職域代表(職能代表)なのか組織代表なのか? | クマゲロのブログ(熊谷宏)

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田舎の歯科医師が個人の立場で徒然に呟いています。

先日開催された、日歯連盟第151回評議員会において、
「将来を見据えた参議院比例代表候補者の育成について」というタイトルの質問をしました。

その質問の中で、「職域代表」という表現を使ったことに対して、執行部より、「職域代表ではなく組織代表だ」とのご指導(?)を頂きました。笑。

この件、知らないわけではなく、角を立てるつもりもないので、そこでは反論しませんでした。議論すべきは他にたくさんありますので。

しかし、一応僕なりの思いはありますので、2020年8月20日のfacebookでのつぶやきを、少々改変して、再掲してみたいと思います。

昭和25年に初めて歯科医師会として林了先生を擁立以来、擁立した方は当然ながら歯科医師でした。歯科に限らず、医科、薬科はじめどこでもそうです。

それが平成28年、日歯連事件をうけて、一度組織決定した砂川先生擁立を白紙にして、混乱の中、安倍官邸の要請を受け、山田宏先生を都道府県歯連盟の判断で推薦、という形になったことことはご承知のことです。

今、組織代表という言葉を使うことと、山田先生のことが関係あるのかと調べてみましたが、そうではなく、山田先生の話がくる数年前に組織代表ということばが使われるようになったようです。

日歯連盟広報のバックナンバーを調べてみました。

臼田会長―大久保会長―永山会長―堤会長―高木会長―高橋会長 という流れですが、
臼田会長から堤会長まではすべての会長が職域代表という言葉を使っておられました。

高木会長から高橋会長、太田会長の現在まで組織代表という言葉をお使いになっています。

一方、石井みどり先生は、会長が組織代表という言葉を使う中、首尾一貫「職域代表」という言葉をお使いになられてきました。

歯科界の代表という強い意識の表れではなかろうかとおもいます。

さて、職域代表とういう表現と組織代表という表現、どちらが良いかと言えば、私は職域代表がふさわしいと思っています。

(ちなみにあくまで想像ですが、高木先生は、「職域という表現だと業権の主張というエゴイスティックな印象があるので、組織という表現を使った方が理解が得られやすい」というお考えではなかったかと思っています。国民からの理解、という思いを大切にされた高木先生だから、そのように想像しました。)

なぜ職域代表のほうが良いと思うのかですが、単に連盟から擁立する候補者は歯科医師であるべきだから、という単純なものではありません。

そもそも、職域代表は職能代表ともいわれ、「地域代表」の対義語と位置付けられ、日本国語大辞典にはこう書いてあります。

職能代表
代議制国家において議会の議員を各種産業団体、消費者団体などの職能別団体から選出する制度。地域代表制に対する反省から生まれた。第一次世界大戦後のイギリスのギルド社会主義、フランスやイタリアのサンジカリスムに代表される主張で、ワイマール時代のドイツ、第二次世界大戦後のフランスにおける経済会議はその典型である。〔国民百科新語辞典(1934)〕(日本国語大辞典)

また、昭和63年に出された「参議院のあり方及び改革に関する意見」の中には、「国民の多種多様な利益や意見のなかには、衆議院のみによっては十分に代表され、反映されていないものもないではなく、参議院は、その審議において、努めて それらを吸収し、反映することが必要である。また、その場合、特に社会の各部門、各職域における特別の知識経験を有する者の、いわば専門家としての意見を 十分に取り入れることが期待される。」とあります。

ようするに、議会における議員には、「地域の代表」という側面と、特に参議院において、「社会の各部門、各職域における特別の知識経験を有する者の、いわば専門家の代表」
という側面があるということです。

ですから、職域代表という言葉のほうが、歴史的にも、また合目的的に合致しているのではないかと思います。

で、そうなると、さまざまな職域(職能)団体からの代表候補は、当然その職能をもった人間であるべきとなりますね。笑。

日本歯科医師連盟で言えば、当然のことながら、歯科医師、であります。

きつい言い方になりますが、組織代表などというあいまいな言葉が広がってしまったばかりに、「歯科医師でないからいいのだ!」などという支離滅裂な発想を心から信じてしまうような状況を生んでしまっているのではないかと思います。