私は2006年12月7日から柳谷金平先生に習い始めました。大阪教育大学で夜間に行われていた、市民講座 書(秋)講座 古法を学ぶです。貫名菘翁の前後赤壁賦を手島右卿先生が臨書したものが手本でした。秋と春に募集があり人気の講座でした。申し込みに外れ、2009年4月13日から柳谷先生の自宅で毎週2時間教えて頂きました。この時は手島先生が書かれた光明皇后楽毅論と貫名菘翁の左繡叙が手本でした。2014年2月3日から日本橋教室に場所を移しマンツーマンに近い状態で現在も教えていただいています。最近は、手島先生と同じ比田井天来門下の上田桑鳩先生の臨書も手本にして練習しています。
柳谷先生に書いていただいた手本、先生の説明や橋爪のメモを見直しながら手島右卿先生の古法を探っていきます。
2010.4.26
柳谷先生は何らかの方法で伝えないと滅ぶので、書を探求する人に教える。また、本で教えるのは難しい。マンツーマンで教えるのが伝える最もよい方法と話されます。私は「教えて頂いた手島右卿先生の古法を人に教えられるように学ぶ」とメモに書いています。
先日、柳谷先生に「どんな線を引きたいですか」と聞いてみました。すると、「ねばっこい、強い線」という答えが返ってきました。
2013.7.8のメモ
「強い線」 紙に筆が強く、ぴったりくっつくことができるか。
〇毛の弾力(突いて筆を動かすと毛と毛の間に隙間ができる)
〇捻じれ(穂先を動かさないで腹だけを動かす 筆の面が変わる)
2006年12月から習い始めた頃の記録です。
手島雄右興先生の貫名菘翁前後赤壁賦の臨書
緑の部分が突き返し、水色の部分が捻じれ(※後から書き加えたもの)
秋期講座で、手本を籠字書きし、先生が白板に書かれた赤線を書き込んだものです。
出来ていないところを先生が半紙に書いてくだっさったものです。
穂先を動かさずに筆の腹を動かす説明図です。(※この頃、なぜそうするのかは分かっていない)
東京学芸大学の書道科を卒業された先輩の先生が、手島右卿の文字はくねくねしていて好きではないと話していました。
手島右卿先生の文字は、なぜくねくねしているのでしょうか。
①横画
2007.5.10
上:手島右卿先生 下:柳谷金平先生の臨書
2008.5.8
2010.4.26
筆が立ち上がるまでは引く、つかない。立ち上がったら突く。そうしないと筆菅が左に倒れない。
2010.8.30
突き返し、筆の毛のバネを使って△へ。凹みがあるところは突き返して筆のバネを使って運筆している。
2010.4.26
毛が紙に引っ張られるので、実際にはこの筆の跡のようにはならないがイメージとしては車のワイパーのような筆の動きで、「引く」(筆管は右手前に倒れる)「立つ」(筆は吊り上げられ、筆管は垂直)「突く」(筆管は左に倒れる)
右斜め上から入筆し少し突き返しながら筆菅を右へ倒し引く、このとき鋭角に方向転換するとパタンと筆が裏がえってしまうので少しまあるく曲線に動かすと毛がよく捻じれる。(引く) 次に筆を上に上げてこすり上げていく。このとき右に倒れていた筆菅を起こし垂直にする。(立つ) 最後に筆を左に倒し押す。このときは中鋒で。(穂先が線の中央を通るように)(突く)
2013,2.4
「側」「直」の繰り返し;「側」筆菅の頭を手前に倒す、「直」筆菅は紙に対し垂直
「側」パー(掌は上向き)、「直」グー(掌は下向き) 横画もグーパーの動き
これまで縦画はグーパーの話があったが、横画も同じ?‼
毛氈(もうせん;下敷き)の上を長鋒羊毛で書いてみると毛が捻じれる様子が目で確かめることができます。やってみてください。5本の指を筆の毛に見立てて机の上で書いてみるのもいいかも知れません。
②縦画
2012.12.3
縦画も横画と同じように、左斜め下から入筆し「引く」「立つ」「突く」となります。
2012.10.22
「引く」はひじ、腕で引く。「立つ」で筆を引き上げながら掌をグーにする。このとき筆菅のてっぺんは、縦画の場合右から(側)からわずかに左に移動する。
2012.10.22
入筆から引くまでの動作 筆菅は右に倒さないと毛は捻じれない。入筆した筆を突き返し毛に弾力をつけて下へ腕、肘で引く。筆を引き上げ垂直にしながら引き(立つ)、少し筆菅を左に倒して掌をグーして下へ突く。
橋爪大淀の横画
橋爪大淀の縦画
横画を書い半紙を裏返して横向きに置くと、縦画と共通していることに気づく。
手島右卿先生のくねくねした線は、強い線(紙に筆が強く、ぴったりくっつく)を書くため筆の弾力や捻じれを生むための合理的な筆の動きの結果と言えそうです。
皆さんはどう思われましたか。
次回は、古法で左払いや右払いをどう書くかメモ書きから拾い出し、「手の運動機能を上手く使い、常に筆が紙をつかんで働く合理的な用筆法」を考えていきます。