この文章は、2017年12月9日(土)20:00開演の劇団羅針盤『聖夜に2度目の鉄槌を』についての劇評です。
劇団羅針盤「聖夜に2度目の鉄槌を」(作・演出:平田知大)を見ていて、正直なところ困ってしまった。イケメンの俳優たちが切り結ぶ殺陣や拳銃を突き付け合うパフォーマンスのカッコ良さに対し、そもそも彼らが一体何のために誰と戦っているのかが最後までのみ込めなかったからだ。
主要な登場人物はサンタクロースに扮した男(平田知大)とサンタ好きな娘(矢澤あずな)、サンタを捜索している自衛官(能沢秀矢)の3人でいいのだろうか。当日配布されたパンフレットの「物語」によれば、世界中の20億人もの子どもたちにプレゼントを渡すためには、サンタクロースはマッハのスピードで飛ばなければならない計算になる。それだけの能力があればきっと軍事利用も可能だろうということで命を狙われるハメになったらしい。
ハードボイルドな劇画タッチを採り入れたメルヘンチックなファンタジー路線が悪いのではない。問題はむしろ作り手の脳内で沸騰している変幻自在なイメージが、単なる情報ではなく、演劇の言葉(セリフ)としてきちんと定着されていないことだ。だから力のこもった物語を書いたつもりでも、見せられた方はわけがわからなくなってくる。当日のパンフレットに記載された驚くほど詳細なあらすじを読むにつけ、これだけのエネルギーをリアルなセリフを書く作業に使ってはどうかと思ってしまった。
演出についても、役者たちが一生懸命に舞台狭しと駆け回る姿を見て、身体性の豊かな芝居だと考える人もいるかもしれない。しかし、実態はまるきり逆で、言葉が肉体化されていないのである。言葉が肉体に根を下ろさずに素通りして飛び去っていくから、物語と俳優たちがどこまでも平行線。作品中にカッコいいポーズでカッコいい決めゼリフを喋る見どころのシーンが何度か差し挟まれていたが、そんな時でも目の前のお兄さんお姉さんたちがすらっとしてカッコいいというだけであり、俳優たちの肉体がまぎれもないドラマを帯びて立ち現れる瞬間は来なかった。