仲良し3人組のもうひとりのヴィ力は、用があってミルヤーナたちとー緒に散歩に出られなかったのだが、5時半頃に家を出てふたりの後を追ったイヴァンカ兄弟も一緒についてきた。兄のほうは20歳、弟のほうは16歳である。
みんな小さい頃からの遊び友達なのだ。
このヴィ力たちの前にも、聖母マリアは姿を現わした。
「何か見える、あれはいったいなんだ!? ほら、真っ白い、こっちを振り返っている」
と、最初にイヴァンカ兄弟の兄のほうが叫んだ。殆んど同時に弟のほうもそれを見て、顔色を変えて震えだした。と思ったら、ものも言わずに逃げ出した。
ヴィ力はハッキリ白衣の女性の姿を見た。長い灰色のべールから、黒い髪がはみ出していた。そしてこちらに手を差しのべるようにして、近くに来るようにと招いていた。しかし、ヴィ力は身動きできなかった。
イヴァン力のほうもそうだった。
やがて、まるでかき消すように聖母マリアの輝く姿が消えたとき、ヴィ力とイヴァンカの兄はいち早く丘を駆け降りていった。だが、だれひとりまともに信じようとはしなかった。みんなが少女たちをからかっただけだった。
そして翌日には、人々はそんなことはすっかり忘れてしまったかのように、いつも通り夜明けから夜遅くまで畑などで働いた。
しかし仲良し3人組の少女たちは、まだ興奮からさめてはいなかった。夕方近くになって、また丘に出かけていった。
ほかにも3人がー緒だった。ひとりは、きのう逃げ帰ったイヴァン力兄弟の弟のほうだ。もし、今日も現われたら、絶対に逃げたりはしないからと言っていた。
もうひとりは、ミルヤーナの従兄で10歳になるヤコブ。 わんぱくで、好奇心いっぱいの少年だった。そして、残るひとりが、ミル力の姉のマリヤだった。16歳だが、もの静かで分別があり、子供達は勿論、大人たちにも頼りにされていた。
「あんたたちが聖母マリアを本当に見たかどうか、私にはなんとも言えないわ。私の前に現われて欲しいとも別に思わない。ただ、あんたたちの前にもし現われたとき、その現場に居合せたいだけよ」と、マリアは言った。
実はこの6人の少年少女たちの後を追うように、かなりの人数の大人たちや子供たちが丘をめざしていた。 大人たちは、昨夜は少女たちをからかったものの、彼女らが今日もまた丘に行くと知り内心心配になってきたのだ。そうでない大人もいたが。一日の仕事を終えたあとは何もすることがなかったから、半分野次馬根性でついてきていた。
6時過ぎだった。ヴィ力たち6人の前に、聖母マリアが姿を現わした。幻のようなその姿は、6人に向かって、頂上のほうにに上がってくるように手招きしていた。 6人は顔を見合わせた。
今日はだれも、逃げだそうとはしなかった。
「行こう!」と、12の眼がそれぞれに語っていた。
足を踏み出した6人は、まるで、空中を引かれていくみたいに、たちまち頂上に着いた。
その様子を下から見ていたミルヤーナの叔父は、あとで次のように証言している。
「6人が立ちどまっていた場所から頂上までは、どうみても12分はかかる。それを2分ほどで上がってしまったんだ。 本当にぞっとしたよ」
数百人の群衆の前で信じがたい奇跡が起こった!
6人の少年少女たちのうち、いちばん分別のあると見られるマリヤは、そのときの自分の体験をこう証言している。
(続く)