$~僕がピアノを弾くのを止めてから~



あの少年の夏の日 

飾り気なく見つめあう 

私の熱情 

向日葵畑で 

短髪の 

笑顔から 

こぼれ落ちる 花びら







$~僕がピアノを弾くのを止めてから~

根底から覆るほどのいつくしみに

時々 人が辿り着こうとするときに、

僕は 感情すら寂寞に 受けとめるでしょう。

おおよそ 人から教わってきたことより

多くを人は背負いはしないのですから。

ひどく突出し 露になって しなやかな興奮を

人は忘れえはしません。

それすら傷む妖妖たる感情。

輝きを放つ。



  清廉のきみと明日みる雛祭





$~僕がピアノを弾くのを止めてから~


おれはいつでも

小さな眠りにはならない

眠るときは地下鉄ごと眠るか

玉蜀黍の畑ごしに

全市爆砕をゆめみるかだ



と思っていた

十九才の夏にはフットボールの球を

千メートル蹴上げようとして

その日から足が跛である

いまでは郊外の安アパートで

おやすみを言いにくる猫もいない



だがしかし、友人なんか作らない

やさしくなんかなるよりは

気が狂ってしまってよかったと

いまでもおれは思っているのだ