(1) 本件処分場における雨水、湧水とその対策

ア 前記2(1)()のとおり、本件予定地には数か所の湧水点があるところ、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件処分場における雨水、湧水とその対策に関しては、以下の事実が認められる。

(ア) 本件処分場の事業計画書の配水計画によれば、本件予定地の周辺に排水溝を設けて隣接地からの雨水、表面水や本件予定地内の数か所で確認されている湧水等を集め、他方で谷の底部の中心部付近には透水管(枝管付)を2本設置して、埋立予定地に降った雨水や埋立部分を通過して底部に集まった浸透水を集める構造で、いずれの水も擁壁の北側に設置される調整池に導かれる。

(甲2、3、126、乙6〈枝番を含む。〉、36、37)

(イ) 本件処分場の湧水や埋め立てられた廃棄物の間を通過した雨水の一部は、透水管を通って調整池に流れる。しかし、それ以外の雨水は、埋立部分の法面や埋立面から地下に浸透することが予測され(特に、埋立進行中は、廃棄物の飛散防止等のための覆土しかしないのであるから、容易に雨水等は埋立面から浸透することが考えられる。)、また、埋立が終了して最終覆土されても多少透水係数が低下するとしても、地表面からの浸透は予想される。湧水についても、本件処分場内の湧水地点が埋め立てられた後は、湧水は埋め立てられた廃棄物の間を浸透すると予想され、本件処分場は、これらの水が、やがて埋立部分の底部に到達することを遮断する構造にはなっていない。

      このため、本件予定地の地下には前認定のとおり坑道跡等があり、また、既に鉱害復旧の対象となる地盤沈下が発生して地層にズレ等があることが当然予想され、また、断層が存在していること等の本件予定地の地下構造と地質に照らすと、埋立部分を通過して水が更に地下に浸透する可能性を否定することはできない。

(以上につき、甲24、61、71の1、72、105、113~115)

イ なお、控訴人は、湧水対策として、湧水地点に竪型集水管を設け、独自に排水を行うとしているが、(乙36)、湧水点の全てを的確に把握した上で、集水管を固定することは容易ではなく、また、谷地形において発生する湧水の性質上、埋立に従って湧水点そのものが移動することも考えられるのであり、湧水対策、すなわち湧水が埋め立てられた廃棄物と接触することを防ぐには、控訴人の対策は十分とは言い難い。

   控訴人は、上記対策とともに、本件処分場の底部(地盤と接触する部分)にその強化対策としてソイルセメントを敷きならす計画を有しているようであるが、湧水点を廃棄物やソイルセメントで上から塞ぐと、湧水点の水の流れの上部で推移が上昇し、前記(1)イで述べたと同様に、新たな水の流れの発生や土壌の圧縮沈下が起こりかねないのであって、湧水対策としては到底万全の対策とはいえない。

(2) 安定型最終処分場の安全性

ア 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(ア) 本件処分場は、安定型最終処分場であるが、その実質は必ずしも「安定」とはいえない状態にある。

      すなわち、安定型最終処分場においても、無害であるはずの安定5品目の中にも他の汚染物質が残存していたり、付着していたりすることにより、これらが次第に浸出水中に含まれてくる可能性があること、また、金属も埋め立てられて長期間廃棄物処分場の浸透水にさらされることによって金属間に電流が流れてイオン化傾向の大きい金属は溶出する可能性が高く、条件によっては細菌が金属を溶出させる可能性もあること。また、安定型最終処分場に埋立が認められていない廃棄物が混入することもあることなどから、廃棄物そのものは安定5品目であっても、処分場の周辺環境を汚染させ、水質が汚染される危険性があることはひていできない。             (甲18、19、80、86)

      環境庁中央環境審議会廃棄物部会は、上記の状況に鑑みて、以下の答申を行っている。

      「安定型廃棄物については、有機性汚濁の原因となる物質の含有・溶出、有害物質の湧出の観点からそれ自体問題のないもの、あるいはそのような汚染の原因となるような物質・混入がないものに限定することが必要である。今後とも安定型処分が認められるものとしては、ガラスくず及び陶磁器くず(ただし、ブラウン管、石膏ボード等を除く)及び建設廃材(コンクリートがら等)が該当する。さらに、これらについては、分別して排出されることが明らかなもの、あるいは選別施設において十分に選別された(熱灼減量が5%以下になったもの)に限定される必要がある。これら以外の現行安定型品目(廃プラスチック塁、金属くず及びゴムくず)については、特に適正なリサイクルの推進と図る観点から安定型処分場への搬入を抑制すべきである。」と。



     福島原発は、廃炉が決定されているので、とてつもない産業廃棄物だと言うことが分ります。この処理にどのくらいの時間と費用がかかるのか。安定型の処分場とは比較にならない費用と時間がかかります。政府と東電は、福島第一原発の処理にかかる表と時間を国民に明らかにする義務があります。ところが、その事故を過小に評価して、必要な財政出動をしていないところが大きな問題だと思います。(文責 河野礼至)

産業廃棄物処分場予定地が、急炭鉱跡地であり、行動が縦横に走り、地耐力が不足していることを示しているところを明らかにしているところです。

(ウ) 本件予定地付近の地下の地盤が複雑で不安定なため、平成9年7月15日ごろ、本件予定地周辺に多量の降雨があった後、野呂ヶ池北側の道路が盛り上がる地盤変化を起した。           (甲39)

   イ 控訴人は、鑑定で採炭跡が明らかにならなかったにもかかわらず、本件予定地の地下に採炭跡があると認定するのは不当である旨と主張する。しかし、前掲坑道実測図により、本件予定地の地下に坑道が存在したことは明らかであるし、埋め戻されていない坑口跡が現在も存在する(甲61、原審での検証の結果)うえ、試掘や電気探査で採炭跡の可能性を示す結果が出ている以上、本件予定地の地下に坑道跡が存在することを否定することは困難である。また、上記糞尿噴出事件について風聞の類の話であるというけれども、当時川崎町衛生課職員をしていた大塚英彦等が具体的に事件の模様を述べていること     (甲63,119、弁論の全趣旨)

からして、単なる風聞と決め付けることはできない。さらに、控訴人は、狸堀のような炭鉱跡は、建設工事で表土を剥いだ際に見つけて埋め戻すか、重機によって押しつぶして破壊するので問題がない旨主張するが、坑道は炭層に沿って長く地下に伸びているうえ、切り羽跡も炭層の広さに応じて広がりを持っているため、たまたま見つけた表面部分を表土で埋め戻したり、重機で破壊しても、地中に存在する空洞がすべて充填され、改善されるまでには至らないので、上記主張は採用することができない。

 3 本件処分場の概要と同所における雨水・湧水の新党について

(1) 本件処分場の概要

ア 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(ア) 本件処分場の廃棄物処分の方法

本件処分場は、自然に形成された谷の北部において東西から台地がせり出し、谷が狭くなっている場所(野呂ヶ池の南側)を利用し、そこに高さ5.4m(全体の高さ6m)の逆T字型コンクリート用壁を設置する。

そして、本件予定地全体を南北に区分し、まず、南側部分から埋め立てていく計画である。

具体的には、本件性分上のほぼ中央部付近で谷が狭くなっている場所に高さ約5m程度の台形状の仕切堰堤(盛土)を築き、その内側(南側)に廃棄物を埋め立てていき、仕切堰堤と同程度の高さまで埋め立てれば、仕切堰堤に傾斜にあわせるようにその上に更にもう一段仕切堰堤を築いて同様にその内側を埋め立てていくことを4段まで繰り返し、本件処分場の南側部分が標高約112m付近まで埋め立てられれば、本件処分場の残った北側部分の埋立に取りかかり、同様に、擁壁の背後に築かれた擁壁保護土堰堤の内側(南側)を埋め立てていき、以後は同様に仕切堰堤を築いて埋め立てていくことを繰り返して最終覆土を含めて最も高い所で標高約120m付近まで埋め立てるというものである。その結果、最終的には、擁壁の天端から約30度の傾斜を持つ法面が形成されることとなる。なお、埋立は10年で完了する予定である。

廃棄物は、1日分の量を3m以下の厚さで敷きならし、即日50㎝以上の覆土をするいわゆるサンドイッチ方式によって埋め立てる計画である。

(以上につき、甲2、3、乙6〈枝番を含む〉、36、44の112

(イ) 本件予定地の地盤の問題

埋立地の基礎地盤の性状は、埋立地の安定(又は沈下)を左右する重大な要素であるが、本件予定地の表層を形成している第四紀沖積層は砂質土で、層厚は3.75mから2.5m程度、地耐力は1㎡当たり1ないし3トン程度である。

その下の古第三紀層は堆積岩層で砂岩・砂質頁岩・頁岩等からなり、上部の層1ないし3mは風化した軟質岩や一部に柔らかい炭質頁岩を挟む地層であり、地耐力は1㎡当たり20ないし30トン程度である。それより深部は累硬度が漸増し、地耐力は1㎡当たり40トン以上の値を示している。また、本件処分場には、石炭採掘の跡があるが、採炭は坑道から更に小さな坑道を延ばして周辺を掘り進んで行くため、本件予定地周辺の地下には採炭(切り羽)跡が広がり、しかも多数の坑道が縦横に走っていると推認できる。

そうすると、上記の採炭跡があることを度外視しても、本件処分場の埋立の高さ及び廃棄物の1㎡当たりの平均重量などからすれば、本件予定地の全体にわたって表層の第四紀沖積層及びその下の古第三紀層の上部1ないし3m(全体で4ないし6m)については、廃棄物の埋立(仕切り堰堤、覆土等を含む。)による加重を支える地耐力が不足しており、地盤強化対策が必要である。

        (以上につき、甲2、3、110、113、114、

          乙6〈枝番を含む〉、36、原審証人北島隆)

イ 被控訴人は、擁壁の設置や産業廃棄物の埋立に対して、どの程度地耐力が不足しているのかは必ずしも明らかではなく、仕切堰堤下部を除けば、仮に地耐力が不足して地盤が陥没したところで、陥没した部分は土砂や安定5品目で埋まるだけのことであるから問題とならない旨主張するが、仕切堰堤の安定は、埋立計画の大前提であるばかりでなく、仮に埋めたてた廃棄物、土砂の重量及び埋立層に含まれた水の重量で地盤が沈下すれば土砂と廃棄物が地中を移動して埋立部分が不安定をなり、地表に亀裂を生じたり、地表の排水設備が傾斜し、その結果地下水の流れが変化して新たな水道ができるなど、不測の事態を生じかねないのであって、こうした状況を無視ないし軽視する控訴人の態度には問題があるといわなければならない。さらに、控訴人は、地耐力不足の対策に関しても、擁壁の設備や産業廃棄物の埋立による地面に対する加重を予測して地盤改良を考え、軟弱地盤の撤去と代替の粘性土の搬入、ソイルセメントによる固化を考えているというものの、具体的に、地盤についてどの様な調査をし、どの程度の表土をどこに処分して、どこからどの程度の粘性土やソイセメントを調達して、どう施工するかについての計画の内容は皆目明らかでない。

            (甲3、110、113,115、乙〈枝番を含む。〉、27,28、36、原審証人北島隆)


 福岡高裁裁判所の判断がやっと出てきました。高裁の判断は、極めて妥当で、日本の司法の中でよくこのような判決が出たと驚くぐらいです。この判決を出すために、、何百万円かの調査費用と青年を中心とした努力があると言うことを忘れないでいただきたいと思います。裁判も運動の一環として位置づけることがひつようだということを、わたしは何度でも繰り返しいいたいと思います。

(1) 本件予定地の位置

   ア 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(ア) 本件予定地が存在する福岡県田川郡川崎町は、南北約12.7km、東西約4.9kmの南北に細長い町(総面積36.12k㎡)であり、同県の中央部のやや東に位置し、芦屋町を河口として響灘に注ぐ遠賀川水系の上流域で、筑豊盆地の南東部にある。

また、川崎町の最南端に所在する戸谷ヶ岳(とやがだけ 標高702m)から北に広大な山地と山間の集落があり、町中央部に東側の福岡県田川郡添田町から中元寺川が町の中心部を北へ流れ込み、さらに町北端より福岡県田川市へ流れ出る。この川の両岸の沖積層からなる河岸段丘に水田が広がり、川の南部・西部は花こう岩質の山間部で森林地帯であり、川の北部・東部は地価に古第三紀層の地層が存在し、かって石炭(筑豊炭田)産業が盛え、多くの炭鉱跡、ボタ山、そして住宅地、商店街等がある。(甲31、35、42)

(イ) 本件予定地は、川崎町中央部の東に位置する大ヶ原地区の東端部と上記添田町との町境に存するが、この大ヶ原は、中元寺川沿いの真崎平野の東側の丘陵地である。大ヶ原は、上記添田町との町境をほぼ分水嶺とする北西方向へ3つの谷とその間の台地からなる。本件予定地は、その東側の谷の最上流部にある。

そして、大ヶ原の東側の谷に野呂ヶ池、中の谷に小松ヶ池、西側の谷に楠木池、六郎原池等の計7つの大きな農業用水のため池があり、米田、東川崎、丸山、櫛毛、田原、池尻、森安(行政区名)等の下流域の水田(中元寺川の東側)の農業用水の水源地である。

野呂ヶ池は、本件予定地の直下に存在し、そこからの水は、米田川、櫛毛川を経て北西側に直線距離で3500m下流の田原で中元寺川と合流し、中元寺川は更に北へ流れて遠賀川に注いでいる。

本件予定地は、中央の谷はかって水田であり、周囲の傾斜地は、自然林及び人工林の森林で、野呂ヶ池の唯一の水源地であり、数か所の湧水点がある。

(以上につき、甲31,35,61、原審での検証の結果)

   イ 控訴人は、本件予定地に存在したのは湧水ではなく、水はけの悪い地点に地表を流れた水がたまったものであると主張する。しかし、本件予定地内に存在した水溜りの下に沈殿している土は、本件予定地下流の農業用水に湧出する水と同様に赤茶色をしており(原審での検証の結果)、採炭に由来すると考えられる鉄分を含んでいると考えられるため、湧水であると認められる。

(2) 本件予定地周辺の坑道・炭鉱跡

ア 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(ア) 本件予定地周辺の地層は、古第三紀層の堆積岩を基盤として、その上に第四紀沖積層が被覆している。古第三紀層は、直方層群に属し、大焼類層、三尺五尺累層(本層群)、竹谷累層、上石累層に大別され、砂岩、れき岩、頁岩等から成り立っている堆積岩層であって、その間に石炭を含むさまざまな層がある。第四紀沖積層は、主として砂質土であり軟らかい。また、本件予定地付近は、団を于が多く存在し、地層の走向は南北、東西方面も見られるが、ほぼ北西20ないし30度程度で、鶏舎は15ないし18度東である。  (甲3、42、乙6の21,36)

(イ) 本件予定地の西側約5分の3には、旧三矢炭鉱の工業県が設定され、その跡を受け継いだ矢川炭鉱の鉱業権が、昭和37年2月に買上交付決定まで、年間2万トン以上の出炭をしていた。昭和35年3月の坑内実測図(甲164)によれば、本件処分場の締め切り堰提の部分には、旧三矢四坑二卸、同連卸の坑道と坑口が3ヵ所あり、昭和37年1ないし2月の坑内実測図(甲165)によれば、本件処分場の締め切り堰堤の部分には、第四坑二卸連卸、第二坑二卸連卸、本卸、第四坑同二卸の坑道と坑口が5か所あり、その他に名称のついていない坑道1本とその坑口がある。さらに、本件処分場の締め切り堰堤の西側には坑道が多数縦横に走っている。

旧三矢三坑本卸、旧三矢三坑本卸連の2本の坑道から延びた坑道のほか、坑口のある坑道が3本あると資料に示された部分に行った原審での鑑定によるボーリングの結果(原判決別紙2の鑑定①~③)では、その形跡が明らかとはならなかったが、控訴人のした試掘(乙36)の際の2点(被告①、③と表記するが、控訴人のした試掘の位置は、被告①~被告⑥であり、原判決別紙2にその位置も合わせて表記する。)で、古洞や採炭現場跡を埋め戻したのであろうと思われる箇所があり、また、被控訴人らの電気探査(甲83,105)で、古洞の存在が窺われる地点が2か所(原判決別紙2に電探①、②として、その位置を表記する。)ある。上記各試掘の位置は、相互にそれほど離れていないのに、その結果としての柱状図は、対応関係が分かり難く、地層の複雑さを表している。

      かって(昭和40年代)、大ヶ原の石炭盗掘跡に投棄したところ、大ヶ原の北東に位置する福岡県田川郡添田町真木地区や野呂ヶ池直下の水田に糞尿が噴出したことがあった。また、上記坑道跡等は、埋め戻しを行わず坑口を閉鎖しただけで放置したり水没させただけの状態のものもある。

     (以上につき、甲30、61,63,83,105,118から120、

      124,164,165,183~186、乙6の21,36、

      原審での検証の結果、鑑定嘱託の結果、原審被控訴人岩丸博重)

(ウ) 上記坑道跡等は、特に30m以深では、いわゆる盤圧で、既に落盤したりして広範囲に地盤沈下を起すなどし、一応安定していると考えられている(いわゆる安定化論理)が、浅所では、古洞として残り、現在でも陥没等(いわゆる浅所陥没)が発生したりする。また、本件予定地の一部において、昭和35年ころ公害と認定されてその賠償がなされ、野呂ヶ池についても、昭和44年に亀裂と漏水が発生した結果鉱害の認定がなされ、昭和46年に改修工事が行われ、さらに、本件予定地内の一部水田に鉱害によるものだと思われる湧水が認められて昭和56年に再度鉱害の認定が行われ、鉱害復旧工事が実施されている。本件予定地周辺においても、鉱害の認定がされたところが散見されるが、前記坑道実測図によれば坑道が存在していない地域でも鉱害の認定がされており、大ヶ原地域全体が鉱害による陥没や地盤沈下などの地層の乱れがあることが窺われる。

(甲1の135711122123、30、44、

                45,120、143,186、公知の事実)