自分の息子が入った野球チームの強化を図るため、リズ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は金に物を言わせて元プロ野球選手のバターメーカー(ビリー・ボブ・ソーントン)にコーチを依頼。しかしそのコーチは、昼間から酒ばかり飲みやる気はゼロ。基礎中の基礎もなっていない運動音痴がそろったチームには勝利の目はまったくなさそうだった。が、同じリーグのエリート・チームをコーチするロイ( グレッグ・キニア)との反目から、バターメーカーは本気でチームの強化を考え始めるのだが…


ミニミニ大作戦 」、「クライシス・オブ・アメリカ 」など、ユニバーサルが仕掛ける一連のリメーク・プロジェクトの一環として最近米国公開されたのが1976年の「がんばれ!ベアーズ 」の化粧直し。

ウォルター・マッソーのダメ・コーチ役をソーントンが、テイタム・オニールの豪腕ピッチャーに新人の サミ・ケイン・クラフト(←某評論家が絶賛)。

演出は、ここの所「ウェイキング・ライフ 」、「ビフォア・サンセット 」、「スクール・オブ・ロック 」と会心のヒットを続けるリチャード・リンクレイター監督。ここの所、メジャー・スタジオ
とインディを自在に行ったり来たりしながら、完成度の高い作品を発表し続けるリンクレイター監督ですが、実はその昔、マコノヒー君の銀行強盗アクション「ニュートン・ボーイズ 」の商業的大失敗で、しらばくスタジオから干されていたそうな。

スタジオからは保護者同伴を要求されない PG-13 の枠での製作を要求されたそうで、割と原典に忠実なプロットに、「バッドサンタ 」のグレン・フィカーラと ジョン・レクアとが、今風のブラックな笑いをほんのり混ぜてある脚本はなかなか見事。


「スクール・オブ・ロック」でも見せた、生き生きとした子供の姿を撮るリンクレイター監督の演出のうまさが光り、ソーントンのやさぐれ方もいい感じ。でもこの作品の最大の魅力は、「負け組」に対する愛情と、その落とし所にあるんではなかろうか。もちろん最後に逆転勝ちするいわゆるハリウッド映画の類型からはみ出しているは当然の事ながら、ある意味「生まれた時から負けを肯定しているような」イギリス映画のそれともどこか微妙に違う、競争社会の米国における人生の敗者の居場所、みたいな模索が面白くもあり、ちょっと考えさせられる箇所でもあり、といった感じ。


総予算35億、制作費30億と噂されている製作規模で、興行収入は29億、特別良くもなく悪くもない成績だと思いますが、個人的にはこの出来ならもう少し売れても良かったんじゃなかと思いました。
邦題は「がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン」で、今年秋に日本公開予定だそうです。


IMDb: Bad News Bears
Official Site:Paramount Pictures


BadNewsBears

異種格闘技ということで最初に考えついたのは

「ハンニバル博士(羊シリーズ) vs. ジョン・マクレーン(ダイ・ハード)」


強いヒロイン の本家 + 動物パニック物の本家

「リプリー vs. ジョーズ」


タイム・トラベルつながりで

「T-100 (ターミネーター) vs. マーティ・マクフライ(バック・トゥ…)」


うーん、誰も見ないな、これじゃあ


郊外の電気店で事務処理担当のアンディ(スティーブ・カレル)は典型的なオタク。車を持たずに自転車で通勤。趣味はゲームとアクション・フィギュア集め。そんな彼がひたすら隠しているのが40歳になった今でも童貞な事。最初は気味悪がって近づかなかった店の仲間達(セス・ローゲン、マロニー・マルコ、他)も、彼の人柄を知り打ち解けた後は、彼の童貞喪失に向けてあの手この手の奇策を実行するのだが…


ブルース・オールマイティ 」で、全能の力を持ったジム・キャリーにいぢり倒される堅物アナウンサー役が印象に残るスティーブ・カレル主演作品。ドタバタながらもある意味真面目なロマンティック・コメディという作風。カレルは演出担当のジャド・アパトー監督と共に脚本もこなしています。

サエない40男があこがれるマドンナ役にはインディではすっかりおなじみ、今やマイナー・メジャーの位置に居るキャサリン・キーナー女史。ストーカーまがいのクレイジーな片思いを続けるやさぐれた電気店店員にはポール・ラッド、など中堅実力派も散りばめたキャスティング。


芯には純情でモラル正しい正統派ラブコメの要素を通しておいて、周辺にはちゃめちゃなお下劣を配置するというのは、最近のハリウッド製コメディの王道。そのパターンを踏襲しつつも随所にノービスらしい"あがき"が見受けられるのがなかなかチャーミング。一部整合性が取れず破綻した設定など、ホコロビも見える脚本ながら、ノリと勢いで押し切ったパワーにはたまげました。ラストは本当に凄い!これぞ衝撃のラスト、かもだ。


予告編が面白そうに見える作品ほど、本編はがっかり、みたいな映画が多い昨今、この作品も予告編でかなり笑ってしまったのでぬぐいきれない一抹の不安をかけながらの鑑賞。杞憂に終わってよかったよかった。一作目の「デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!?」 が割と良かったので、ちょっとだけ期待して観たロブ・シュナイダーの「Deuce Bigalow: European Gigolo 」がかなりがっかりだっただけに、逆転ホームランのような本作の当たりにすっかり嬉しくなったのでした。


公開第1週目で21億の集客、予算26億の製作規模を考えるとスマッシュ・ヒットと言えるのでしょう。

思いの他ちゃんとした映画なので、安心して万人にお勧めしたい所。「しあわせなら手を叩こう」や「いち・にー、さんっ」とか、日本語が出てきるのもなかなか微妙でよかった気がします。日本公開の際には、ぜひ伊集院 光とみうらじゅんでプロモーションをかけてほしいと思いましたです。


IMDb: The 40 Year-Old Virgin
Official Site: Universal Pictures

The40YearOldVirgin

2003年10月8日、ティモシー・トレードウェルとその恋人エイミーはアラスカの国定公園で観察対象であるグリズリーに襲われ殺害される。13年にもわたる観察キャンプ生活を通じ、熊のドキュメンタリー・ビデオや写真集を制作し、世間に熊のエキスパートとして広く知られていた有名人の突然の事故死は、広く世間の注目を集めた…


ヴェルナー・ヘルツォーク監督による、野生の熊を追うドキュメンタリー作家の事故死を対象にしたドキュメンタリー映画。ドキュメンタリー作家をドキュメンタリーする、という凝った仕掛けの2重構造は予告編からはさっぱり予想できず(予告編は大変ミスリーディングだと思う)、エキセントリックな環境保護活動家の事故死をセンチメンタルに泣くだけのナーバスな駄目ダメ作品なのかと、かなり構えて映画館に向かったのですが、どっこい頭を殴られるほどの衝撃を受けたすごい作品でした(前評判がえらく良かったのにも納得)。


ドキュメンタリー映画というジャンルは、扱う素材の良し悪しは大きな構成ファクターであることは言うまでもありませんが、一方で主題に対する作家の態度や、その構成手法と技法なども作品価値を決定付ける決定的な要因です。思うにドキュメンタリー映画の作法は、マイケル・ムーア監督の「華氏 911 」のように、対象への立ち位置がまったくブレずに、攻めの一手で突き進む猪突猛進型もあれば、93年のオスカー候補作「My Architect: A Son's Journey 」のように、映画進行と共に観客とリアルタイムで対象を探りながら進む暗中模索型、同年度の別のオスカー候補作「The Weather Underground 」のように、あくまで中立位置に居ながら凝った構成美で見せる作品、など、スタイルは様々。


翻って考えるにこの作品のすごい点は、ドキュメンタリー作家の視点近傍から対象を再構築して行った後、最後の最後になっていきなりもう一段上のまったく違うパラダイムへと一気に昇華させるという構成にあります。しかもそのアクロバティックな移動が実にキレた鋭さで、もう降参しました、とでも言うしかないようなたたみ掛け。ボクトツとしたナレーションも、グロい検死官の証言も、全部計算づくだったかぁ、とエンディングで気づかされる完敗状態。いや正直何から何までこちらの上を行く作品でした。


熊に襲われた際の様子が偶然録音されていた(回しっぱなしのビデオカメラにはキャップがはめられていた)という話から「グレート・ハンティング 」を連想したり、金髪おやじが野生動物と無茶な絡みを挑むというのでスティーブ・アーウィンの「クロコダイル・ハンター 」などを想像していると、かなり痛い目に遭うのは必死。


先日、「The Wild Parrots of Telegraph Hill 」という思い出しただけで不愉快になるほど(失礼!)、自分の感性にまったく合わないドキュメンタリー作品を見たばかりで、しばらくドキュメンタリー映画はいいや、などと思っていたのですが、改めてドキュメンタリー映画の可能性を考えたりした観劇となりました。
(あまりグラフィックは出ないけど)いささか刺激が強いので気の弱い向きにはお勧めできませんが、そうでない方はぜひ映画館で。


IMDb: Grizzly Man
作品中にも登場する関連サイト: Grizzly People

GrizzlyMan

マイアミの一流ホテルの辣腕マネージャ・リサ(レイチェル・マクアダムス)は、身内の法事を済ませダラスからマイアミへ戻るため空港へと急いでいた。混雑したチェックイン・カウンターの列でたまたま居合わせた好青年ジャック(キリアン・マーフィ)と機上の席でも隣同士になり、話が弾むかと思った矢先、ジャックは自らの正体を暗殺集団の一員だと打ち明ける。
テロリストの徹底的な締め付けを宣言する政府高官を暗殺するため、宿泊部屋を移動する指示電話をリサに入れるよう強要するジャック。協力を拒むと自宅で彼女の帰りを待つ父親を殺害されてしまう。高度1万メートルの機内で逃げ場もなく助けも呼べないリサは…


製作費25億と伝えられる低予算アクション・スリラー(ハリウッド映画の平均製作単価は40億強)を演出するは、「エルム街 」や「スクリーム 」フランチャイズで知られるホラーの大御所ウェス・クレイヴン監督。

この映画の魅力を一言で説明するなら、極めて完成度の高い B 級映画であるという事に尽きるかも。脚本の基本プロットから細部の設定、演出の色からキャスティングまで、首尾徹底して良く出来たイロモノ感
で統一されています。「きみに読む物語 」で知名度を高めたカナダ人女優のマクアダムス嬢も、自分が最初に顔を覚えたのはロブ・シュナイダー主演の「これ 」だったし、相手方のアイルランド男優の初印象は「これ 」で焼き付いちゃったし…。二人とも微妙な顔の造形で、素材から実にいい味を出しているうえに演技がめちゃくちゃ巧い。空港のカウンターでの会話シーンなんてこのままラブコメ映画になりそうな勢いだった。


で、そういう色々をまとめてオーケストレーションを成功させているのがベテラン、クレイヴン監督の手馴れた演出技術。いちいちがベタながら、アクション・シーン以外の作り込みの厚さが映画の面白さを際立てて
いるのは間違いなく、これは役者の演技力を巧みに引き出し編集を成功させる監督ならではの味付け。でもいい意味でやっぱり B 級テイストなのは、最近やたらと流れているジョディー・フォスターの「Flightplan 」の予告と比べてみると明らか。こっちの方には、育ちが悪いゆえのスタミナがある、とでも言うか。映画のテーマも、ぼんやりと「自分でコントロールできない状況なんてない」とでも言いたげだったし…


とにかく、手に汗握るどきどき感がたまらない秀作スリラー。久々に面白い映画見たなー、と満足できた一本でした。


IMDb: Red-Eye

Official Site: DreamWorks


Red Eye

舞台は近未来。アメリカ合衆国海軍は対テロリストの最終対策として、三名のエリート・パイロット(ジョッシュ・ルーカス、ジェシカ・ビール、ジェイミー・フォックス)を最新鋭の超音速ステルス戦闘攻撃機 TALON に載せ、ピンポイント爆撃で拠点を潰す攻撃を立案。チームは失敗の許されないミッションを成功に
導くべく日々シミュレーションを繰り返していた。そんなある日、プロジェクト指揮官は新型の機体と共に4人目のパイロットをチームに導入。しかしそのパイロット・エディは Extreme Deep Inventor = E.D.I と呼ばれる人工知能であり、三人のパイロットは UCAV (無人攻撃機)と編隊を組みいきなり実線へと飛ぶ事になるのだが…


ワイルド・スピード 」や「トリプルX 」など、中規模アクションで手堅くヒットを飛ばしてきたロブ・コーエン監督の最新作は、近未来SFジェット・アクション。SFXやCGIにお金を吸い取られたのか、キャスティングの苦しさが非常に微妙でなんだか可笑しい。主演のジョッシュは華が少なめで影が薄い。ジェシカ嬢は相変わらず肉感的で魅力一杯だが話にあまり絡めず。しかし何といってもアレなのはオスカー俳優のフォックスが、この手のB級アクションに脇役で出ていて、しかもあっさりxxxxしてしまうのは、いかがなものかと…


で、映画自体の出来は別として、飛行機モノとしての絵作りのセクシーさはなかなか凄い。嘘だと分かっていても、モノホンの原子力空母上のロケの場面など、ついついゾクゾクしてしまう。陸上自衛隊が戦国自衛隊1549に全面協力、というのとは、ちょっと違うレベルに思えるのだ。

巡航速度がマッハ3強、最大速度は M4 などという設定のいちいちがうそ臭いにしても、前進翼の可変翼というSFチックな造形の戦闘爆撃機がアクロバット飛行を存分に披露するのを映画館の大画面で見れるのは実に幸せ。リアリティという点からは??が付くものの、ロシア空軍のフランカーと追いつ追われつのドッグ・ファイトを繰り広げるのは、やっぱりファン・サービスなんだろうなぁ…


ちと残念のなのは、「トップガン 」から「2001年 」までいろんな要素が入っているが故に、何かと中途半端でどっちつかずの印象が強く残る点。硬派な戦闘機映画にも、シリアスなSF映画にも、正当なアクション映画
にも成りきれていない感じ。(出来の悪い粗悪アニメ的なごった煮感、とでも言うか…) アイ・キャンディ的にうそも強調している「ワイルド・スピード」が奇跡的にカー・アクションとドラマ性を両立していたのとは対照的なのだ。そういうバランスの悪さを反映したのか、製作費100億、総予算130億、とも伝えられるサマー・アクション・ムービー大作なのに、興行収入は公開3週目にして30億と集客状況は惨敗。うーむ。


入場料分はしっかり楽しんだ、という点では満足。どういう趣味のどういう客層に薦めていいんだか、よくわからない微妙な後味の映画でしたが、個人的には結構楽しんで観られたのでした。


IMDb: Stealth

Official Site: Sony Pictures


Stealth

南部の田舎町、ハザード郡には、やんちゃな従兄弟二人組みボー・デューク(ショーン・ウィリアム・スコット )とルーク(ジョニー・ノックスビル )のの二人が居た。仲良しペアは今日も 69 年型のドッジ チャージャーを振り回し、町に陽気な騒ぎを起す。町には悪徳保安官 ロスコー(M.C. ゲイニー)、その彼を操るボス・ホッグ(バート・レイノルズ)が居たが、罠にはまり窮地に立つデューク達を救うのは、親戚の美人ウェイトレス、デイジー嬢(ジェシカ・シンプソン)と、密造酒作りの天才アンクル・ジェシー(ウィリー・ネルソン)だった。そんなある日、町でレースが開かれる事になり、ボーとルークは愛車で参加し優勝を狙うと意気込むのだが…


1980年初頭に全米で放映されて人気を博したTV番組「爆発! デューク」のリメーク。演出はややB級づいているジェイ・チャンドラセカール監督。田舎の悪がきを演じるのは、MTV「ジャッカス」で肉体芸の限界に挑戦したノックスビルと、「アメリカン・パイ」シリーズでいじめっ子役がハマっていたショーン。なんか原作とはいくらか雰囲気が違う気もするのだが、これはこれで味のあるキャスティング。ひたすらセクシーさを振りまくジェシカ・シンプソン嬢、この手の BIMBO な役は最近の女優さんはみな嫌がる風潮にあるようなのだが、彼女もなんだかとっても楽しそう。

ボス・ホッグの策略から町を救う、という大きなテーマが背骨にあり、肉付けとして笑いとカーアクションを細部にまぶすというオーソドックスな構成。良く言えば大らかで開放的、悪く言えば雑でゆるゆる、という作り込みは、いまひとつ日本人的にはつらい物がある気も。当方、アメ車にはうといので HEMI エンジンとか言われてもあまり燃えなかったのですが、、日本人をおちょくったギャグや、屋根に南軍旗を大きくペイントした愛称「リー将軍」に黒人のフリをして乗ってる白人二人、いうような人種ネタは、けっこうキワドクかなり笑いました。


翻って考えるに、この作品の世界観の根っこの部分は、米国人の政府に対する不信感みたいな所につながるような気がします。そういえば、「The X-files 」のテーマにもそんな要素を感じたような。


エンディング・ロールでは、カー・スタントの失敗で派手にクラッシュするDoge がたくさん映ってて(IMDb によると 26 台用意されたそう)、CIG や SFX じゃなくって本当にやってんだ、と感心したのでした。


IMDb: The Dukes of Hazzard

Official Site: Warner Bros.


DukeHazzard

小さい頃から優秀な兄と何をやっても駄目な弟。刑務所から出てきたばかりの弟とは対照的に、兄は軍人としてキャリアを積み美しい妻と二人の娘に恵まれた順風満帆の人生を送っていた。しかし国連治安軍としてアフガニスタンへの出向した兄の乗ったヘリが墜落。
死亡通知が届けられ動揺を隠せない妻を支えたのは、一転ソフトな面を見せる弟だった。一方、兄は撃墜されたヘリから奇跡的に脱出を遂げていたが、囚われの身となり、テロリストのキャンプ地で砂を噛むような厳しい囚人生活を送っていた…


舞台を現代デンマークに設定し、家族の人間関係のダイナミズムを描く、シンプルかつストレートな作りのドラマ。デンマークと言えば、音楽やセットの使用、時間の跳躍、ライティングやCGIなどを禁じて映画作りの原点に戻ろうというドグマ運動が有名ですが、この映画も例に漏れずドグマの影響を受けたミニマムな作り。この作品はいくつかの禁止事項を含むので、厳密な意味ではドグマ作品ではないのですが、、それでも近年のハリウッド映画と比べると地味さが目立ちます。しかしそれゆえ、研ぎ澄まされたストーリーと演技・演出の鋭さが印象に残ります。


質実剛健な軍人をウルリック・トムセン、ぐれた弟をニコライ・リー・カースというデンマークのエース俳優が

演じています。対照的なキャラクター二人の掛け合いに割ってはいるのがデンマーク出身の美人女優コニー・ニールセン。6ヶ国語を操るコニー女史ですが、アメリカ生活が長く米語訛りが強かったので、本作品の撮影にあたってデンマーク語の特訓を受けたんだとか。(改めて自分がこの手の顔に弱いというのを再認識。しかし本当にお美しい)


記憶にあるデンマーク映画と言うと「Celebration 」、「Italian for Beginners 」の2本程度ですが、この作品も含め3本とも家族内の人間関係に焦点を当てた脚本が印象的。こういう作風がお国柄なのか、たまたまそういう作品だけが米国公開されているのか、少し興味のある所だったりします。


兄、妻、弟の三人がガシガシと心のささくれをぶつけ合うプロットから、強固に見える人間性や社会性が実は非常に危ういもろさを持っている事を訴える本作品、前半の丁寧なセットアップや、対照的な二つを持ち上げコントラストの陰影を強く引き出す丁寧な演出に、ただただ、ひたすら感動するのみ


今年観た作品の中で、今のところベスト1に推したいほど、深く感銘を受けたのでした。日本に行くか、微妙な規模の作品ですが、お近くの映画館でかかっていたら、ぜひ。


IMDB: Brothers

Official Site: IFC Films

Brothers

ジョン・スミスは建築関係の仕事で成功した青年実業家。妻のジェーンはNYCで活躍するやり手の社長。二人は郊外の高級住宅地に新居を構えもう6年になろうとしている。共働きでいささかリッチな事以外はごく平凡で幸せそうに見える二人の家庭だが、新婚当時の熱はすっかり冷めてしまっていた。しかし平凡な仕事は隠れ蓑に過ぎず、夫の本当の正体は凄腕の殺し屋。どっこい妻も別組織のトップ・キラーだった。運悪く二人は同時に同じターゲットを狙い、そして同時に相手の正体を見抜いてしまう。相手の嘘の不信感から夫婦喧嘩がエスカレートし、文字通り二人は殺し合いを始めるのだが…


ボーン・アイデンティティー 」のダグ・リーマンがまたまた新境地を見せる制作費120億とも伝えられる大型のアクション・コメディ・ロマンス映画の売りは、なんと言っても主演のブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョーリー。当初ヒロインは二コール・キッドマンでスタートし、後にキャサリーン・ゼタ・ジョーンズの名前もあがったらしい(監督はブラピの元彼女、グィネス・パルトロゥを考えたりしてたらしい)。ブラピが一時期降りかけた際は、ジョニー・デップやウィル・スミス主演で、という構想もあったそうですが、結果的にブラピとジョリーのコンビ、いろんな意味でこの映画に強いアイデンティティを与える結果になったような印象。


予告編でも散々流していた、平凡なサラリーマンが実は妻に隠れてスパイ、というイントロから、なんとなくキャメロンの「トゥルーライズ 」的な能天気なノリを期待していたのですが、ところがどっこい、この作品の肝は微妙に揺れ動く男女の心理描写の面白さにあり、と勝手に断言。笑いもアクションもドンパチも、それなりに派手で水準以上の華がありますが、それだけを期待していくと「中盤がダラダラ」みたいな悪印象を受けてしまいそう。でも考えてみたら演出は評論家だけには超受けまくって興行的にはさっぱりだった、ティーン向けでないティーン映画の傑作「Go 」を撮っているダグ監督。大予算アホ映画になるのを潔しとしないコダワリがあちこちに散見。


始まりはほんの些細な勘違いや間違いの事故なのに、どんどん共振して行きにっちもさっちも行かなくなる人間関係の機微が、実に見事に画面に切り取られていて、演出、演技共にまったく文句無し。ちょっと癖のある主演二人が、お互いの強みを相手を使って引き立てているあたり、キャスティングの妙に何度も納得。それにしても「12モンキーズ」 ではテリー・ギリアム監督があまりの大根ぶりに驚き、撮影前1ヶ月の演技猛特訓を命じられた、という噂もあるブラッド・ピット、上手い役者になりました。


邦題は「Mr.&Mrs. スミス」、近年珍しく日米公開時差が大きくとってあるようで、来年のお正月映画になるようです。


IMDb: Mr. & Mrs. Smith

Official Site: 20th Century Fox Film Corp.


Smith1 Smith2

9歳のフランキーは、物心付いた頃から引越しを繰り返す母と祖父に嫌気がさしていた。まだ顔を見ぬ船乗りの父親は遠く遠洋航海に出たきりで、月に一度の便りが何よりの楽しみ。しかし実はその手紙、母リジーがフランキーが父親が居ない事で余計な苦労をしないよう、に自作自演で書いていたものだった。しかしでっち上げで使っていた外国船籍の船と偶然にも同じ名前の船が地元に入港する事がニュースになってしまう。真実を告げようか迷った母リジー。父が来る事を友達に自慢しまくった息子が不憫になり、一日だけの父親を演じてくれる男を捜しに、地元の酒場へと足を伸ばすのだが…


105分とコンパクトにまとまった、英国のハードウォーミング・ドラマ。フランキーを演じた主演のジャック・マケルホーン君は、適度にあどけなさが残る自然な演技。母親を演じるのは、最近きわどい役が印象に残るエミリー・モーティマー女史。初めて見る顔ながら克明に印象を残す"仮の父親"役には男前のジェラルド・バトラー。(話は飛びますが、先日、1950年のワールドカップで、まったく無名だった米国代表が英国を破った"史上最高のゲーム"を映画化した「The Game of Their Lives 」を見ていて、この顔、どっかで見たなぁ、とモヤモヤしていたら、そう、このバトラーだった。映画自体はやたら大仰な作風で「まぐれ勝ち」と言う言葉を封じようとしているかのようで思わず苦笑…)


贔屓の映画評論家は、D- というめったにお目にかからない酷評ぶりでしたが、IMDbのユーザー・レイティングは8.4/10と高得点。個人的には、全体のトーンがいかにも英国風な所など、気に入った箇所が多く、悪くなかったと思います。

一応、お話の展開にいくつか仕掛けがあるので、予備知識はあまり入れないで見た方が楽しめるのではないか、と思いました(いくつかの作品紹介サイトで、某作品の事を「ブルース・ウィリスも幽霊だから」と紹介するかのごとき、酷いネタばれを目にしたもので…)


邦題は「Dear フランキー」(なんか半端な翻訳だ)で、もうすぐ公開だそうです。


IMDb: Dear Frankie

Official Site: Miramax