心に痛手をうけた時のことだった
私は野を歩きまわった
すると、私は1羽のチョウが
青い風に吹かれているのを見た
チョウはきわだって白く、また濃い赤のまだらだった
おお、チョウよ! 世界がまだ
朝のように澄んでいた子どものころ
まだ天があんなに近く感ぜられたころ
お前が美しい羽を
ひろげるのを見たのが最後だった
色どりあやに柔らかくひらひらと飛ぶお前が
私には天国から来たように思われて
お前の深い、神様さながらの輝きの前に
私は自分がどんなにかけ離れているように
恥ずかしく感じて、内気な目付きで立っていねばならぬことよ!
白と赤のチョウは
野の方へ吹かれて行った
夢みごこちで先へ歩いて行くと
天国からでも来たような
静かな輝きがあとに残った