舞台はニューヨークはセントラル・マンハッタンの真ん中に位置するセントラルパーク動物園。ライオンのアレックス(ベン・スティラー)は、訪れる観客達を楽しませる舞台生活を楽しみ、キリンのメルマン(TV「フレンズ 」のデヴィッド・シュワイマー)は手厚い医療保障に感謝し、楽天家なカバのグロリア(ジェダ・パンケット・スミス)もすっかり動物園生活を気に入っていた。しかしシマウマのマーティ(クリス・ロック)は、人間の管理が存在しない野生の世界に憧れていた。

  そんなある日、動物園からの脱出を企てるペンギン集団らの悪知恵に影響を受けたマーティは、深夜にこっそり動物園を抜け出し列車で生まれ故郷を目指そうとする。彼を引き留めるために街に出たメルマンらの姿に、人々は大騒ぎさせられ、結局彼らは野生に戻すべく動物園から船に乗せられるハメに。しかし漂流の末に彼らは到着したのはマダガスカル島だった…


  正直、予告編を目にした時点では、ドリームワークスからまた手と品を変えた新しい3Dアニメかぁ、くらいの印象しか持っていなかった。昨今のドリームワークス製アニメに対して、なんとなく不信感を抱いていたのかも。→例えば「シュレック 」のプロデューサ、ジェフリー・カッツェンバーグが押しに押して大コケしたTVシリーズ「Father of the Pride 」などから連想(まー、白虎使いマジシャンの不運な事故が重なったタイミングの悪さもあったんでしょうけど…)。イマイチ魅力を感じないキャラクター達の造型に、他に見る物もないし、とたいした期待せずに映画館に向かったのでした。


  で、実際の映画を目にしてみると、スピード感のある編集(ちと切り過ぎか?)と、適度なおちゃらけ、あまり説教くさくなく、真の意味で娯楽に徹しているストーリーなど、思いの他映画を楽しんでいる自分に気づいてしまいました。静止画ではなんだか失敗しか見えないペンギン達も、画面で動いて声が当たると、なんだかとってもカワいい(根っからワルだが相当頭が悪いキャラ付けに、つい笑ってしまう)。


  改めて考えるに、3Dアニメの収益性、それに頼った製作規模の高騰化、のせいなのか、実写映画以上に最近のアニメーションの作り手の中にビジネス指向が蔓延しているような印象。ディズニー・ブランドで公開の「Mr.インクレディブル 」で感じた息苦しさ(何から何まで計算づく、みたいな)も、無邪気なお子様向けというスタンスの隙間から見え隠れするゼニの臭いが遠因なのかもしれない。で、翻ってこの作品は、各所の歯車のかみ合いが微妙にハズれてて、いい意味で適度にユルいのである。なるほどハンス・ジマーの音楽こそ格調高いのだが、声優陣の微妙な力の抜け具合(主役からしてC.ロックにベン・スティラーだもんなぁ)も、あまり立派過ぎないキャラクター・デザインも、肩に力が入ってなくていい感じ。


  90分のフル3Dアニメが驚異的に新鮮だった時代は過ぎ去り(米国で2Dアニメの興行収入類型を3Dアニメのそれが抜いたという記事を読んで久しい)、3Dアニメもテクノロジーが牽引できる隙間は今後ますます少なくなって行くのは必死。そういうトレンドをこういう形で実感できた、という意味では、ちと感慨深い物もありました。


  SWなど初夏のブロック・バスターがひしめく最中、、米国の興行収入ランキングでも検討中。邦題「マダガスカル」として、日本でも8月公開予定だそう。マーケから受ける印象と比べると、映画本編は思いの他面白いと思うので、騙されたと思って映画館に足を運んでみてもいいんじゃないでしょうか?


IMDb:Madagascar

Official Site: DreamWorks


Madagascar

時は70年代初頭。ドッグタウンと呼ばれるカリフォルニア州ヴェニス&サンタモニカで、廃墟と化した水上遊園地の柱を縫うように荒波を乗りこなす地元サーファーグループがあった。そんなある日、サーフショップのオーナー、スキップ(ヒース・レジャー)の元にまったく新しい人工樹脂でできたローラが持ち込まれた。このローラを車輪にすることで今まではダルかったスケートボードでグリップが効くようになり、まるでサーフボードで波に乗るようにスケボーを操れるようになるのだった。
サーフショップにたむろする若者たち"Z-Boyz"は、高級住宅地の留守宅に忍び込み水が抜かれた円形プールでエクストリーム・スケートボーディングを始めるのだが…


ステイシー・ペラルタの脚本を、「サーティーン あの頃欲しかった愛のこと 」のキャサリン・ハードウィック監督が演出した、事実を元にフィクションで肉付けしてドラマに仕立てた、伝記ドラマ。

ステイシー・ペラルタと言えば、「ライディング・ジャイアンツ 」等のハードコア・スポーツドキュメンタリで有名ですが、その彼の出世作とも言える「DOGTOWN & Z-BOYS 」は硬いドキュメンタリー・タッチで、エキシビジョン・スポーツとマスメディアの生い立ちから観たアメリカ文化を考察した作品でした。本作品はまさにその裏返しで、アメリカいや世界を変えていく一大ムーブメントを生み出した集団内の人間関係に焦点を当てたヒューマン・ドラマ物となっています。


主格の若者達は比較的大人し目のキャスティングが当てられていますが、出鱈目に見えながら実は骨のある短気なショップ・オーナーを前述したヒース・レジャーが演じていたり、ブームに乗って金儲けに走るいかがわしいブランド・コントローラにあのジョニー・ノックスビルが登場したりします。笑ったのは宇宙飛行士役でカメオする、スケボーの神様トニー・ホーク。ほんの数秒の出番ながら、お約束のギャグをきっちり決めるの大笑い。


複雑な家庭環境から逃げ出すように、スケボーに打ち込み成功しつつある若者が、重力に引かれるように人間関係の複雑性に捕らわれるサブ・プロット等のドラマ部分が実はこの作品の肝で、単なる史実を元にしたスポーツ・アクションとは一味違う出来。思った所、感じた物は雑多にいろいろあるのですが、漠然と感想を書くとするなら、物事の結果は、物事の始まり+差分の演繹には帰着しないのかなぁ、ってマトマリが無さ過ぎるか? それにしてもいまやティーン・ムービーのスペシャリストと化したハードウィック監督の丁寧な演出と、ペラルタの確かな筆裁きの見事さが強く印象に残りました。


元々がステイシー・ペラルタの脚本をプロデューサーのデヴィット・フィンチゃーらが惚れ込み展開して行った作品らしいのですが、制作費25億と低予算でスペクタクルにも特殊映像効果に無縁ながら、仕上がりは上々。スケボーに興味のある人にも、そうでない人にも鑑賞に堪えうる上質ドラマに昇華していると思いました。


IMDb: Lords of Dogtown

Official Site: SonyPictures


LoadOfDogtown

おしとやかで美人のレーナ、気難しい映像オタクのティビー、気分屋で文学少女のカルメン、活発で明るいサッカー少女のブリジット、の幼馴染4人組みは大の仲良し。いつも一緒の4人だったが、高校生になり初めてそれぞれが分かれて過ごす夏休みを迎える。レーナは祖父母が住むギリシャへ、カルメンは離婚後離れて暮らす父親の元へ、ブリジットはメキシコのサッカー合宿へと向かい、ティビーはビデオ機材の購入費を稼ぐために一人地元に居残りバイトをする予定。4人は偶然見つけたGパンが、体型も身長も違う4人になぜかピッタリなのを見つけ、夏の間1週間づつ交代でGパンを履く約束をするのだった…


アン・ブラッシェアーズの少女文学「トラベリング・パンツ」を原作に、TV「マルコム・イン・ザ・ミドル 」のケン・クワピス監督が演出(「マルコム…」からはパパ役のブラッドリー・ウィットフォードも出演)。脚色は一連のメグ・ライアン主演のラブコメで知られるデリア・エフロン女史。


主演4人に実力派の若手を揃えたキャスティングで、TV「Gilmore Girls 」で知られるアレクシス・ブレデルや、インディ「Real Women Have Curves 」が記憶の新しいアメリカ・フェレーラなど、見覚えのある顔もあれば、ブリジットを演じたブレイク・ライブリーのようにフレッシュでビビッドな印象を残す女優も。


制作費25億と、ハリウッドでは低予算作品の分類ですが、丁寧な脚本(設定は原作本と若干違うという話…)と、手馴れた演出で仕上がりは上々。完全な女の子映画(会場の8割はティーンだった)ですが、対象観客を完全に外れている自分も、自分なりに楽しめたのは事実。心から切望していた物をいざ手にしてみた時の戸惑い、物心付いた後に対峙する死や愛という脈動、家族内の人間関係のダイナミズム、などなど、忘れかけていた感情や気分を画面から感じ取れたのはうれし恥ずかしい体験でした。脚本も演出も手馴れてうまいなぁと素直に感心(音楽はあからさまなティーン・マーケティングでちょっと照れましたが)。


通常日米公開時差が極めて短いWBが配給なので、日本にも近いうちに行くのかもしれませんが、Webサーチでは検索にかからず。見かけよりずっと大人の鑑賞に堪えうる作品だと思うので機会がある人はぜひ劇場で。


IMDb: The Sisterhood of the Traveling Pants // Official Site: WB

Sister

時は大恐慌を迎える直前のニューヨーク。中堅ボクサーのジム・ブラドック(ラッセル・クロウ)はあまりの手堅い試合運びで観客の失望を招き、出場権を剥奪される。運悪く株式市場が大暴落し、ジムの一家は家賃の支払いも滞る程の貧乏生活に陥る。そんなある日、元トレーナーのジョーが運んできたのは、ドタキャンで空いた対戦相手を埋める1試合だけの復活試合だったのだが…

 

実在のボクサー、ジェームス・ブラドックの実話を元にしたスポーツ・ドラマを演出するのはロン・ハワード監督。ローマの将軍、数学者、船長と数々のバラエティーに富む演技を見せてくれたラッセル・クロウですが、今回も内に秘めた感情の高ぶりをオーラとして画面に焼き付ける見事な演技。主演の大型スターに負けない存在感を見せるのは、妻役のレネー・ゼルウィガー、トレーナー役のポール・ジアマッティ(「サイドウェイ 」)、そして港湾労働者仲間マイクを演じるパディ・コンシダイ(「イン・アメリカ 三つの小さな願いごと 」)。全員が隙無く見事にしっとりとした演技を見せるあたり、ハワード監督の演出のうまさが光ります。

 

うまいなぁ、と感心したのは脚本。原案と共に脚本にクレジットされているのはクリフ・ホリングワースですが、ハワード監督と共に編集を加えたのはベテランのアキヴァ・ゴールズマン。マイクというキャラクターを加え、家庭内暴力やフーバービルと言った負のエレメントを対比させることで、主人公ジムの陰影を浮き出させるストーリー・ラインが見事に機能していました。(→実際、この作品の企画自体はかなり前からあって、「ショコラ 」のラッセ・ハルストレム監督に話が行ったり、主役に=はマーク・ウォルバーグ、ベン・アフレック、マット・デーモンなどという話もあったそう。クロウ主役で企画が進み、レネーに妻役をオファーに行ったのは、「インサイダー 」を撮影していた頃だったとか)

 

実際、この映画は欠点らしき欠点が見当たらない。欠点が無い事が欠点に思える作品も少なく無いし(例えば「半端に小さく小奇麗にまとまり過ぎてる」とか)、格調高く立派過ぎて敬遠したくなる物もあったりしますが、この作品を振り返るに、何一つ突出していない手堅い作り。演技、演出、音楽(トーマス・ニューマン)、撮影(サルヴァトーレ・トチノ)、のそれぞれが極めて高いレベルにありながら、それらすべてが見事にピッタリはまっている調和感がすばらしい。早くも来年のオスカーの噂が出始めていますが、実際観劇してみて、なるほど、この作品にはどこにもケチを付けたくなる場所を見つけられませんでした。(→そういえば、初夏に先行公開し賞レースが本格化する秋口にDVD発売で切り込みをかける、というのは、同じ配給会社のユニバーサルが「シービスケット 」で使った手で、7部門ノミネートという結果を残しています。作風もなんとなく似てなくもないし…)

 

邦題は「シンデレラマン」で9月に公開予定だそう。米国での興行は、夏の大型娯楽作品に押されたのか、初登場4位、興行収入19億と製作規模(88億)からするとちょっとスロー・スタート。今後の伸びと日本公開での盛り上がりが期待される所です。身も華もある力作で個人的には万人に推薦したくなったのでした。


IMDb: Cinderella Man   // Official Page: Universal


CinderellaMan

ハリウッド進出(←なんか田舎臭い表現だ)後、いまいち良質の作品にめぐり合えない感もあるジェット・リーの最新アクション・クライム・スリラーは仏・米・英・香港の合資映画。一足先に公開された仏版の原題は「Danny the Dog 」、米国公開名は「Unleashed」で、邦題は「ダニー・ザ・ドッグ」となるんだそう。


極悪非道なヤクザのおじさんバートに動物同然に育てられたダニーは、普段は気弱で従順。成人しても未だに檻の中に幽閉され暮らす毎日。だがいったん首輪を外され戦いをけしかけられると、無敵の強さを誇るヤクザの鉄砲玉だった。そんなある日、倉庫の中で偶然遭遇した盲目のピアノ調律師サムから音楽の美しさを教えられる。のちに傷つき倒れたところをサムに救われ、娘のビクトリアの手によって徐々にダニーの心は人間らしさを取り戻していくのだが…


バート役にはイギリス出身の名優ボブ・ホスキンス(←「フェリシアの旅 」が今でも印象的)、サム役にはベテランのモーガン・フリーマン、と主要な脇をしっかり固めるキャスティング。英語の台詞回しが苦手な外国生まれのアクション俳優をいかに映画にフィットさせるか、という命題はシュワルツネッガーの時代から続く課題ですが、今回は"教育をまともに受けてない"という設定で乗り切ろうと言う戦略。その部分にはあまり無理は感じませんでした。が、いささか無理を感じたのは全体の構成で、今時そりゃーないだろう、という無理やりなセットアップの脚本を執筆したのは、プロデューサも兼務のリュック・ベッソン(正直、実績の無い新人がコレを提出したら配給会社から一蹴されそうな気がするのだ)。


ザ・ワン 」では、自分と戦う自分、という難しい設定の上で、パワーでぐいぐい押す力技派キャラと、動きで翻弄する技巧派キャラの二通りを演じ分け、今回は荒削りで粗野な喧嘩殺法を基本に置く動きを見せてくれるなど、相変わらず一段上のジェット・リー流アクションは健在。ブラック・ムービーの流れに乗せて娯楽大作を狙った「ブラック・ダイヤモンド 」や「ロミオ・マスト・ダイ 」は映画としてイマイチでしたが、考えてみれば米国映画デビュー以降アクション・シークエンスに限ってみれば今まで外しは無い気がするのだ。悪徳プロデューサーに捕まり、一番おいしい時期を丸々ぼうにふったジャン・クロード・バンダム某ベルギー出身のアクション俳優のような不幸な先例があったせいか、ジェット・リーは単なるアクションをこなす外人役者ではなく、口うるさく脚本や設定に"注文"を出してるらしい(本作ではプロデューサとしてもクレジットされている)。これから先も彼のアクションを楽しみたいと思っている自分は、今後も注意深く自分のキャリアの舵取りをしていって欲しいと切に願うのでした。


制作費45億とハリウッド作品としては中くらいの規模の作品で、公開3週目で8位22億とやや苦戦中。期待を大きく上回る感動を得る事はないかもしれませんが、よく練られたアクションを楽しむ作品としては、まずまず楽しめたような気がしました。


IMDb: Unleashed

Official Site: Unleashed


Unleashed

メモリアル・デー3連休での家族集客を当て込んで、スターウォーズをはじめとするいくつかの大型娯楽作品が封切られる中でいちばん楽しみにしていたのが、アダム・サンドラー主演コメディ/スポーツ・ドラマの本作品。1974年のバート・レイノルズ主演映画「ロンゲスト・ヤード 」のリメーク作品で、レイノルズ→サンドラーというぶっとんだ主演役者の交代が企画の核にあるのは間違いない。


キャスティングはいつものアダム・サンドラー映画の例に漏れずなかなか豪華で、裏から欲しい物は何でもほいほい入手してしまうケアテイカーにクリス・ロック、コーチを買って出る囚人としてレイノルズが登場するあたりの遊び心はなかなか楽しい。

政界に打って出ようといういじわる所長役にジェームズ・クロムウェル、看守チームのキャプテンにウィリアム・フィッチャー、というのは、いかにも無難な手堅い配役。

力持ちだけど気は優しい巨漢にボブ・サップ、予告編にも登場するのになんとクレジットされていなかった彼女役にコートニー・コックス、と言うのはちょっと意外。

サンドラー映画のお約束、サダデー・ナイト・ライブOBの友情出演は、やっぱりの感もあるロブ・シュナイダー。


ストーリーはほぼ原典通りで、虐待が横行する刑務所で、看守とフットボールの練習試合を行う事になった囚人チームのお話。ところどころに原典を思い出させる瞬間もありましたが、全体にサンドラー映画らしいギャグがまぶしてあるのと、ラップやバスケに代表されるブラック・カルチャーを取り込んであるので、表層はイマ風で物語の古さはあまり感じません。

アダム・サンドラーのフットボール映画、と言えば「ウォーターボーイ 」という傑作があるので、正直どうかなぁ、と思ったのですが、本作品は随所にちりばめられたオフザケとは裏腹に実は結構まじめにスポーツ・ドラマを指向している印象で、二つはかなり違った作風に仕上がっていたように思います。乱暴にまとめてみれば、「ウォータボーイ」はコメディ→スポーツの歩み寄りで、本作品はスポーツ→コメディの歩み寄り、とでも言う感じでしょうか?最近マジメな役が多いサンドラーですが、振り返って考えるにこの映画も往年のサンドラー節はかなり影が薄い。コテコテのアメリカン・コメディは日本で敬遠されがちなので、こういうサンドラーが意外に日本で受けるのかも?なんて思ったりもしたのでした。


制作費82億で、公開1週目は競合に押されボックス・オフィス・チャート3位登場でしたが、59億の興行収入は決して悪くない出足。米国におけるサンドラーの収穫力は健在、というのを再確認したのでした。


IMDb: The Longest Yard

Official Site: The Longest Yard

LongestYard

米国の一般都市では少なくとも週に4~5本の新作映画が公開されるのが普通だが、どの配給会社もメモリアル・デーの「スターウォーズ エピソード 3 」 公開と直接ぶつかるのを避けたいらしく、今週はうちの近所にはたった2本しか映画が来なかった。そのうちの一本がこの作品で、予告編も目にした記憶がなく予備知識=ゼロで館内に飛び込んだ。で、蓋を開けてみると、カリフォルニアのワイン王、ロバート・モンダビへの糾弾ドキュメンタリー、とでも言うべき感じの映画でした。


アルゼンチン、フランス、イタリアと米国合資のこの作品、全体のトーンは一貫して「アメリカ大資本のモンダビが世界戦略をかけ伝統的ワイン作りを壊滅状態に追い込んでいる」という戦術。袈裟まで憎いのか、米国人のワイン評論家ロバート・パーカーまでもをボロクソにケナしてました(しかもやり口は、こんな田舎育ちにワインのワの字がわかるわけがない、と言わんばかりの編集だったり)。

その主張が公平かどうかは置いておくにしても、撮影した素材がカワいいのは理解できるんだけど、ユルユルの編集で2時間15分もチンタラと絵が流れるのは観ている側にはちとキビしい。何も「The Weather Underground 」などの佳作ドキュメンタリー並みの水準を求めているわけではないのだが、演出・脚本のJonathan Nossiter の映画に対するセンスには、自分個人的にはあまり評価すべき点を感じず(しかしこれ、カンヌ出展作品だもんなぁ。最近はアメリカ批判映画ならなんでもOKなのかいな)


フランス・ロケでは、フランスワインがいかにモンダビのやり方に圧迫されているかを訴え、イタリア・ロケではモンダビのワイナリー買収方法のやり方を批判し、と、あまり工夫はなく素直なアメリカ批判が続くわけですが、個人的にはドキュメンタリー映画として作品を構築するのなら、見せ方や切り口にもう少し工夫があってもいいんじゃないか、と思いました。21世紀になって今更パックス・アメリカーナ批判でもあるまいに、と少し白けたわけなんですが、ひるがえって考えるに、経済のグローバル化で伝統的農林水産業は軒並み大きな構造変革を否応無しに迫られている現代に、ワイン産業の置かれている立場を(かなり一方的な視点からとはいえ)垣間見れたのは、色々考える所があって、そういう意味では面白かったと思います。


先日観た「The Yes Men 」もそうでしたが、日ごろ接点がない世界への覗き窓、のファンクションとして、いささか反面教師的な意味で楽しめた作品だったような気がします。普通の映画ファンにはお勧めしたくない気分ですが、ワイン通には面白いかも? 


IMDb: Mondovino

Official Site  (French)

Mondovino

現代のロサンジェルスを舞台に、波乱に満ちた2日間を描く群像劇ドラマ。クラッシュというと、クローネンバーグ監督+ロザンナ・アークウェット+ホリー・ハンターの倒錯したエロ映画 Crash を思い出しますが、作風もジャンルもまったく違う作品でした(当たり前か?)


先日のオスカーで「ミリオン・ダラー・ベイビー 」で脚色賞にノミネートされたポール・ハギスが原作・脚本・演出のすべてを担当。キャスティングがものすごい豪華な顔ぶれで、目立ってた有名人だけでもサンドラ・ブロック (不機嫌な奥様)、ドン・チードル (母親の世話を焼く独身刑事)、マット・ディロン (中堅のパトロール警官)、ジェニファー・エスポジート (女刑事)、ウィリアム・フィッチナーブレンダン・フレイザー (若手政治家)、 サンディ・ニュートンライアン・フィリップ (若手パトロール警官)、トニー・ダンザ などなど。

大都市の、さまざまな場所で発生する、地味なイベント達がラストに向けて収束して行く構成。個々のエピソードが丁寧に演出されているのと、少ない登場時間でもきっちりインパクトを打ち込む技巧派の役者達のせいで、難しい脚本をとっちらかさずに、きちんと一本の映画にまとめてある辺り、見ごたえがありました。


ほんのり暖かいハートウォーミングな逸話もちらほら、しかし全般に大都会でギシギシとぶつかり合う、人間達の摩擦を追うちょっとシンドイ題材も多い。悪い人間に見えたキャラクターが、裏に複雑な事情を抱えていたり、いい人間がちょっとした弾みで悪い方向へ暴走したり、ポール・ハギス監督のちょっと意地の悪いセットアップで複雑で重層的なドラマが折り重なっていきます。同じ群像劇と言っても、例えばロバート・アルトマン のそれとは、明らかに狙いも味も違うように感じます。思うに、アルトマン監督の群像劇は人間自体を描くのにシチュエーションを作り、ハギス監督のそれはシチュエーションを描くためにキャラクターを作る、という印象があるのですが、ぜんぜん違うかも??


インディとスタジオの中間に位置する弱小配給会社LGF(ライオンズ・ゲート)の力の入ったプロモーションのせいか、スターウォーズに荒らされている間にボックス・オフィス・チャートで地道に成績を伸ばし公開三週目で28億強と検討中。


ある程度の体力と気力を要する重たい作品ですが、大型スペクテキュラーに飽きた層にはぴったりの力作で、いろんな意味で映画館で観た方がお得な気がする映画だと思いました。

IMDb: Crash
Official Site: Lions Gate Films

Crash

舞台は EU の通貨統合を目前に控えた英国。父子3人の一家が郊外の新居に越して来る。末っ子のダミアンは神様とキリスト教を心の底から信じる真っ直ぐな子供で、想像力たくましい明るい性格だ。そんなある日、近隣の都市であざやかな手口で大金を強奪する窃盗団が現れた。現生は秘密裏に列車に積み込み警察の包囲網を突破。貨車に忍び込んだ仲間が路線途中で投棄し、別の仲間が回収してまわる手はずだった。が、たまたま投下地点に居合わせたダミアンは、天から降ってきた大量の現金を神様の施しだと勘違い。世の中のために有効に使おう、と彼流のバラマキを始めるのだが…

神様を信じる無垢な子供の行動により引き起こされるドタバタを、周囲の大人の態度と比較しながらお話が進行するコメディ・ドラマ。通貨統合により、大量のポンドがあと1週間で使えなくなる、という事情を絡め、現金を追跡するギャングとのクライム・サスペンスも織り交ぜてある巧みなセットアップが見事。

演出は「トレイン・スポッティング 」で一躍スターダムにのし上がり、FOX の期待を一手に背負った「ザ・ビーチ 」がコケてやや後退したかと思いきや、現代風新解釈ホラーの「28日後 」でスマッシュ・ヒットを飛ばしたダニー・ボイル監督 。 表面はまっすぐ直球のお子様向け寓話の体裁をとりつつ、その裏でしっかり英国風のシニカルなブラック・コメディが進行している構成に、監督流の芸の細かさと同時に芸風の幅の広さに改めて感心しました。

脚本は「CODE64 」(←正直よくわからなかった)や、「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ 」でしっとりした人間ドラマを構築したフランク・コットレル・ボイス

作品の全体的な印象を形作っているのはボイル監督の演出手法で、今風のかっとんだ音楽やビジュアル・スタイルが、地味目のストーリー展開に程よいアクセントを与えています。あくまでけなげな主人公(次男)、世俗にそまった嫌らしさを徐々に見せ始める周囲の大人、その間の兄アンソニー、そして主人公兄弟に忍び寄る強盗団、と登場人物の関係性をダイナミックに構築してあり、脚本のうまさを尖った演出がしっかり支えているあたり、見事でした。

子供の耳には素直にメッセージが届き、大人の目にはその裏に深く広がる隠喩が楽しい、という寓話が持つ構造の面白みを存分に体現した本作品、派手なビジュアル・エフェクトも有名大スターも出てこない小規模な作品ですが、広く多くの人に観てもらいたい佳作だと思いました。久々に思う存分楽しめたブリティッシュ・テイストあふれる映画で、個人的には◎のオススメです。

IMDb: Millions
Official Site: Fox Searchlight

Millions

というわけで、米国公開と同時にさっそく近所の映画館にて観劇してきました。この手のイベント・ムービーは旬のうちに観ないと面白みは半減するわけで。意外にも、(前日前売りの)チケットの購入から入場まで待ちも無くスンナリ。公開初日夜7時半開始の回でも、上映開始時点で9割は埋まっていなかった。なんだかずいぶん落ち着いちゃったなぁ、と、ある意味安心、でも別の意味で少し寂しさも (後に興行収入記録を調べると全国的にはしっかり客は入ってたよう… うちの近所だけがたまたま空いていたのか??)

以下、極力ネタばれは避けて簡単な感想を:


・万人が納得する落とし所で、期待を大きく上回る事はなかったが、まずまずの満足感


・ため息が出るような美しいシネマトグラフィーがいくつか。予告でも使われた、青空の下平和に見える大都市の中心からら炎煙が立ち上るシーンなどは実にいい


・編集のぎりぎり寸詰め感が少し息苦しい。ファンサービスのための、おまけを入れすぎかもだ


・ルーカスの脚本と演出は、ちと稚拙。登場人物がみなキッチリ類型にはまり、思った事を思ったとおりに口にする、という非常にわかりやすい世界。まー古典戯曲だと思えばいいのかも?


・HDTVのカメラはくっきり写りすぎで、安いTVドラマのような絵になっちゃってるのが残念。35mmのボケ味を期待、とは言わなくとも、ライティングへの気配りと背景CGIとのコンポジット時にもう少し工夫が欲しかったかもだ


・音楽、衣装は期待ほどではなかったにしろ、水準はやっぱり高い


・相変わらずのスペシャル・エフェクトだが、いまひとつ重量感にかけるんだよなぁ。効果音は度派手だけれど、横切る風や振動を感じるレベルのリアリティにはいたらず


・エンディング・ロールには日本人らしき名前もぽつぽつ。マリン・カウンティの本丸に居るとしたら、サンラファエルの"ともえ"で飯食ったりしてたんだろうか? (スペシャル・サンクスで厚木のソニーの名前も)


・レンダリングの計算に使ったのであろう、AMD64 のロゴが最後に出てきた。近々出るデュアルコア版はすごく速いみたいで、Intel もこの先厳しそうだなぁ


・最後に出てきた工事しかけのデス・スター、初代スターウォーズに戻って(?)考えると完成まで20年弱かかるという計算になるが、それにしちゃあ、3作目に2個目をあっさり作ってたような。平行して2個作っていた、という事なんだろうか? うーむ…


以上、好き勝手に、思いつくまま感想を書いてみました。


IMDb: Star Wars: Episode III - Revenge of the Sith