(3) 控訴人の本件処分場の建設及び操業計画と福岡県知事による設置許可

控訴人は、平成6年2月3日、本件処分場設置の事業計画書を田川保健所に提出し、平成7年3月28日、福岡県知事に対し、産業廃棄物処理施設設置許可申請をしたところ、福岡県知事は、同年8月1日、本件処分場の設置を許可した。

(4) 控訴人の計画する本件処分場の計画の概要

控訴人の計画する本件処分場の計画の概要は、原判決別紙1(控訴人が県知事に提出した産業廃棄物処理施設設置許可申請書の写し=甲3)のとおりであるが、便宜、以下に要約する。

施設の種類   産業廃棄物安定型最終処分場

設置場所   21の土地ほか20筆

処理能力 埋立地面積 8万6182.29㎡

埋立容量 105万5761㎥

処理する産業廃棄物の種類

        建設廃材、金属くず,廃プラスチック類、ガラスくず

及び陶磁器くずのいわゆる安定5品目(ただし、シュ

レッダーダストに係るものは除く)

構造   下流側に逆T字型コンクリート擁壁を構築して築堤する。

処理方式   サンドイッチ方式

排水の処理   施設外より流入する雨水は開架で施設内の調整池に入れ、

土砂等の沈殿を行ったのち放流する。また、施設内の雨水・浸出水についても地下排水溝(暗渠)を通り調整池に送った後、清水だけを放流する。

放流先   施設からの放流水は、調整池を経て三面コンクリート

張り水路を通り野呂ヶ池へ注ぎ、同池より農業用水路、米

田川、櫛毛川を経て中元寺川に至る。

 3 争点及び争点に関する当事者の主張

(1) 本件処分場の建設、操業により、井戸、水道及び農業用水に水質汚染が生じ、被控訴人らの人格権が侵害される高度の蓋然性があるか。

   〔被控訴人ら〕

ア 被控訴人らの人格権について

(ア) 被控訴人らは、いずれも前記2(1)アのとおり本件予定地に近接した地域又はその流域に居住し、このうち被控訴人E、同G及び同Gは、汚染を受ける大峰浄水場からの水道水等を飲料水・生活用水として使用し、その余の被控訴人らは、汚染を受ける場所にある井戸水を飲料水・生活用水として使用している。

川崎町においては、伊良原ダム建設が遅れているため、現在暫定的に北九州市から水の分与を受けており、大峰浄水場の井戸からの取水は休止されているものの、いつこの暫定的措置が困難となるかわから ず、渇水時等は大峰浄水場の井戸からの取水が必要になる。したがって、本件

2 基礎となる事実(証拠等の記載のない部分は当事者間に争いがない。)

(1) 当事者等

ア 被控訴人らは、いずれも福岡県田川郡川崎町の住民であり、本件予定地に近接した地域又はその流域に居住している。(甲35,140)

被控訴人A、同C及びJは、いずれも東川崎行政区の本件予定地から西又は南西側に直線距離で1000m以内に、被控訴人Iは、下真崎行政区の本件予定地から同じく西側約1700mの地に、被控訴人Mは、上真崎行政区の本件予定地から同じく西側1000m以内にそれぞれ居住している。       

(甲36の351516、 58の12

被控訴人B及び同Dは、いずれも森安行政区の本件予定地から北側に直線距離で約5000m以上離れた地に、被控訴人Fは、太田行政区の本件予定地から同じく北西側約2500mの地に、被控訴人Hは、東陽行政区の本件予定地から同じく北側約1600mの地に、被控訴人Kは、上豊州行政区の本件予定地から同じく西側約1700mの地にそれぞれ居住している。  (甲36の46101417

  被控訴人Eは、大峰行政区の予定地から北側に直線距離で約1800mの地に、被控訴人Gは、吉原行政区の本件予定地の北側約1600mの地に、被控訴人Lは、大島行政区の本件予定地から同じく北側約1600mの地にそれどれ居住している。

                    (甲36の9,12,18)

イ 控訴人は、産業廃棄物の処理業、土木工事業等を目的として昭和55年6月6日に設立された資本金1000万円の株式会社である。昭和62年8月から、福岡県嘉穂郡筑穂町大字内住字鍛治木屋2602番16に安定型最終処分場(ない住処分場、埋立容積3万7000㎥=以下「内住処分場」という。)を設置し、以来、これを稼動させて操業を続けてきたが、その埋立が限界に近づいていることから、本件処分場の建設を計画した。

なお、控訴人は、昭和63年12月、同県糟屋郡新宮町大字立花口字佐屋ノ下2193番3に中間処理場としての焼却施設を設置したほか、平成11年9月には、同郡粕屋町大字仲原字川崎1774番地に選別施設として仲原選別場(以下「仲原選別場」という。)を設置し、廃棄物の積替、保管を行っている。   

(甲111、118、乙11,12、15の1,2、 40の1~5、70)

(2) 控訴人による本件予定地の取得

    控訴人は、完成すれば県下有数の大規模な処理場となる本件処分場の建設のため、本件予定地のうち、多額の費用を投じて主要な土地(4,9ないし11及び19の土地を除く土地)を取得するに至った。

(甲1の1~3、5~8、12~18、20~23)

なお、本件予定地のうち、9ないし11の土地は、一審確定原告佐藤瞠が所有している。同一審原告は、上記の土地を、控訴人が本件処分場に使用することに同意したが、後にその意思表示を取り消すなどして、控訴人との間に紛議が生じた。同一審原告は、被控訴人らとともに、本件訴訟を提起したが、原審で敗訴判決を受け、前記のとおり控訴しなかったので、同人の敗訴が確定した。    (甲1の9~11、 6の1,2 弁論の全趣旨)

また、4の土地は、筑豊グリーン株式会社が昭和50年3月7日売買により取得していたが、平成12年10月27日に、同年8月3日の売買を原因として、川崎町と地開発公社に、所有権移転登記がなされている。           

(甲1の4、 121)

19の土地は、登記簿上Oの所有(昭和22年3月自作農創設特別措置法16条の規定による売渡しにより取得)名義となっている。

(甲1の19)


まさか4月22被最高裁で勝訴できるとは思っていませんでした。ただ福岡高裁で勝訴していたので、負けるとは思っていませんでした。産廃問題で最高裁において勝訴が確定したのは画期的なことだと思っています。それで、その全文を公表することにしました。全国の運動に何らかの役割を果たすのではないかと思ったからです。そして何より、3,11福島原発から学ぶことの一つに、廃棄物を出さない持続可能な地球をつくることを運動の目標にしなければならないと考えています。

 なお氏名は匿名にしておきます。(文責 河野礼至)

平成21年11月30日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成16年()第293号建設工事控訴事件

(原審・福岡地方裁判所飯塚支部平成10年()第155号)

口頭弁論終結日 平成21年7月1日

判決

福岡市東区原田4丁目22番18号

控訴人(第1審被告)     福岡産業開発株式会社

同代表者代表取締役     吉永清美

同訴訟代理人弁護士     浅野秀樹

ああああああああ  三ツ角 直正

ああああああああ     野田部 哲也

福岡県田川群川崎町大字安眞木4408番地の11

被控訴人 (第1審原告)     A

福岡県田川郡川崎町大字池尻705番地の4

       被控訴人 (第1審原告)     B

福岡県田川郡川崎町大字安眞木4430番地

     被控訴人 (第1審原告)     C

福岡県田川郡川崎町大字池尻817番地

     被控訴人 (第1審原告)     D

福岡県田川郡川崎町大字川崎131番地

     被控訴人 (第1審原告)     E

福岡県田川郡川崎町大字川崎2943番地

     被控訴人 (第1審原告)     F

福岡県田川郡川崎町大字川崎91番地の25 G

     被控訴人 (第1審原告)    

福岡県田川郡川崎町大字川崎1379番地  H 

被控訴人 (第1審原告)    

福岡県田川群川崎町大字安眞木4767番地

被控訴人 (第1審原告)     I

福岡県田川群川崎町大字安眞木4144番地の1

被控訴人 (第1審原告)     J

福岡県田川群川崎町大字川崎2252番地

被控訴人 (第1審原告)     K

福岡県田川群川崎町大字川崎95番地の34

被控訴人 (第1審原告)     L

福岡県田川群川崎町大字安眞木3893番地

被控訴人 (第1審原告)     M

       上記13名訴訟代理人弁護士    井上道夫

       同                幸田雅弘

       同                武藤糾明

主文

    本件訴訟をいずれも棄却する。

    控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

 1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

 2 上記取消しに係る被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

第2 事案の概要

 1 事案の要旨

(1) 本件は、控訴人が原判決別紙物件目録記載の各土地(以下「本件予定地」という。また、同目録記載の各土地については、その記載した番号により「1の土地」などという。)上に、操業を計画している産業廃棄物の安低最終処分場(以下「本件処分場」という。)について、その周辺地域を生活圏とする被控訴人ら(後記Nを含む)外10名(以下、この24名を「一審原告ら」という。)が、① 井戸、水道及び農業用水の水質汚染、② 擁壁の崩壊による本件予定地近くの野呂ヶ池への汚染廃棄物流出、同池の地番陥没、③ 交通量の増大等の差し迫った危険性の存在を理由に人格権(平穏生活圏)や、野呂ヶ池の所有(総有)権及び水利権に基づいて、本件処分場の建設等の差止めを求めた事案である。

(2) 本件の原審での主要な争点は、ア 本件処分場の建設、操業により、井戸、水道及び農業用水に水質汚染が生じ、一審原告らの人格権が侵害される高度の蓋然性があるか(争点())、イ 一審原告らは、本件処分場の建設、操業で、その土地所有権、野呂ヶ池の所有(総有)権や水利権を侵害される蓋然性があるか(争点())、ウ 一審原告らは、本件処分場の建設、操業による交通量の増大で、人格権(平穏生活権)を侵害される高度の蓋然性があるか(争点())、であった。

(3) 原審は、前記争点()について、一審原告らのうち、本件予定地の付近に居住し、井戸水を飲料水又は生活用水として使用していたり、本件予定地付近の地下水が流入しやすい深井戸から取水している浄水場からの水道水を利用している非控訴人ら及び取下げ前の被控訴人N(以下、単に「N」という。)については、その人格権が侵害される高度の蓋然性を肯認し、井戸水及び野呂ヶ池から流出する水を農業用水としてのみ利用しているその余の10名については、上記蓋然性を否定し、争点()及び()については、いずれも一審原告らの主張を排斥し、結局、被控訴人ら及びNについてその請求を認容し、その余の10名の請求を棄却した。

(4) 控訴人は、原判決には事実誤認があるなどとして敗訴部分につき控訴した。一審原告らのうち敗訴した10名は全員控訴しなかったので、同人ら関係部分は確定した(以下、これらの者を「一審確定原告」ということがある。)。また、当審係属後、Nが本件訴えを取り下げたので、被控訴人らは合計13名になった。