(劇評・12/19更新)「変えられない友情」大場さやか | かなざわリージョナルシアター「劇評」ブログ

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この文章は、2018年12月8日(土)19:00開演の空転幾何区『Twilight』についての劇評です。

 舞台中央には、機関車の先頭部分を模した黒い円が見える。それはタイムマシンだ。中には相沢(船橋徹也)が乗っている。タイムマシンの左右に2カ所ずつ、腰ほどの高さの台がある。それらはタイムマシンの制御盤だ。制御盤についた4人の研究員(チーフ・佐藤史織)、(斉藤・川端大晴)、(アキ・大橋茉歩)、(ナッツ・間宮一輝)が点検を始める。4人はチェック項目を次々発言していく。マシンの始動に向けてカウントダウンが始まる。機体からは煙が上る。そしてタイムマシンは時間旅行に旅立つ。はずが、失敗してしまったらしい。それでも、彼らはまたチャレンジする。時間を移動して、一人の男を取り戻すため。

 そこではかつて、結城(能沢秀矢)をパイロットとして、タイムマシンの実験が行われていた。過去に向かい飛び立とうと始動するマシン。しかしトラブルが起こり、システムを停止しなければならなくなってしまう。止まったタイムマシンを見てみると、中には誰もいなかった。結城は過去に行けたのか、それとも消滅してしまったのか。実験を中止させるため、相沢は時間の旅に出ることを決意する。

 相沢は、過去に時間移動することに成功する。過去で出会ったアキに、タイムマシンの点検を頼み、相沢は元の時間へと戻る。だが、結城は失われたままだった。相沢は何度もタイムトラベルを繰り返すが、未来は予想外の方向に変化し、結城は戻らない。そして飛ぶたびに、変わらないはずの過去が変わっているのだ。時には宇宙人からの侵略に遭っているところに、時には海底に沈んだところに、まるで異世界を旅するかのように、彼は様々に変化した過去を移動する。
 何度目かの移動で、ようやく相沢は結城に出会う。結城は結城の時間軸で、時間移動によって失われた相沢を探していた。二人は追いかけあうように、それぞれのいない過去へと旅をしていた。その影響で過去が変わっていたのだ。

 この物語で大きく描かれていたのは相沢と結城、二人の友情だ。過去を変えることは、未来を変えること。それは誰かを救うことになるかもしれないが、誰かを苦しめることにもなるかもしれない。それでもただ一人のために、自分の身体をかけて時間の旅へと飛び出していく相沢と結城。何度も何度も失敗を繰り返し、それでも諦めることなく彼らは、それぞれの時間軸において、再び挑戦する。過去を変えることで自分の身に何が起こるかはわからない。しかし彼らにとっては、お互いが自分よりも大切な一人なのだ。相手を思う気持ちは、何度過去が変えられても変えられない。そして旅する彼らを未来で待つ研究員達の心も、変わらない。
 変えることができるのは、自分が存在している今だけだ。何があっても大切にしたいものをなくさないために、今いる場所でできることに尽力する。過去、現在、未来、いついかなる時にも大事な心と行動を、彼らは表現していた。


(以下は更新前の文章です)


 舞台中央には、機関車の先頭部分を模した黒い円形が見える。それはタイムマシンだ。中には相沢(船橋徹也)が乗っている。タイムマシンの左右に2カ所ずつ、腰ほどの高さの台がある。それらはタイムマシンの制御盤だ。制御盤についた4人(チーフ・佐藤史織)、(斉藤・川端大晴)、(アキ・大橋茉歩)、(ナッツ・間宮一輝)が点検を始める。4人はチェック項目を次々発言していく。マシンの始動に向けてカウントダウンが始まる。機体からは煙が上る。そしてタイムマシンは時間旅行に旅立つ。はずが、失敗してしまったらしい。それでも、彼らはまたチャレンジする。時間を移動して、一人の男を取り戻すため。

 その研究所では、結城(能沢秀矢)をパイロットとして、タイムマシンの実験が行われていた。過去に向かい飛び立とうと始動するマシン。しかしトラブルが起こり、システムを停止しなければならなくなってしまう。止まったタイムマシンを見てみると、中には誰もいなかった。結城はどこに行ったのか。過去に行けたのか、それとも消滅してしまったのか。結城の無事を信じて、相沢は、結城を取り戻す時間の旅に出ることを決意する。

 相沢は、過去に時間移動することに成功する。過去で出会ったアキに、タイムマシンの点検を頼み、相沢は元の時間へと戻る。だが、結城は失われたままだった。相沢は何度もタイムトラベルを繰り返すが、結城は戻らない。そして飛ぶたびに、変わらないはずの過去が変わっているのだ。時には宇宙人からの侵略に遭っているところに、時には海底に沈んだところに、まるで異世界を旅するかのように、彼は様々に変化した過去を移動する。
 ようやく二人が出会えた時に、過去が改変されていた理由が判明する。結城は結城の時間軸で、時間移動によって失われた相沢を探していたのだ。二人は追いかけあうように、それぞれのいない過去へと旅をしていたことになる。

 過去を変えることは、未来を変えること。それは誰かを救うことになるかもしれないが、誰かを苦しめることにもなるかもしれない。それでも、研究者達は夢を見た。過去の世界が見たい。そして、未来の世界が見たいと。憧れであるタイムトラベルの世界を、空転幾何区は舞台上で作りだしてみせた。
 そしてこの物語で大きく描かれていたのは友情だ。ただ一人のために、自分の身体をかけて時間の旅へと飛び出していく相沢と結城。何度も何度も失敗を繰り返し、それでも諦めることなく次へと向かう二人。それは世界を変える行動であるが、彼らにとっては、お互いが世界よりも大切な一人なのだ。相手を思う気持ちは、何度過去が変えられても変えられない。そして旅する彼らを未来で待つ研究員達の心も、変わらない。
 再会した二人は、タイムマシンで未来へと向かっていく。ただ一つを思い続けられる強い心があれば、どんな未来でもきっと受け入れていけるだろう。