【詩】「性」 | 山下晴代の「そして現代思想」

山下晴代の「そして現代思想」

映画、本、世界の話題から、ヤマシタがチョイスして、現代思想的に考えてみます。
そしてときどき、詩を書きます(笑)。

「性」

性というのは、当然生殖のことである。子孫を増やすため、生殖する。
しかし、人間は精神というものを持ってしまった。昆虫のように、深海魚のように、「無私」でできない。
人類最大の不幸。どんな人間にも、ロマン=快感がいる。
その昔、小倉駅前に「おにーさん、500円でどう?」
と声をかけてくる女がいた。誰も避けていた。
しかしあるとき、物好きな男がハナシのタネに応じてみようとした。
後日譚……臭くて臭くて……500円だけ払って逃げ帰った、とか。
まあ、ある程度年を取ると、自然性の観念から離れていく。
それは生物として自然なことである。マスメディアや商業主義のせいで、妄想を抱く年寄りもいるが。
それはともかく、ある種の自称詩人の女性の詩などを目にすると、
いつまで経っても、性の観念から逃れられないヤカラがいる。
彼女らが書く詩のほとんどが、恋愛=性がテーマというか、そういう物語に引きずられている。何を書いても、そこへとつながっていく。
一生、そこから逃れられない。
なんでやろか? と私は考えてみた。
彼女らの自我形成期に、
すでに性の精神のようなものが存在し、
それが世界になってしまった──。
性が形成する妄想は、こんにち、
さまざまな犯罪を生み出している。
文化人類学的、
レヴィ・ストロース的、
オクタビオ・パス的、
二重の炎。