火刑に散った少女
貞享3年(1686年)、Г好色五人女」が大阪の版元から出版された。
作者は井原西鶴。
当時実際にあった5件の恋愛・姦通事件を題材にした浮世草子で、発刊されるや、たちまちベストセラーとなる。
この3年前、江戸の鈴ヶ森刑場でひとりの少女が火刑に処せられている。
「好色五人女」の巻四「恋草からげし八百屋物語」のモデルとなった八百屋お七だ。
お七は本郷の八百屋の娘で当時16歳。
天和2年(1682年)、一家は歳末の大火で焼け出され避難する。お七はそこでひとりの寺小姓と出会い恋に落ちた。翌年、一家は自宅を再建し、寺を離れたが、お七は、また火事が起きれば寺小姓に逢えるとの思いから自宅に放火する。江戸時代も放火は重罪で、罪に問われたお七は刑場の露と消えるのである。
「好色五人女」では西鶴の脚色が施されており、当時を伝える他の文献の記述もまちまちで、史実には不明な点か多い。
お七が恋い焦がれた男の名も
「生田庄之助」「吉三郎」Г左兵衛」などかある。
その中で、東京・目黒の大圓寺(だいえんじ・この圓という字はお金の円の旧字体)に伝えられる恋人の名は「吉三」。
大圓寺は江戸初期開山の古刹(こさつ)で、お七が刑死した後に始まる「吉三物語」が静かに語り継がれてきた寺でもある。
(続く)
☆お七ゆかりのお寺は他にもありますので、御自分で検索して捜してみて下さい。
ふしぎのメダイより。
大圓寺
東京都目黒区下目黒1-8-5
交通
JR山手線・東急目黒線目黒駅下車
行人坂を下り、徒歩5分
Tel 03-3491-2793