策。スーパーとパン屋を見つけパンとビールを買ってユニテに戻った。周辺は緑豊かでテニスコートや公園があり、ベンチに座り真っ昼間からユニテを見ながら飲んだビールは最高だった。

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