それでも夜は明ける | Every Little Step (新)

Every Little Step (新)

りおうさんの更なる進化を求めて。

それでも夜は明ける(原題: 12 YEARS A SLAVE)
2013年アメリカ/イギリス 日本公開2014年3月
監督スティーブ・マックィーン
キウェテル・イジョフォー/マイケル・ファスベンダー/ルピタ・ニョンゴ
ベネディクト・カンバーバッチ/ブラッド・ピット
画像
(C)2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World.All Rights Reserved.

【雑感その1】
先日のアカデミー賞にて作品賞を受賞したこの作品。
まっすぐな一本筋の通った、
1㍉の笑いもユーモアも許さない、非常に厳しい作品となっています。
そして厳しいシーンも多かった。
黒人差別のキビシイ現実がここにありました。
これは実話なのです。
この作品の主人公ソロモン・ノーサップが黒人奴隷として過ごした
12年をつづった同名タイトルの自伝が原作となっています。
本音を言うとものすごく考えさせられるいい映画であると思いますが
おもしろいかと言われると難しい。
もう一度見るかと言われても難しいと答えるしかない。
あまりにも気迫の入ったまっすぐな直球で来られると
尻ごみしちゃう。
でもこういう映画を作って世界中の人々が【知る】というのは
とても大事な事だと思う。
こういう形でないとよほど関心があれば別だけど
興味を持って知ることは出来ないと思う。

ただわしには重かった。
何が重いって見終わってもずーっと心がとらわれたままで
わしに救いはなかった。


【適当なあらすじ】
自由黒人として音楽で生計を立てていたソロモン・ノーサップ(C・イジョフォー)は
ある時白人に騙されお酒を飲まされて酔いつぶれ目覚めた時には
奴隷として売られた後だった。
名前も国籍も家族も自由もすべてを失った彼は
南部の綿花農園で奴隷として働くこととなる。
ここから彼の12年にわたる厳しくつらい奴隷生活が待ち受けていた。


【キャスト】
主人公ソロモン・ノーサップを演じるのはキウェテル・イジョフォー。
わしは初めて知った方ですが結構色んな映画に出演されています。
頭の良さそうな、育ちの良さそうなソロモン役にあの
大きな意思のある瞳がとってもマッチしていたと思います。

プランテーション支配人エドウィン・エップス役のマイケル・ファスベンダー。
徹底した悪役の立場。
奴隷を虐待しまくるんですよね~。
物語の役柄としてはこういう人いてもいいと思うんだけど
実際にこんな人が、おそらく多数いたんじゃないかと思うと
本当に震える。
もしかしたらこれでもまだ彼は優しい方かもしれないし…。
ただ『役』としてはなかなかやりがいのある役だと思います。

ソロモンを最初に買う綿花農園のオーナー・フォード役に
ベネディクト・カンバーバッチ。
まぁまぁいい役?なんですけどね。
いい役と言えば語弊があるかもしれないけれど。
実は気弱な人の役。

奴隷のパッツィー役にルピタ・ニョンゴ。
ひたすら哀れ。そして奴隷としてきっと優秀。そうであるがゆえに残酷さが際立つ。
しかも彼女自身細身でガリガリなので痛々しい…。
顔立ちは実際は非常に愛らしいかわいらしい女性。
この役でオスカーに輝きましたが、受賞もさることながら
アカデミー賞での彼女のファッションが話題になっています。
ちなみに彼女はめちゃめちゃ頭が良いです。

カナダ人大工サミュエル・バス役にブラッド・ピット。
ブラピが出てくるのをすっかり忘れていました。
出てきて、あぁそうだ!と思いだしたくらい。
ブラピはこの映画の製作にもかかわっています。
終盤に登場するチョイ役です。

あとなんとも憎たらしい役どころでわしの好きな
ポール・ダノが出演しています。


【雑感その2】
監督のこだわりだと思うシーンがいくつかあり
その中でもひときわ目立っていたのが
ソロモンが木に吊られてる場面。
長回しで彼らの当然の日常をあらわしています。
ちょっとくどいかなとわしは思いましたが
ああまで見せつけられると反論もできない。
過酷なシーン。
過酷なシーンと言えば思い浮かぶのかもうひとつ。
パッツィーへの拷問シーン。
しかも終盤の。あそこは思わず目を閉じてしまったほど。
あまりにもひどい。
ソロモンがあることを決意する重要なシーンだけにここも
長めでした。
最後、もちろんソロモンは自由になるんだけれども
後に残された奴隷が哀れで仕方なかった。
彼らの事をソロモンはどう思ったのだろう。
まぁもともと身分が違うのだからしょうがないけど
わしはどうしてもいたたまれなかった。
殺して、と言ったパッツィーを殺さなかったソロモンは
この先きっと死んだ方がマシな生活を続けていく彼女を
どう思うの?
それを考えると深い闇に落ちて行ってどうしようもない。

映画の前半はとても音楽が良かった。
後半になるといつしか気にもとめなくなっていたけれど。
ハンス・ジマ―が音楽を担当していたという!
さすがー。いいスコアです!(前半だけ)

映画のラストに
ソロモン・ノーサップの最期(死亡年月日・場所・死因)は不明 
という文章が出ます。
それがなんとも、また切なくなるわけです。

すべての方におすすめ…とは言い難いけれど
一見の価値はあるんじゃないかなと思います。
けれど覚悟のほどを。


2014-⑨