HAARPについてさらに詳しく知りたいと思った。
そこでアメリカ、ネバダ州ラスベガスに飛んだのが1996年3月10日のことだ。当地に滞在中のニック・ペギーチ博士に突撃取材を敢行したのである。
アラスカ在住の博士は、許せるかぎりの時間をHAARPの探求に費やしていた。若くしてすでにHAARP研究の第一人者としての名声を得ていた彼は、長身で髪を後ろに束ね眼鏡をかけた、いかにも理知的な人物だった。
さっそく博士に質問をぶつけた。
「HAARPとは何ですか?」
待ってました、とばかりに博士は勢いよく話しはじめた。
「HAARPは軍事兵器だ。飛行機や人工衛星を撃墜できる。その通信だって止めてしまう技術がある。世界中の気象もコントロールできる。
ハリケーンや地震だって起こせるんだ。
これは間違いなく武器だ。もしテロリストがHAARP技術を得たら重大事だ。知らずのうちに戦争を引き起こすことができる。
例えばHAARPから派生する
グローバル・シールディング
という技術で地球全体に電磁バリアを張り巡らせれば、電磁波パルスエネルギーが、ミサイルをはじめ飛来する物体の電子回路に直接作用して、物体の方向攪乱はおろか爆発させることも可能だ。あるいは地下に届いた電波の様子を解析すれば、他国の地下核実験施設の正確な位置やトンネル網なども特定できるようになる」
と博士は一気に説いた。
また、地上や空中は勿論、海中や土中など広範囲にわたる通信システムの完全な破壊は勿論、やりようによっては太陽光線を吸収させたり、大気中のオゾン・窒素量を変化させたりして、地球レベルの気候パターンの操作まで可能にする、というのである。
こうして並べてみるだけでも、間違いなくこれは、天空を舞台にした恐怖のテクノロジーの兵器に違いなかった。
1977年に国際条約が交わされて、地震や天候操作を用いた戦争が禁止されている。
だが、国内に於いてはその限りではない、という。
であれば、堂々と実験という名の元に、戦略兵器の開発が行なえるというわけだ。
ГHAARPは究極の兵器である。完成した途端、恐るべき軍事防衛システムとして機能する。
いいかい?
これは電離層を操作することで敵軍のシステムを妨害するほか、国全体を機能不全で陥れることができる。ただしHAARPはただでさえ不安定な状態にある電離層に、強力な電磁波を放射し、加熱する。
これがどういうことか分かるかい?
制御不能になれば、電磁波の雨が頭上から稲妻の如く降り注がれることになる」
Г強いというと、どれくらいの?」
「調べたところでは、最大出力15億ワットという途方もない高周波エネルギーだ」
15億ワットは、大規模な発電所を10基並べて総発電したときの出力に相当するという。
そこから発せられるエネルギーは膨大だ。
大気圏上層部は文字通り、煮えたぎるような状態になるというのだ。
(続く)