「身体は柔らかいほうがいい?」 | 佐藤晃一のブログ

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アスレチックトレーナー

身体は柔らかいほうがいい。当たり前のような事ですが、必ずしもいい事ではありません。

膝をまっすぐにして、前屈してつま先を触ってみてください。小学校の身体測定でおなじみの柔軟性のテストです。座って膝を伸ばした状態で検査した方もいるかもしれません。いずれにせよ、つま先に指がつけば良いという事でしょうか?また、つかなかった場合、背中を一所懸命押してあげれば良いのでしょうか?

膝をまっすぐにして前屈する際、身体は大きくわけて、股関節、腰椎、胸椎の3つの部位で曲がります。さて、それぞれの部位がどの程度動いているでしょうか?理想は、背中(胸椎・腰椎)がきれいに弧を描き股関節が約70-80度屈曲している状態です。また、前屈してつま先に指を近づける過程も重要です。それぞれの部位が同時に屈曲していくのが理想です。

つま先に指がついても、屈曲のバランスが崩れていたら問題です。よくあるパターンは、股関節の屈曲の制限が、腰椎の過度の屈曲でする補われているパターンです。腰椎が股関節に対して相対的に柔軟である(相対的柔軟性)といえます。
この場合、脊柱(特に腰椎)に余分な動きがあるので、その動きが制御されていないと、それが原因で障害につながる可能性があります。対処としては、股関節の屈曲を向上して、脊柱にかかる負担を軽減するのが良いと思われます。その際、脊柱(特に腰椎)が屈曲しないように気をつける事が重要です。一番簡単な方法は、両足で立って股関節だけを使って前傾します。横から見ると、股関節を頂点にした「くの字」になります。普通に立った状態での脊柱のアライメントを維持して、脊柱が丸まらないようにしましょう。体重を踵に移動して、意識的に股関節の屈曲筋を使って前傾をするとさらに効果があります。

上記をふまえて、つま先に指がつかない場合どのように対処したら良いでしょうか?まず、どの部位からの動きが不足しているか確認しましょう。これも股関節の制限が多いと思います。従って、座った状態で背中をおすストレッチは、股関節の屈曲だけでなく、脊柱の屈曲も促しているので、既に十分柔らかい脊柱の屈曲もストレッチされている事になります。複数の関節を一緒にストレッチする際、柔らかい部分が伸びる傾向をShirley Sahrmannは、「Path of Least Resistance」と説明しています。
動きは抵抗の少ない部位からおこりやすいという事です。股関節の屈曲に注目して、股関節・腰椎・胸椎がバランスよく曲がるようにしなければいけません。

それぞれの部位の可動域が改善したら、前屈の動きのタイミングも治す必要があります。つまり可動域があっても、それを上手に使う筋力と運動制御がなくてはいけないという事です。具体的に説明してみましょう、前屈の際、腰椎の屈曲が先行して、最終的に腰椎が過剰に屈曲してしまう人の前屈を向上するとしましょう。まず、股関節が屈曲するための関節の可動性・域(Diane LeeのForm Closure)、さらに、前屈する際、過剰に腰椎が屈曲しないように維持するための筋力(同じくForce Closure)とそれを制御する神経機能(Motor Control)が必要になります。

一見単純な「柔軟性」ですが、相対的にどの部分から動きがきているのかという「量」、どのように動いているのかという「質」、両方がそろってより良い柔軟性がある、といえるとわけです。