(劇評)「アクションの力、プラスアルファ」中村幸恵 | かなざわリージョナルシアター「劇評」ブログ

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本ブログは金沢市民芸術村ドラマ工房が2015年度より開催している「かなざわリージョナルシアター」の劇評を掲載しています。
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この文章は、2018年11月23日(金)14:00開演の劇団羅針盤『空ニ浮カブ星ノ名ハ三日月』についての劇評です。


 劇団羅針盤の公演数はHPで確認するだけでも地元の劇団の中でずば抜けて多い。それだけ場数を踏んでいると言うことだ。地元の劇団の中でも固定のファンが付いている印象がある。 
客席に座り舞台全体を眺めると、下手の手前にある赤い番傘が目に入る。一段上がった舞台は袖に向かう通路まで全て真っ黒な布で覆われているので、赤い傘と奥にある足場の鉄骨の銀色がとても映える。出演する俳優は4人だ。何人もの役を兼ねて演じる。時々混乱するが、一つの役を3人で演じた役はわかりやすい衣装とわかりやすいキャラクターで、上手くはまっていた。
出所してきた一松鉄司(平田知大)を舎弟の三郎(能沢秀矢)がたった一人で出迎える。お迎えにつき物の黒塗りの車はない。男は所属する組の組長の妻を殺しての服役だった。今の事務所だと言って舎弟に案内されたのはオカマバーだった。鉄司は組長の娘・五条透子(矢澤あずな)とそこで再会する。
 羅針盤が得意とするのはアクションだ。今回も刀があり拳銃がありカーアクション(?)があり、4人の俳優がステージ上を動き回る。スピード感がある。スマート感があるともっといい。ストーリーは小難しくなくてわかりやすい。登場人物に裏があるところなどはスパイスとなっていていい。その中で鉄司から透子への思い、透子の五条組への思い、三郎の思いがなどが表現されるが、登場人物の思いはもっと丁寧に扱われてもいいのではないかと思う。アクションのスピードとはまた違った、人の心情を扱うのに必要なスピードまで落とすことで見ている側は登場人物に感情移入できる。同じアクションでも受け取り手がその意味を膨らませて捉えられれば、作品に厚みが出るのではないだろうか。