
■作品説明※映画.comよりスティーブン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演、ジョエル&イーサン・コーエン脚本と、いずれもアカデミー賞受賞歴のあるハリウッド最高峰の才能が結集し、1950~60年代の米ソ冷戦下で起こった実話を描いたサスペンスドラマ。保険の分野で着実にキャリアを積み重ねてきた弁護士ジェームズ・ドノバンは、ソ連のスパイとしてFBIに逮捕されたルドルフ・アベルの弁護を依頼される。敵国の人間を弁護することに周囲から非難を浴びせられても、弁護士としての職務を果たそうとするドノバンと、祖国への忠義を貫くアベル。2人の間には、次第に互いに対する理解や尊敬の念が芽生えていく。死刑が確実と思われたアベルは、ドノバンの弁護で懲役30年となり、裁判は終わるが、それから5年後、ソ連を偵察飛行中だったアメリカ人パイロットのフランシス・ゲイリー・パワーズが、ソ連に捕らえられる事態が発生。両国はアベルとパワーズの交換を画策し、ドノバンはその交渉役という大役を任じられる。第88回アカデミー賞では作品賞ほか6部門でノミネートを受け、ソ連スパイのアベルを演じたマーク・ライランスが助演男優賞を受賞した。
■「ブリッジ・オブ・スパイ」の感想
個人的には久々のスピルバーグ監督作品鑑賞になります。トム・ハンクス主演、コーエン兄弟が脚本に携わっているし、賞レースでも話題だった本作。鑑賞前から良い作品ってのは間違いないだろうな、とは思いつつも、冷戦時の実話ベースのストーリーということで、なんとなーく「暗めで地味なんじゃないかなぁ?」という先入観を持っていました。
ただ、蓋を開けてみたら、「めっちゃ地味」なのは間違いないけど、逆に「なんでこんな地味なのに面白いんだ!」ってくらい、最初から最後まで飽きずに鑑賞することができました。ベタな表現ですが、良くできたっていうのがピッタリな作品です。
上映時間141分もあるので、中弛みする時間帯もあるかなぁと思ったけど、そんなことはまっくなかったです。派手な見せ場は全体としてはほぼ無いのですが、テンポも良く、ワンシーン、ワンシーンの演出が地味なのに良いので、何気ないシーンでも、いちいち面白いんですよね。
あと、前半と後半で物語が大きく動く2部構成のような展開になっている点も、興味の持続の要因かなと思いました。若干、トーンも変わりますしね。
そんな感じで、この作品のパッと見のルック以上に、スッと観れる王道のエンターティメント作品だと、僕は感じました。扱うテーマは何であれ、さすがスピルバーグ監督っって感じですね。
ただ、観やすいとはいっても、本作で描かれてるテーマはとても深いですし、冷戦時代の話ではありますが、まさに今の時代で必要とされてることも訴えていると思いました。
本作は、主人公のジェームズ・ドノヴァンという普通の人が、国の命運を左右するような重要な案件を解決に導くという、隠れたヒーローにスポットを当てた話です。ただ、それ以上に、国家というものはどう人を捉えているのか、その国家の中での個人、個人って一体何なのか?というようなことを、物凄く考えてしまう内容です。
このジェームズ・ドノヴァンという人は、アメリカ国内で捕まったソ連のスパイを弁護することになります。ただ、そのスパイが敵ながらアッパレな信念の持ち主で、アメリカ側の甘い誘惑に乗ることなく、母国を守るために一貫した姿勢を貫き通すわけです。
ジェームズ・ドノヴァンも、いかにスパイとはいえ、アメリカという国の信念に基づいて、法律や憲法、ルールを守った上で彼を"普通に弁護"するんですよね。
ただ、敵国のスパイを弁護するなんて正気の沙汰じゃない、バカかと…。どうせ形だけの裁判で有罪なんだから、適当でいいと…。"普通に弁護"する彼が非国民のような扱いを受けてしまうわけです。
それでも、ジェームズ・ドノヴァンは相手が誰であろうとアメリカで裁くのなら、そのルールや規則に乗っ取った上でじゃないとダメだと。でないと、アメリカという国が成り立った、そもそもの理念にも反するし、移民の多いこの国で、皆がお互いアメリカ人であるとされているのは、国が決めた規則やルールがあるからだと。
大衆を敵にして非国民的な行動を取っているように見える彼の方が、実は、しっかりとアメリカ国民として向き合ってるんですよね。
彼の主張はめちゃくちゃ正しいし、そうあるべきだと思います。相手次第で何でもありってことになると、何が何やら分からなくなりますしね。相手がやったから、じゃあ、こっちはルールを無視していい、なんてことになったら、もはや、どこに信念や正義があるのかってことになります。
でも、大衆がそういう動きになるのも分かるし、じゃあ、自分だったらどうなんだろうとは思います。
他の記事で読んだのですが、スピルバーグ作品で繰り返し出てくるテーマに、「全員が同じ意見に振れた時は再考せよ」というのがあるみたいです。本作の内容もまさしくそれ。
最終的に主人公とソ連のスパイがどうなっていくのかっていうのは、作品を観てもらいたいのですが、一番は大衆は常に間違うということ。そして、それは現代でもよく起こるってことです。
それこそ、今は、ネットの普及でいろんな情報が一気に広がりますし、その中には、直接の見た、聞いたという「一次情報」ではなくて、誰かか聞いた、ネットで見たっていう「二次、三次情報」のような曖昧なものが、さも真実のように発信されてたりします。
怖いのって、何にも考えずにそういうものに触れて、皆が言ってるから正しいだとか、それが自分の考えみたいになってしまうことだなと思いました。
冷静に考えればおかしいことだって分かるようなことでも、人々の感情や世論の流れで、間違った方向に行ってしまったりする事案もありますよね。本作のような国家レベルのことでなくても、身近な問題など含めて、いろいろ思い当たる節もあるかなと思います。
本当はもっと良い方向があるのに、それが隠れて見えなくってしまう。そして、時には取返しのつかないことになってしまうってわけです。
だからこそ、本作の主人公のジェームズ・ドノヴァンとソ連のスパイから学べることって多いなと思います。
何を基準に自分の選択をするか。
実際は答えなんて無いので、最終的に何が正しいかは分かりません。ただ、一時の感情や世論の動きに、何も考えずに自分も同調して判断していたら。絶対に何か見誤るなと。
本作で彼は感情に流されず、あくまで原理・原則に則っとって最善の選択をしているだけなんですよね。周りは関係ないわけです。
これって、いろんな価値観があったり、物事の基準がどんどん変わっていく今の社会を生きていくのに、必要なスキルだなと思いました。臨機応変な対応っていうのは大切ですが、それってあくまでしっかりとした基盤の上で初めて成り立つものなんだなと観ていて思いました。
あとは、人間って感情の生き物ではあるけど、それだけで判断すると逆に"人間的ではなく"扱ってしまうこともあります。逆に、規則とかルールっていう、一見、機械的な判断の方が、"人間らしく"扱うケースもあるわけです。
個人的には本作の肝って、"この世界の見方"のヒントなのではないかなと思いました。そんな所を気にして鑑賞するのもオススメでございます。
はい。
あとは、俳優人も素晴しかったです。トム・ハンクスは抜群の安定感ですが、今回はなんと言ってもソ連のスパイを演じたマーク・ライランス。物凄い存在感でした。
物事を達観しているキャラだからというのもありますが、落ち着いてて口数も少ないのに、鮮烈な印象です。
何もかも受け入れている雰囲気で一瞬の揺らぎも無く、めちゃくちゃカッコイイです。それにプラスして、チャーミングな要素もあるしで完璧ですね。
本作でアカデミー賞・助演男優賞を取ったのも納得です。2016年は同じスピルバーグ作品「BFG:ビック・フレンドリー・ジャイアント」で主演を務めるようで、一気に大注目ですね。
他にも、サラッと描いてるけど何気にCG凄かったり、セットや衣装のクオリティも普通に高いですし、全体的に非の打ち所がないとは正にこのことです。「スピルバーグ、恐るべし!」と、改めた唸った作品です。オススメで~す。
■2016年6月第2週目★映画レビュー候補作品!
完全に気力がなくってしまって映画は観てるけど、記事書く元気が出ませんでした。結果、1ヶ月以上空いてしまいました。ということで、なんと、まだ6月第2週目の作品です(笑)。
何も考えずひたすら追いつけるように更新していきます(__)
ひとまず、次回の候補作品は以下の通りです。
1.オデッセイ
2.ストレイト・アウタ・コンプトン
3.ザ・ウォーク
4.orange
5.アース・トゥ・エコー
6.ディーン 君がいた瞬間
以上の6作品です。
はい、では、サイコロを振って決まったのはどの作品でしょうか…。次回のレビュー作品はこちらです。

「オデッセイ」
マット・デイモン主演の最新火星映画!こちらもアカデミー賞にノミネートされていた話題作ですね。実は劇場で鑑賞済み♪再度、観直して感想UPします。
では、次回も宜しくお願いします。







