この文章は、2018年12月8日(土)19:00開演の空転幾何区『Twilight』についての劇評です。
5、4、3、2、1……。作品の中でカウントダウンを聞いて妙に胸がざわついたのは、慌ただしい年末だったから、だけではない。人はいつでも、未知の世界へ旅立ちたいという願望と不安を心の奥底に秘めているのではないだろうか。12月8、9日に金沢市民芸術村PIT2ドラマ工房で上演された空転幾何区『Twilight トワイライト』(作・演出:川端大晴、佐藤史織)は、お互いを探して時空を飛び交う二人のタイムトラベラーが会えそうで会えない状況を描いたSF風味のナンセンスなコントだったが、どうしようもなくすれ違ってしまう人間存在の寂しさをさりげなく感じさせ、笑いの中にどこか切ない後味を残した。
タイムマシンの研究者であり、テストドライバーでもある結城(能沢秀矢)は、ようやく完成した試作機に乗り込んで出発するが、行方不明になってしまった。同僚である相沢(船橋徹也)が後を追いかけるが、そこに結城はいなかった。現代へ戻ったり、未来へ行ったりとタイムリープを繰り返すが、二人はなかなか出会えない。結城が過去を変えたことで相沢の命が危うくなったり、未来では研究室自体が海底に沈んでいたりとトンデモない事態が発生。また、タイムマシン開発室のチーフ(佐藤史織)はもともと自己愛の激しい性格だったが、いつの間にか彼女を教祖とする新興宗教が立ち上がり、メンバーたちが信者になっていた。そんな変遷を乗り越えながら、白衣に身を包んだ同じ顔ぶれのスタッフたちが相も変わらず大真面目で研究に打ち込んでいる姿自体がバカバカしくて面白い。
舞台中央に置かれたタイムマシンは蒸気機関車型であり、ちょうど「D51」(デゴイチ)のような先端部分を観客は正面から見る格好となる。時間旅行への出発時には蒸気機関車の汽笛音が流れ、懐かしさをかき立てる。ただ、過去も未来も舞台上は同じ研究室なので時間の違いがわかりにくかった。今はいつの時代かということを表示する装置が取り付けられていたと観劇後に聞いたが、私はそれに気づかなかった。
エンディングで時空のねじれを解消して二人が未来で再会するためのカウントダウンが始まる。今は携帯電話が発達したおかげで、待ち合わせ場所を間違えるというトラブルは減ったはずだ。しかし、1950年代に一世を風靡した映画『君の名は』(脚本・菊田一夫)のように「会えそうで会えない」シチュエーションはもともと恋愛ドラマの定番。2016年公開で大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』(新海誠監督)も男女が時空を超えてすれ違う物語だった。今回の作品も、二人のタイムトラベラーが恋人同士という設定にしたら、もっと切ないラブロマンスになっていたかもとふと考えた次第である。
《以下は更新前の文章です。》
5、4、3、2、1……。年末のこの時期にカウントダウンを聞くと、胸がざわざわする。人はいつでも、未知の世界へ旅立ちたいという願望と不安を心の奥底に秘めているのではないだろうか。12月8、9日に金沢市民芸術村PIT2ドラマ工房で上演された空転幾何区『Twilight トワイライト』(作・演出:川端大晴、佐藤史織)は、時空を飛び交う二人のタイムトラベラーが会えそうで会えない状況を描いたSF風味のナンセンスなコントだったが、どうしようもなくすれ違ってしまう人間存在の寂しさをさりげなく感じさせ、笑いの中にどこか切ない後味を残した。
タイムマシンの研究者であり、テストドライバーでもある結城(能沢秀矢)は、ようやく完成した試作機に乗り込んで出発するが、誤って違う時代へ紛れ込んだらしい。同僚である相沢(船橋徹也)が後を追いかけるが、そこに結城はいなかった。仕方なく現代へ戻ったり、今度は未来へ行ったりとタイムトラベルを繰り返すが、二人はなかなか出会えない。結城が過去を変えたことで相沢の命が危うくなったり、未来では研究室自体が海底に沈んでいたりとトンデモない事態が発生。また、タイムマシン開発室のチーフ(佐藤史織)はもともと自己愛の激しい性格だったが、別の時代では彼女を教祖とする新興宗教が立ち上がっており、メンバーたちから崇められていた。そういう変遷を乗り越えながら、どの時代でも白衣に身を包んだ同じ顔ぶれのスタッフたちが相変わらず普通にタイムマシンの研究に励んでいること自体がバカバカしくて面白い。
舞台中央に置かれたタイムマシンは蒸気機関車型であり、ちょうど「D51」(デゴイチ)のような先端部分を観客は正面から見る格好となる。時間旅行への出発時には蒸気機関車の汽笛音が流れ、懐かしさをかき立てる。開発中のエピソードとして、研究員たちが焼きそばパンを電子レンジで温めようとするが、コンセントをタイムマシンに借用してしまったので電源がない。代わりに乾電池を使った「電池レンジ」で温められないかと電気の直流と交流の違いも無視したギャグが炸裂する。
壮大なストーリーにもかかわらず、舞台上は過去も未来も同じ研究室なので時間の違いがわかりにくかった。もちろん作り手は辿り着いた時代がいつなのかという錯覚を利用して笑わせてもいたのだが。結末に今度こそ二人は同じ時空で出会おうと期待を込めて未来行きのカウントダウンが始まるのだが、不思議に胸が高鳴った。今は携帯電話が発達したおかげで、待ち合わせ場所を間違えるというトラブルは減ったはずだ。しかし、1950年代に一世を風靡した映画『君の名は』(脚本・菊田一夫)のように「会えそうで会えない」シチュエーションはもともと恋愛ドラマの定番。2016年公開で大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』(新海誠監督)も男女が時空を超えてすれ違う物語だった。今回の作品も、二人のタイムトラベラーが恋人同士という設定にしたら、もっと切ないラブロマンスになっていたかもとふと考えた次第である。