里山と熊鈴と私(黒伏山・山形県東根市) | 里山と熊鈴と私

里山と熊鈴と私

朝寝坊と山を愛するあなたへ。日帰り、午後のゆるゆる登山。

 というわけで、山形県の黒伏山(くろぶしやま・1,226.7m)に。


 途中、48号線沿いにコンビニを探したんだけど、結局、熊ヶ根のセブンイレブンが最後のお店だったようだ。飲み物は自販機で調達か、と思って峠を超えたら、「泉や」さんが出現。

 「まだ、開店前なんだけんど…」。わあ。山一つ越えただけで、こんなにも方言のアクセントが変わる。

 そんなオバチャンから、温かいお茶2本と、味噌おにぎりを購入。


 高度差300m、東北を代表する壁、黒伏山の南壁が見えてきた。わあ。ものすごい迫力です。

 黒伏スノーパークの駐車場はたくさんあって、逆に、どこに置けばよいのか良く分からない。    

 結局、4~5台停まっていた、P3に駐車。P3とP4の間に、登山口があるようだ。なお、スキー場にはトイレがあるんだけど、オフシーズンゆえか、しっかりカギがかけられていた。

 

 9:55、歩き始める。「クマ出没注意」ののぼりが掲げられているのが、何とも言えない感じである。

 

 ちょっと下った先に沢がある。

 仮設橋が架けられているんだけど、ほんとの仮設って感じで、幅30cmの板を恐るおそる渡る。

 結構、くわんくわん揺れる。最初から、サバイバル感満点です。

 

 左に折れて、ちょっとだけ急坂を登れば、あとは平坦なブナ林歩き。

 わあ、森が深い。印象としては、県境をまたいだ船形山の森に近い感じ。

 本日の脳内BGMは、ノラ・ジョーンズの『Feels like home』より「Sunrize」。

 ノラ女史は、もともとジャズ寄りだったと思うのだけど、すっかり今やポップスターである。

 

 テイラー・スウィフト女史しかり、あの国で売れるというのは、こういうことなのだろうな、と思う。

 

 それにしても、このアルバムの曲は、この曲と「Creepin'In」以外、ほとんど印象に残らないのはなぜ?

 

 山の話でしたね。

 

 10:16、涸沢に出たところで、道が分からなくなった。上り下りを繰り返しても、ピンク色の目印が見つからない。東側に平場があるようなので、ちょっと行ってみたら、踏み跡のようなものがある。ダメもとで登ってみることに。

 

 ふうふう。急な坂。登り切ったら、南壁の直下に出た。ものすごい迫力の壁がドーン、と。

 どうやら、ロッククライマーさんたちの道に迷い込んでしまった模様。しまった。でも振り返ればスキー場の方面が開け、なかなか良い景色。

 

 むしろ、得したとポジティブ・シンキングして、再び急降下。

 

 沢を西へと伝ったら、あら、なんだ、ちゃんとした道がありました。このまましばらく、南壁の下を回り込む。

 

 12時少し手前、尾根に達し、遅沢分岐と思われるT字路。だけど、表示も何もない。いくつかのブログには、白い円形の道標の画像が載っているのだが、どうしてもそれを見つけられない。半信半疑のまま、右に折れて急斜面を登る。

 

 ふうふう。ものすごい傾斜。さっきの南壁手前で体力を使ってしまい、なかなか捗らない。

 

 12:35、やっと南壁の上に出る。素晴らしい景色。

 右方向に道があったけど、しばらく行くと行き止まりになるようだ。崖が鋭く切れ落ちていて、ゾクっとする。あまり長居したくない感じ。

 

 左方向に丸っこい頂上が見える。あと少し。

 

 13:01、黒伏山山頂着。灌木に覆われて、眺望はない。

 誰もいない。ど真ん中に座り込み、オバチャン手製の「味噌おにぎり」を頂く。

 13:18、白森方面へ。

 尾根沿いの、さほど起伏がない道をしばらく歩く。

 

 前方の、尖がったきれいなシルエットが白森なのかな?

 まさか、あそこを通過するわけじゃないよね、と思っていたら、道はどんどん、そっちの方向に続いている。

 

 わあ。高度が上がり、けっこう怖い。「どう」と風に体を持っていかれそうになり、急斜面を四つん這いで登り切ると、白森(1,263m)の頂上であった。13:55。

 

 絶景。

 月山、朝日連峰、遠くには鳥海山。太平洋側には、船形山、蔵王、雁戸山、面白山などなど、オールスターキャスト。

 

 黒伏山の肩越しに、スキー場の斜面が見える。森が刈られて草地が筋状に伸びている。なんとも痛々しい。改めて、人間の傲慢さを思い知らされる。

 

 なんて自分も、ちょっと前までは、繰り返し聞かせられる広瀬香美の「ロマンスの神様」のハイトーンに辟易しながら、ゴンドラに揺られる一人だったわけだが…。

 

 あとは時計回りに気持ちの良い縦走路。

 向こうに見えるのが銭山か。あれも超えないといけないみたい。

 

 ひとつ難所を超えると、また強敵が現れる。本連載末期の『聖闘士星矢』みたいだ。

 

 14:42、銭山(1,237m)山頂。

 この道は、ずっと、眺めが良いのがうれしい。

 船形山が間近に見える。山頂の山小屋まで見えそうなくらいに。

 いつだったか、船形山の山頂で、どっかのオジサンが「黒伏が見えるよ!」と嬉しそうにおっしゃっていたのを思い出した。

 

 それにしても、誰にも会わない。しずかだ。

 陽が傾き、景色が黄金色になる。うつくしい。

 このあたりの脳内BGMは、スティングの「Fortress Around Your Heart」から「Fields of Gold」への流れ。

 

 15:16、福碌山(1,211m)山頂。

 ここから、ものすごい急降下が始まる。柴倉山コースから周回する人は、ここを登るのだろうけど、結構大変そうである。

 

 15:24、柴倉山への分岐。青い円盤の道標が、木の根元に無造作に置かれていた。

 森の中を、登ったり、降りたりの繰り返し。なかなか、黒伏山南壁が近寄ってこない。

 下り坂で踏ん張り続けるため、両足の小指が痛くなってきたし、両腿もかなり、しんどい。

 

 ものすごい急降下。木の根を階段代わりに、ソロソロと。

  つーか、これ、道かなあ?

 なんだか、良く分からなくなってきた。ちょっと、時間がかかり過ぎないかい?別の道を来ちゃったのかな?

 

 陽がどんどん陰ってくる。せめて、太陽が黒伏の向こうに行ってしまう前に、この下りを終えてしまいたい。

 

 「まだ日は沈まぬ。」急傾斜なんで、メロスの様に走るわけにはいかない。ひたすら無言でずんずん歩く。

 

 やっとこさ反対側の稜線に出たら、スキー場の建物が見えて、ホッとする。

 

 ずんずん下る。沢の音が強くなり、なつかしい仮設橋が見えれば、ゴールはもうすぐ。

 16:50、登山口着。ずいぶんかかってしまった。

 見事に、我が車だけしか残っていない駐車場。

 

 太陽は、山の陰に隠れてしまった。セリヌンティウスさん、間に合わなくてごめんなさい。

 

 黒伏山が、その名の通り黒いシルエットとなって聳えていた。

 思ったよりハードだったなあ、と。だけど、急斜面を一気に登ってしまえば、あとはアップダウンの少ない縦走路を、景色を眺めながら、ポクポク歩くことができる。

 白森からの眺めは圧倒的だし、また来たくなる山です。

 

 機会があったら、今度は、柴倉山にもチャレンジしてみましょう。

(20161016)