チョウチョ(ヘルマン・ヘッセ) | ふしぎのメダイ

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 心に痛手をうけた時のことだった

 私は野を歩きまわった

 すると、私は1羽のチョウが

 青い風に吹かれているのを見た

 チョウはきわだって白く、また濃い赤のまだらだった



 おお、チョウよ! 世界がまだ

 朝のように澄んでいた子どものころ

 まだ天があんなに近く感ぜられたころ

 お前が美しい羽を

 ひろげるのを見たのが最後だった



 色どりあやに柔らかくひらひらと飛ぶお前が

 私には天国から来たように思われて

 お前の深い、神様さながらの輝きの前に

 私は自分がどんなにかけ離れているように

 恥ずかしく感じて、内気な目付きで立っていねばならぬことよ!



 白と赤のチョウは

 野の方へ吹かれて行った

 夢みごこちで先へ歩いて行くと

 天国からでも来たような

 静かな輝きがあとに残った