やはり専門用語は難しい?
●前回のブログでは、友利新著の『現役医師がやさしく教える
病院のことば』に基づいて書いたのですが、それなりの反響が
ありましたので、今回も引き続きご紹介してみたいと思います。
●この本の前書きに、「先生が研修時代に患者に不安を与え
てはいけないと思い、経験不足を隠すために、できるだけ難し
そうな医療用語を並べて話したところ、ある日、患者さんから
先生の話は難しくて、治療の進度や病気の状況が、さっぱり
わからにという不安が訴えられて」と書いてありました。
(コミュニケーションの難しさ)
●友利先生は、患者や家族がわかりにくいと感じられる用語
について、実際に現場で使われる場面を想定して、解説する
こと心がけたということですが、確かに患者にとっては非常に
わかりやすくなっています。
●前回その一端に触れましたが、第1章の「耳慣れない漢字
の熟語」の後半の約半分を、以下に紹介したいと思います。
第1章 耳慣れない漢字の熟語(45個の内、後半部分の紹介)
No |
専門用語 |
医師の説明 |
やさしい言い替え |
28 |
尊厳死 |
自発呼吸が止まります。ご本人は尊厳死を望まれていましたが、どうなさいますか。 |
ご自分で呼吸ができなくなります。人工呼吸を使って延命はできますが、ご本人は延命治療を希望していませんせした。ご家屋の皆様のお考えをお聞かせください。 |
29 |
対処療法 |
あくまでも対処療法として咳止めを処方しておきます。 |
咳を止めるために咳止め薬を処方しておきます。ただし、これは咳が出る原因を根本的に取り除くための治療ではありません。 |
30 |
頓服 (とんぷく) |
いつもの薬とは別に、頓服薬を処方しておきますので、症状が出現したときに内服してください。 |
いつも決まった時間に飲んでいるお薬とは別に、特定の症状が現れたときにだけ飲むお薬を出すように指示しておきます。その症状が出たら飲むようにしてください。 |
31 |
治験 (ちけん) |
糖尿病の新薬の治験に参加していただけませんか? |
糖尿病の新しいお薬の効果や安全性を調べるテストに協力していただけないでしょうか。 |
32 |
内診 |
内診をおこないますので、隣の部屋で下着をとってお待ち下さい。 |
実際に、お腹の中を見せていただきたいので、隣の部屋でショーツを脱いで、診察の準備をしてください。 |
33 |
敗血症 (はいけつしょう) |
広範囲にわたる全身熱傷の合併症としては、敗血症が考えられます。 |
全身の広い範囲のやけどでは、体内の細菌が侵入して中毒症状を起こすことがあります。 |
34 |
播種 (はしゅ) |
腹膜全体に播種が広がっているため、手術をしてもすべての病変を除去するのは難しいでしょう。 |
お腹の臓器を覆っている膜全体に、小さな病変が広がっています。手術をしても悪い部分をすべて取り除くことはできないでしょう。 |
35 |
日和見感染 (ひよりみかんせん) |
免疫力が低下すると、日和見感染を起こす危険性があります。 |
体を細菌などから守る働きが低下すると、通常では感染しないような微生物に感染して、感染症を起こしてしまうことがあります。 |
36 |
不定愁訴 (ふていしゅうそ) |
診察時によって主訴が変わるようですので、不定愁訴の可能性が高いです。 |
診察にいらっしゃるたびに、一番つらいという症状が変わっています。検査の結果も特に問題はあありませんので、ひとつの病気と特定できませんが、身体の不調であることは確かでしょう。 |
37 |
副作用 |
嘔吐などの副作用が強いので、処方薬を変えましょう。 |
気分が悪いのは、薬の効果が悪い方向に作用しているせいかもしれません。薬の種類を変えて様子をみましょう。 |
38 |
慢性疾患 |
アトピー性皮膚炎は慢性疾患です。 |
アトピー性皮膚炎はすぐに治る病気ではありません。あせらず徐々に治していきましょう。 |
39 |
未病 (みびょう) |
検査結果はオールクリアですが、日常生活が困難なほどの倦怠感が続くのは、未病といいます。 |
検査の結果は問題ありませんが、日常生活が困難な程、からだがだるい状態が続くのは正常とはいえません。病気の一步手前の状態です。十分な静養と経過観察が必要でしょう。 |
40 |
抑鬱状態 |
抑鬱状態ですので、十分休息が必要です。 |
憂うつな気分が続き、何かをする元気がないようですね。しばらくは、ゆっくりと休んだ方がいいです。 |
41 |
癒着 |
手術後に腸管が癒着を起こしている可能性があります。 |
手術後に腸の中でくっついてしまった部分があるようです。 |
42 |
予後 |
治療の予後は良好です。 |
治療の結果、順調に回復しています。 |
43 |
臨床試験 |
新しい治療方法について、臨床試験がおこなわれました。 |
新しい治療方法について、安全性や有効性について調べる試験がおこなわれました。 |
●いかがでしょうか。上の表にあった語句は全部で16個あり
ましたが、どのくらいおわかりでしょうか。
尊厳死、対処療法、頓服(とんぷく)、治験 (ちけん)、内診、敗血はいけつしょう)、播種 (はしゅ)、日和見感染(ひよりみかんせん)、 不定愁訴(ふていしゅうそ)、副作用、慢性疾患、未病(みびょう)、抑鬱状態、癒着、予後、 臨床試験 |
(どう説明すれば理解可能なのだろう?)
私の場合、今回わからなかったのは、頓服、治験、播種、
日和見感染、不定愁訴、未病の6個ですが、友利先生の
著書は一患者にとって実にありがたいので、敢えて2回
に分けて紹介しました。みなさんも、ぜひ図書館に行って、
この本を読んで医学の専門用語を理解されるように、
お薦めします。
(患者の質問攻めに合う医師)
kuubotan記す。
(2020.03.03)